PhantasyStarOnline2-IF-「憎悪に歪む原初の闇」 作:あるふぃ@ship10
それは、いつもと何ら変わりのない任務のはずだった。
時空の狭間の奥底から這い上がってくる【深遠なる闇】、またの名を【原初の闇】ゴモルス。
あるふぃ、マトイ、ハリエット、ヒツギの4人がかりで【原初の闇】を消滅させたあの日から、奴は再び形を成し、何度も奥底から這い上がろうとしてきた。
その度にアークスは、再び【原初の闇】を消滅させるため、何度も奥底へと叩き落して来た。
今回もいつものように動き、いつものように倒す.....ただそれだけのはずだった。
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『緊急警報発令。オラクル船団の近郊に【原初の闇】の反応を確認。これより、討伐作戦を開始します。アークス各員は出撃の準備をお願いします。』
シエラの緊急警報が流れる。
ロビーにいたアークス達はそさくさと準備を整え、次々とキャンプシップへ向かっていった。
「よし、行くか」
フランカ'sカフェで食事をしていたあるふぃは、注文したデザートを一通り食べ終わるとすぐに立ち上がった。
「ごちそうさま。今日も美味しかったよ。」
「ありがとうございました!また来てくださいね!」
店長のフランカへ感謝の言葉を述べ、フランカも返事を返す。
食事をあとにしたあるふぃは、【原初の闇】討伐の支度を整え、その時ロビーで出会ったユウ、クオン、アリシアを連れてキャンプシップへ向かう。
「今日は、いつもの3人はいないんですか?」
キャンプシップへ乗り込み、【原初の闇】の反応があった場所へ向かう途中、クオンがあるふぃへ問いかける。
「モミジとクレハは別の任務に出ている。みにふぃは長期の任務から帰還したばかりだから、メディカルチェックを受けている最中だよ。」
「なるほど......えりちゃ...ALiCiAさんたちは不在のようですし、私達だけで行くしかないみたいですね。」
「他のアークス達も協力してくれるし、問題ないだろう。」
「もう何度も戦ってきたアークスばかりだからね。それに...」
アリシアはちらっとあるふぃを見る。
「VR訓練とはいえ、単騎で【原初の闇】を撃破した英雄様もいるし、余裕でしょう?」
「その言い方はよしてくれ......なんか........恥ずかしい.....」
視線を向けられたあるふぃはパッと顔をそらす。
アリシアの笑う声がキャンプシップ内に響き、それにつられるようにユウやクオンも笑い声をあげる。
とても任務直前とは言い難い、和やかな雰囲気が漂っていた。
それは、何度も【原初の闇】を倒し続けてきた慢心からか、当時の4人は、この後に待ち受ける悲劇を知る由もなかった。
『まもなく、転送地点に到着します。船内のアークスは、出撃の準備をお願いします。』
キャンプシップ内にアナウンスが流れる。
「よし、皆、準備はいいな?」
あるふぃが3人へ確認を取る。
3人とも、問題ないとばかりに、大きくうなずく。
4人揃ってテレプールへ飛び込み、転送された先には、既に他のアークス達が準備を済ませて待機していた。
「どうやら私たちが最後のようね。それじゃあ、始めましょうか。」
アリシアが辺りのアークスを見渡し、人数を確認したうえで、あるふぃに転送装置の起動を促す。
あるふぃも、分かったと返事をすると、転送装置へ向かい、装置を起動させる。
『これより、時空の狭間にて復活した【原初の闇】の討伐作戦を決行します。目標は、遥か奥底から這い上がり、再びこのオラクルに出現しようとしています。これを再び時空の狭間の奥底へと押し返し、撃破してください。以前まで確認されたものより強力な反応が確認されています。どうか.....お気をつけて』
シエラからのアナウンスが流れ、しばらくすると目の前が白い光に包まれる。
遥か奥底から感じる重くて暗い感触。
再び形を成した【原初の闇】は、時空の狭間を抜け出さんと、怒号を上げながらその大きな手で闇雲に這い上がっていた。
【原初の闇】とアークス。
深遠なる闇と大いなる光の戦いは、再び切って落とされた。
だが、ここで早速異変が起きた。
周囲を見渡すと、さきほどまでいたはずの他のアークス達が見当たらなかった。
「........どういうことだ?」
あるふぃが困惑すると同時に声をあげる。
他の3人も同様の面持ちで、周囲を見渡す。
「シエラ!聞こえるか!」
あるふぃは急ぎシエラに通信をつなげる。
『聞こえています!現在、こちらでも確認中です!....................そんな..........これは.....転送阻害!?.......他のアークス達も同様に、時空の狭間の各所へと飛ばされています!』
「他のアークス達は無事か!?」
『今、確認しています!.....あぁ.......そんな.....!!』
「どうしたシエラ!シエ――――――」
『「ぎゃああああああ!!!!!!!」(ドオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!)』
通信越しに人の絶命する声と地面を強く叩き割る音が聞こえてきた。
その声を聞いた4人は、すぐに状況を理解した。
『......各所に飛ばされた他のアークス達の生命反応消失........あるふぃさん達4名を除き、あの場で作戦に参加していた他のアークスは..........全滅しました............』
普段の戦闘不能であれば、キャンプシップの緊急帰還システムを使って救助することが可能だ。
だが、シエラの反応から察するに、今回ばかりは、そんな生ぬるい状況では無いと感じた。
おそらく、救助不能なレベルの状態に陥ったのだろう。
姿形を残さず跡形もなく消されるもの、奴のもつ大きな手に叩き潰され、見るも無残な姿にされるもの。
通信越しに聞こえた音だけでも、今までの【原初の闇】が放ってきた技を遥かに上回る威力であることを、4人は理解した。
『あるふぃさん.........撤退を...........この場での戦闘続行は危険です..........撤退を.......お願いします............』
目の前の悲惨な状況を確認したシエラは、あるふぃ達に撤退の指示を促す。
だがあるふぃ達に、"撤退"の意思など微塵も無かった。
「シエラ、ここで私達が撤退したとして、誰がこいつを止める?」
『それは確かにそうですが......今この場であなた達を失いたくはありません!!!』
「シエラ、僕たちは死ぬ気なんて毛頭ないよ.............大切な人を待たせてるしね。」
「私とクオンちゃんも同様です。ここで退く気はありません。」
「そういうことだシエラ。申し訳ないけど、その指示は飲めない。」
『............分かりました。ならば作戦の制限時間を普段より短くし、22分とします.......もしくは、2回以上の戦闘不能をもって、それ以上の作戦続行は危険性が高すぎると判断し、4人を強制的に帰還させます。』
「それだけ時間をくれるのであれば問題ない。ありがとう、シエラ。」
『...........必ず......帰って来てくださいね。』
その一言を最後に、シエラとの通信が切れる。
「さてと、どうやらいつも通りってわけにはいかないらしい。シバ、聞いていただろう?」
あるふぃは目を閉じ、そこにいるはずのない者の名を呼び語りかける。
(聞いていましたよ。幾度となく打ち負けてきた憎悪から生じたものなのか、ここまで力を蓄えていたとは.....やりますね。)
「感心している場合か。今回ばかりはなりふり構っていられない。最初から本気で行くから、手を貸してくれ。」
(分かっていますよ。こんなところで宿主を失うわけにもいきませんからね。私の力、存分にお使いなさい。)
あるふぃは、左目につけていた眼帯を外し目を開ける。
すると、先ほどまで水色に澄んでいた右の瞳は血のように赤く染まり、眼帯を外した左目からは赤い閃光が走っていた。
右腕を反対へ大きく振り上げ力強く振り下ろすと、その姿は、ラスターの象徴であるソフィスレーナルへと変わっていた。
「.....あるちゃんのその姿、生で見たのは初めてかも。」
アリシアは、変貌したあるふぃの姿をまじまじと見つめていた。
「滅多に出さないからな。そもそも、こんな状態にまでなる状況なんてない方が良いに決まっている。だが.......今回は相手が相手だ。」
奥底から、憎悪に満ちた空気が昇りつめてくる。
最初に見えた手のひらには血の跡がべったりとくっつき、その後に見えた触手にも、何かを貫いたかのような血痕があり、ここより下で起きた悲劇を物語っていた。
そして最後には、怒号を上げ、こちらを見下ろすように【原初の闇】の本体が姿を現した。
「.......よし、行くぞ!」
あるふぃの掛け声と共に、4人は左右に展開された大きな目玉へと攻撃を開始した。