純情ハートとウマ娘(凍結) 作:ゲーミング
更新が遅れた理由は、筆が進まなかったからです。体調不良とかじゃなくて上手く話が進められなかったから。読んでて面白いと作者自身が思えない話を投稿する気にはなれなかった。
前置きおーわり!本編どうぞ!
長かった夏合宿も漸く終わりを迎える。寂しさを感じる者、自分の枕で眠れると安堵する者、新人でどう遊ぶか考える者と、様々な思いや思考が入り乱れる中、良くも悪くも夏合宿の中心点となった人物、新人はと言うと——。
「……最終日だって言うのにやりたい事全部出来てないよ……チーム分けした理由とか考えて無かったし完全に思い付きでやったのに……」
事の発端は今朝、支配人達が用意してくれた朝食を食べていた時、ふとテイオーが思い出したかの様にした発言だった。
——そう言えばトレーナーさぁチーム分けしてたけど、なんかやる予定あったの?——。
と言う何気無い言葉だった。
それに対して新人はと言うと。
——え、あ、う、うん。えっとね色々、その、りゆ、理由があってね——。
と吃りつつも完全に思い付きで言っていた事を思い出してしまい、言い淀んどしまった。余りにも不自然な言動と態度に違和感を覚えたテイオーは、その事を言及しようと身を乗り出した所、そして其れを新人の隣で朝食を食べていたゴルシに止められ、挙句の果てには。
——焦んなってテイオー。新人が無意味な事すると思うか?きっとアタシ達にはソーゾウも付かない様なすげー事考えてたんだよ。そしてそれは今言うべきじゃないと思ってる。だから言葉に詰まってんだよ、察してやれ——。
と言うキラーパス所かデッドボールに近い物を投げられてしまい、無駄に跳ね上げられたハードルをどうやって越えようかと考えている最中だった。哀れ新人、素直に何も考えていませんでした。と言ってしまえば良かった物を、ゴルシの助け舟(泥舟)に掴まってしまい逆に危うくされてしまった。
尚ゴルシはずっとニヤニヤしていた模様。
「どうしよう……今までやって来たトレーニングと合わせてその成果を示す為の提案であり、そして夏合宿最後に相応しいトレーニング……そんなの浮かぶ?浮かばないんだけど……」
トレセン学園に帰る為の準備として荷物を纏める新人は1人呟く。来る際はカバンの中に詰め込んでもそこまで膨らまなかったカバンだったが、夏合宿を開始してから約2ヶ月で買った水着や何故か売っていたクソダサTシャツを詰め込んで行く。
破らない様に今日に水だけを抜いた夏祭りで購入した水風船やお面も同様カバンの中に詰めて行く。それを見て何処かセンチな気分になりつつも手は止めなかった。テイオー達にも今日のトレーニングは取り敢えず無しとして荷物を纏めさせていた。最もな理由を付けての引き伸ばしであった。
「トレーナーいまいーい?」
「……テイオー?どうしたの?」
「今朝の事なんだけどさ……ボク不味い事聞いちゃったかなって」
「……ま、まずず、不味い?なにが?」
「吃り過ぎだよ……いや、ほら。トレーナーの事だからその場の勢いとかでチーム分けとかしたのかなーって。別に責めたりしてる訳じゃないよ?」
図星を突かれてしまいとんでもない吃りを見せるが、そんな新人に笑顔を見せながら新人の隣に座るテイオー。けれど目線だけはしっかり新人の目を向けていた。
「……お恥ずかしい事にその通りです……特に何も考えて無かったんだよね」
「やっぱりね。最終日にチーム対抗戦的な物やるのかなって一瞬気になったんだけど、トレーナーってそう言うの考えるの難しそうだったからさ」
「僕慰めらてるの?それとも責められてる?」
テイオーの発言で胸では無く頭を痛める新人。話し方はいつも通りだったが、言葉が何処と無く刺がある様に感じてしまい目元がピクピクと痙攣していた。その表情は苦笑いだったが、上手く笑えていなかった。
「責めてないって。それで?結局どうするの?ゴルシすっごく面白そうにさっきオグリやバクシンオーに話してたけど」
「……どういう事?」
「アタシ達を集めたトレーナーなんだぞ?夏合宿最後に相応しいトレーニングを考えてるに決まってんだろー!みたいな感じ」
「もう辞めてよっ!これ以上ハードル上げないで!僕は大体そう言うハードルは潜り抜けてきた側の人なんだからさぁ!」
新人の知らない場所で更に跳ね上げられていたハードルはもう既に飛び越せないレベルにまでなっていた。元から高いハードルを飛び越せないという事に頭を抱えて居たが、最早そんなレベルの話ではなかった。
「素直に言わなかったのが悪いね……でもさぁ」
「……なぁに?」
「……ゴルシばっかり面白そうで……狡いよね?」
「……て、テイオーさん?」
「だからボク達2人で考えよーよ!ゴルシがビックリして何も言えなくなる様なトレーニング!」
あっ、これはアカン。と瞬時に理解した新人だったが、ゴルシに玩具にされているのは自覚していた為にテイオーの提案を断るか真剣に迷ってしまった。その結果——。
「……やろう、僕とテイオーでゴルシをビックリさせるんだ……」
「決まりぃ!トレーナーのそう言うノリが良いとこボク好きだよ!」
「……ありがとう?」
悪魔の提案に乗ったのだった。
かくしてテイオーと新人による対ゴールドシップ用のびっくりドッキリトレーニング発案会が始まった。
◆❖◇◇❖◆
「やっぱさ意外性が欲しいよね」
テイオーの口から出てきたのは至極真っ当な意見だった。ゴルシは自分で場の空気を引っ掻き回すのが得意であり、それが引っ掻き回されている側も面白くなってしまい場が面白空間になってしまうのだが、当の本人は自分のキャパ、詰まり想像を超えてしまうと狼狽えてしまうのでは無いか?と言う疑惑から始まった。
「……夜のトレセン学園での競走?」
「在り来り過ぎだよ。そんなのやってもゴルシの場合喜んじゃうって。それにボクも参加するんだからね?後夜は寝たいよトレーナー」
「……トレセン学園に帰らずに僕の実家に行く……とか?」
「なんでボクの想像の斜め上を行こうとするかなぁ!?いや、まぁ……純粋に気になるけどさ。トレーナーのパパとかママとか」
ゴルシの想像を超える、それはつまり一瞬でもゴルシを超えなければならないと言う、普通に高いハードルを何故か自分達から進んで行う新人とテイオー。しかし新人が超えているのは一種のラインであり、現状実家に帰っても久しぶりに息子の顔を見る安心感と、色々な意味でゴルシにネタを提供する自爆だった。
「そう言えばトレーナーの家族ってどんな人達なの?そういう話ぜんっぜん聞かないからさ」
「……聞いても面白い事無いよ?」
「いーじゃーん!ね、ね?聞かせてよ」
「……お母さんはのんびりしてる人で、僕が夏休みの時に毎年スイカを買ってくるんだけど、毎年何故かスイカじゃなくて何処から見付けて来るのかメロン買って来るような人だよ」
「……共通点丸くて大きい位しか無いんだけど」
「お父さん……えっと、毎日家に居て大体筋トレしてる人かな……後身長が高い。もう40超えてるのに未だに身長が伸びてるらしい……今190cm超えてるんじゃない?」
「……えっと、毎日家に居て筋トレしてる人……?」
「仕事とかはしてる所見た事無いね」
「それはもうヒモって奴なんじゃ…… う゛う゛ん゛!ごめん何でもないよ」
「……実際そうなんだと思うよ」
「…………そうなんだ……なんでその2人からトレーナーが産まれて来るのさ……」
「僕本当の子供じゃないからね」
「……すっごい反応に困る。この話やめよう!何だか空気が冷たくなって気がするもん!」
「でもお父さんもお母さんも良い人だったよ?」
「ごめんねトレーナーそう言う話じゃないんだぁ!?」
事実新人の本当の両親は他界しており、産まれた時から育ての親である2人に育てられている。父親がヒモの様なモノで有りながらも暮らせていると言う事は何かしらの収入がある証拠なのだが。
「逆にテイオーのお父さんお母さんはどんな人達なの?」
「ボク?んー、娘離れが出来ない人達……?1回だけパパママ呼び辞めたら2人に泣かれちゃってさー」
「……テイオーの事大好きなんだね」
「過保護なんだよ。嬉しいけどさ」
そう言って笑うテイオーの瞳に気を取られてしまい、新人は一瞬固まる。けれど直ぐに治り新人もまた笑顔を浮かべた。
最早当初の予定であったゴルシの想像を超えるトレーニングの事は遥か彼方に投げ捨てられており、2人して照れ臭そうに笑うのだった。
◆❖◇◇❖◆
テイオーと新人が話している最中、支配人がやって来た事によりお互いの家族自慢は中断され夕食となった。出てきたのは海の幸だった。
流石のオグリもコレには興奮しており、取れたて新鮮な海の幸を見て口を閉じている筈なのにヨダレが零れてしまう程。
特に茹でられたカニを見て殻ごと食べてしまいそうになる程だった。お刺身を食べていたバクシンオーと新人がカニを食べようと皿を見ると既に空になっており、2人して涙目だったが。
そうして最後の夜を皆で過ごしつつも期限は迫っていた。そう、ゴルシによって跳ね上げられたハードルを以下にして飛び越えるか——と言う期限が。
「後は車に乗り込むだけだが……結局チーム分けした理由はあったのかトレーナー?」
「大丈夫ですよ!だってトレーナーさんですからね!きっと何かしらの理由があったんです!」
「……うん、そうだね。トレーナーだもんねー」
「テイオーちゃんどうかしたー?すっごく棒読みになってるよ?」
唯一新人の口から真実を告げられているテイオーだけは余りにも期待しかないこの現状に耐えきれず、1人新人から目を離していた。けれど他の4人は新人に注目しており、その発端を作ったゴルシはニヤニヤと楽しそうに笑っていた。
「もちろん。僕は皆のトレーナーだからね!」
「そうそう……って考えてたの!?」
「テイオーちゃん?」
「え、あ、なんでもない!」
実は新人、ずっと考えていたのだ。ゴルシ、引いては全員の想像から脱する方法を。そして思い付いていた。と言うよりも初めから考えていたが、実行するのを躊躇っていたと言うのが正しかったが。しかし決意は決まっていた。主にオグリとゴルシの2人によってカニを食べられてしまった時に。
「それで?私達は何をするんだ?」
「此処からトレセン学園まで走って帰るの」
「…………車を走らせて帰るんだな?」
「ううん?走って帰るんだよ?」
「……なぁ、誰か助けてくれないか?私とトレーナーはどうやら話している言葉が違うらしい。日本語とトレーナー語では相性が悪いらしいんだ」
「オグリが壊れちゃった!?とれ、トレーナー!?」
「ふふん、そんなに褒めないでよ」
「褒めてないし寧ろ責めてるんだよ!」
ドヤ顔を決めながら発言する新人に魂の籠ったツッコミを入れるテイオーだったが、カニを食べられてしまい脳を破壊されてしまった新人には届かなかった。
「…………新人新人、今なら冗談で済むと思うぜ?」
「誰が冗談なんて言うもんか!本音だよ!正直が僕の取り柄だからね!」
「いや意固地になんなよ!?見ろ周りの顔を!オグリ無表情になってるしバクシンオーは震えてるしテイオーはマヤノに抱き着いてマヤノはテイオーの頭をひたすら撫でてんだぞ!?」
「皆走って帰れ!僕は車で帰るから!」
「この外道!鬼畜!新人トレーナー!!」
「新人トレーナーは罵倒じゃなくて事実なんだよ!」
最早ヤケクソだった。確かにゴルシの予想を超えて場の空気を殺し尚且つ自分だけは車に乗って帰るという宣言をした為に孤立無援になったが、そんな事は気にならない新人。
「チーム分け?ふーんだ!どーせ思い付きでしたよ!でもハードル上げて引けなくさせたのはゴルシだから!Aチームは僕とテイオーとオグリ!Bチームはゴルシとテイオーとバクシンオー!先にトレセン学園に着いた人達には僕がやれる範囲で望みを叶えてあげる券をあげるよ!」
「やけっぱちかコノヤロウ!?」
「……チーム脱退しようかな」
「よしよし、大丈夫だよテイオーちゃん。先に帰ったらトレーナーちゃんに何でも命令出来るから、ね?」
「うぅ……マヤノ優しい……お母さん……」
「んーー、マヤちんまだお母さんじゃ無いんだよねぇ」
「トレーナーさんトレーナーさん、私此処からトレセン学園まで走りきる自信が無いので車に乗って帰りたいです。はい」
「バクシンオーは良いよ、一緒に車に乗ろうね」
「贔屓だ!依怙贔屓だよそれは!ズルい!」
「そうだよトレーナーちゃん!ズルいよ!マヤもトレーナーちゃんと一緒に帰りたいもん!」
テイオーのケアに勤めていたマヤノだったが、流石に声を荒らげた。実際叫びたいのをテイオーの頭を撫でる事によって抑えていたが、既にテイオーはマヤノの腕の中から離れており新人の元へと詰め寄っていたからだ。マヤノも新人に詰め寄っていた。そしてそんなマヤノを見て新人は一言だけ。
「でもマヤノはカニ食べたよね?」
「それが原因でこうなっちゃったの!?」
「ぼくも、僕もカニ食べたかったのに!」
「は、早い者勝ちだった!わ、私もそんな量は食べていなかったぞ!半分近く食べてしまったけど……」
「ギルティ。オグリは車に乗せません」
「オグリ手伝え、このバカヤロウを砂浜に埋めるぞ」
アップを始めるゴルシだったが、新人は次の手を打った。
「オグリはそんな事しないよね?車に乗せないよ?」
純情なウマ娘を弄ぶかの如く小さく呟かれる一言に、ゴルシに続いてアップをしようとしていたオグリが止まった。
「おま、お前そこまでやるか!?見ろよオグリの顔!梅干しみたいにってんじゃねぇか!」
「知らないね!カニは美味しかったかぁ!?」
「食べ物の恨みはこええって言うけどいっちばんこえぇのは人の妬みって事が今分かったわ!!」
「それは良かったね!新発見だ!ゴルシかしこーい!」
「こ、コノヤロウ!?」
そうして夏合宿最後の夜を過ごし、結局皆で仲良く車で帰ったと言う。車の中でもオグリは梅干しの様な表情をしていたし、テイオーとマヤノは助手席でずっと抗議をしていたが、新人は——でもカニ食べたよね?——と言う返答しかしなかったと言う。
こうしてチーム『流れ星』の初めての夏合宿は終わった。オグリ達を寮に送り届けた後に新人は1人コンビニに立ち寄りカニカマを購入し食べたと言う。
ギャグ回。因みに新人がカニを食べたいって秋川理事長の前で言ったら、秋川理事長業務すっぽかしてたづなさん含めて3人でカニ食べに行ってます。
良かったね新人くん、実質何時でもカニ食べれるよ!
そんな日は永遠に来ませんけどね(新人くんが秋川理事長の前でカニ食べたいなんて言わないから)