純情ハートとウマ娘(凍結) 作:ゲーミング
ゴルシ印の焼きそば屋は開店数分で列が出来る程人気になっていた。原因として上げられるのは、売り子である
容姿端麗で産まれてくるウマ娘と、歳若い
周りで屋台を開いていたおっちゃん連中もその列に加わり焼きそばを食べに来るレベルで。焼きそばを手渡しながら放たれる新人の言葉にノックアウトする男性客が居る程だった。
「出来たてで熱いので、気を付けてね」
「あ、あ……はい」
いつの間にかコミュ力よわよわである新人の片鱗は隠れており、女性に成り切る新人を近くで見ていたゴルシは語る。
「いやー、ヤベー奴に女装させちまったと思ったわ。だっていつもの新人からは絶対感じられない母性感じるんだもんな」
「焼きそば手渡された客の一部が新人にこの後暇?とか聞いてたけど、100年後暇なのでその際に出会えたら一緒に屋台巡りでもしましょうね?ってウインクするぐらいなんだぞ?」
「アタシにもやれよソレ。いや違ぇな、誰だよって感じなんだよ。マジで」
写真は愚か、動画を撮れなかったのが心底悔やまれると語るゴルシだった。勿論そんな事をされた日には新人は心を病み二度と男には戻っては来れないだろうが。
そんなこんなで大繁盛していたゴルシ印の焼きそば屋は、焼きそばが底を着いた事によって目出度く閉店と相成った。
時間にして開店から30分程だった為に意外と早く終わったと言えた。
故にここからは新人とゴルシの屋台巡りの時間になった。
◆❖◇◇❖◆
「売り子って楽しいね」
「おー、イキイキしてたな」
「またやりたいね?」
「お前ホント誰だよ」
始める前は売り子なんて出来ないよ!と言っていた新人が今では乗り気で居る事実に流石のゴールドシップも戸惑いが隠せなかった。人混みの中を進む2人だったが、新人は浴衣を脱いでおり、今はいつも通りのスーツ姿になっていた。ゴルシが用意のいい事にスーツを持って来て居た事が幸いした。
もう1人で歩いてもナンパはされないだろう。
「ゴルシは何か食べたいの無いの?」
「じゃがバタ食いてぇ」
「そこは焼きそばじゃないんだね」
「気分はじゃがバターだな」
そう言って自然と2人でじゃがバターの屋台を探す。勿論新人は場所を覚えているが、如何せん人混みの中と言う事もあり目的地に辿り着くのはもう少し先になりそうだった。
「そういえばさ」
「あん?」
「なんで僕のスーツ持って来てたの?てっきり今日1日浴衣で過ごすもんだと思ってたから」
「……あー、そりゃあれだ、売り子であるしてたら汗とか、かくだろ?そうなったら嫌じゃねぇかなって」
「ふーん。あ、あったよじゃがバター!」
そう言って新人は屋台の方へと向かって行った。その後ろを着いて行くゴルシの瞳には、楽しそうに笑う新人の姿しか映らなかった。
無事にじゃがバターを購入し、食べながら次の屋台へと視線を向ける。そうして見付けた、異常な程に腹部を膨らませて真っ白に燃え尽きているバクシンオーを。
「バクシンオー!?」
「あ……トレーナーさんじゃないですか、随分長い事会ってない気がします……」
「おいおい、真っ白な灰になってんじゃねぇか……じゃがバター食うか?」
「も、もう食べ物はちょっと……」
「どうする?先に帰る?送って行くけど……」
「いえ!それには及びませんとも!」
そう言ってバクシンオーは立ち上がり膨らんでいた腹が引っ込む。余りにも早い立ち直りに驚く新人と、我関せずと言った感じで自分のじゃがバターを食べ、次いでに新人のじゃがバターも食べてしまったゴルシ。
こうして3人が揃った。
「あー!トレーナーちゃん居たー!」
「マヤノ?」
「さっきゴルシの屋台行こうと思ったら閉まっててビックリしたよ。売れなくて辞めちゃった?」
「はっ、寝言ってのは寝て言うもんだぞテイオー?完売したんだよ!」
「……早くない!?」
そうしてテイオーとマヤノも新人達と合流して、5人になった。後はオグリだけなのだが、肝心のオグリの姿が見えずに居た。
「オグリは?」
「…………あれ、さっきまで後ろに居たんだけど」
「まさかとは思うけど、迷子になった?」
「おいおい流石にそれは」
「ないって言い切れる?」
実際迷子になっているが、オグリの迷子癖はチームでは知られて居ない事だった。単独行動をして居なかったのが甲を制したのか、どうなのか。
「じゃあちょっと僕も探して来るね?」
「え、おい!」
「今は浴衣じゃないから平気だよ!ゴルシはみんなの事宜しくね!」
そう言って新人はゴルシ達と別れた。思わずゴルシは溜息を吐く。人見知りで人混みが苦手な癖にどうして自分から1人で突っ込むのか。迷子が2人に増えそうだと思いつつ。
「……じゃあアイツがオグリ見つけて来るまで遊ぶかー!」
「やったー!漸く遊べます!はい、はい!もう食べ物は結構なので射的とか射的がやりたいです!」
「……そうとう食べてたもんね……」
「でもバクシンオーちゃんって食べても体重増えなさそうなイメージあるよねぇ」
「何処でカロリー使ってるんだろ……」
◆❖◇◇❖◆
意外な事にオグリは近場には居なかった。マヤノ達と歩いていた道すらも超えて、1人人混みの中を彷徨う。スマホを確認すると、画面は暗転しており充電切れのサインが映る。なんで寄りにもよって今なのかと新人は顔を顰める。
そうして屋台が作る道を歩いて行き、ドンドン奥へと。ふと屋台が途切れた道がある事に気付き、其方へ歩いて行く。
軽く歩いていると、石階段が見えた。視線を上げれば直ぐに終わりが見え、大きいと言う程では無かったが、鳥居が見えた。
「……まさかね」
この先に何となくオグリが居そうな気がしたが、さすがに無いだろうと人混みの中へと戻ろうとする。けれど1度頭に過った可能性が消えず、結局は——。
「……ホントに居たよ」
石階段を登り切ると、何やらスマホを弄っているオグリの姿が見えた。
「オグリ!」
「トレーナー?良かった、スマホが壊れてしまって連絡が付かなかったんだ」
「……壊れた?」
「あぁ、電源ボタン?を入れても画面が付かなくなった」
「…………これ電池切れてるだけだよ?」
「…………そう、だったのか……」
偶然にもスマホの電池が切れた2人が合流出来た。そしてその事をゴルシ達に伝えようとスマホ開くが、電池が切れている事を思い出して新人はスマホをポケットの中へと仕舞い込む。
「オグリって人混み苦手?」
「苦手、というか自分が何処に居るか分からなくなってしまうな」
「もしかして、結構迷子になる方?」
「…………タマと2人でご飯を食べに行った時にいつの間にかタマが迷子になってしまうくらいには」
「それオグリな迷子になってるだけだよね??」
こうして漸く新人の前で方向音痴を見せ、人知れず迷子になるオグリの癖が流れ星内部で共有されることになるのだった。
「それじゃそろそろ花火も上がるからさ、一緒に行こう?」
そう言って新人はオグリに手を差し出す。何気無い行動であり、昔1度だけ家族で来た祭りの最中妹に付き添っていた様に、極自然に差し出された。
「……あぁ」
その手をオグリは迷う事無く握り、2人は鳥居を潜り直してまた人混みの中へと進んで行った。
「……ゴルシ達がいないんだけど?」
「もしかしたらスマホに連絡が来てるかも知らないな。私達のスマホは電池が切れてるんだが」
「あぁあ……やらかした説ある」
自分のスマホの電池が切れている事に気付けなかったのもそうだが、集合場所を決めておくべきだったと思い直していた。
「トレーナーは」
「うん?」
「……いや、なんでもない」
「そう?まぁ、いっか。良し、じゃあオグリ!」
「?」
「ゴルシ達を探しながらお祭りを楽しもう!」
「……あぁ!」
一瞬寂しそうに瞳を揺らしたオグリに気付いた訳では無かったが、新人はオグリの手を握り屋台を巡り始めた。
差し当っては新人と合流するまでオグリが何していたのかと言う話をしながら。
「たこ焼きの大食い大会があったんだ」
「……なんで熱そうで大食いに向いて無さそうなたこ焼きで開いてんだ……」
「美味しかったぞ。因みに優勝して来た」
「うん、何となくそうだと思った!」
そしてそれにバクシンオーも巻き込まれたのだと察し、旅館に帰ったら優しくしてあげようと思う新人だった。そうして屋台を巡り、オグリがまたたこ焼きを買っているのを見て、飽きは無いのかと驚く新人。
そのついでと言わんばかりにイカの姿焼きを買って頬張るオグリに、オグリの食欲は底が無いのだと実感した新人だった。
8月も終わりだが、やはりまだ夏と言う事もあり若干の汗をかく。そんな最中かき氷屋を見つけオグリと2人で向かう新人。
「オグリは何食べる?」
「そうだな……いちごにしようか」
「…………」
「な、なんだ、なんでそんなに見るんだ」
「いや、可愛いなぁと思って」
「………………そう言うトレーナーは何を頼むんだ?」
「僕?僕は……んー、レモン?」
「……反応に困るな」
「悪かったね!?微妙な物頼んじゃって」
「いや、なんと言うか、トレーナーはメロンとかそこら辺を頼みそうなイメージだったからな」
「……僕そんなイメージだったんだ。酸っぱい物とか意外と好きなんだよ?漬物とか」
「初耳だな」
「言ったのオグリ以外居ないと思うからね」
そうして時間は過ぎて行く。時刻確認は全てスマホで行っていた為に、今の時刻も分からない中で。そうして2人の背後で一際大きな音が鳴った。
驚きつつも2人は振り向き、夜空で咲く光を観た。
「……そっか、もう19時なんだ」
「……トレーナーは、その」
「なに?」
「……私と花火を見て、楽しいか?」
「……もちろん。僕独りだったら花火を見ながら感想も言えやしないんだから」
色鮮やかな花火を2人は並んで観る。人混みも今は気にならず、繋いだ手を離そうともせずに。
「……菊花賞、必ず勝ってみせる」
「……応援してる。勝てる様にトレーニングも考える。だからオグリも楽しんで走ってね」
「……もちろんだ、だから、見ていてくれ。私が1番に駆け抜ける様を」
花火が打ち上がり、新人の言葉は掻き消されたが、直後オグリの手をほんの少し強く握り直して答えた。
こうして夏合宿最後の思い出作りは終わった。
ギリギリアウトー!遅刻しちまったよ……書いてたら寝落ちてしまったのが敗因ですねコレはァ……。