純情ハートとウマ娘(凍結) 作:ゲーミング
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いつもの長い前置き終わり!本編どーぞ!
追記、この世界線だとオペラは覇王です。誰がなんと言おうと、覇王です。
シンボリルドルフとの会話を終わらせて新人は1人廊下を歩いていた。その足取りは早く、しかし表情は険しかった。
夏合宿をする際、秋川理事長から出された条件は『菊花賞』、『天皇賞・秋』の1着、『有マ記念』の出走。それ等をクリアしなければいけない。何かデメリットが有る訳じゃなかった。けれどその条件をクリア出来なければ大事なものを失うと新人は何となく分かっていた。
けれどそれはあくまで何となく、今回シンボリルドルフが新人を呼び止めたのは揶揄い3割、残り7割は単純に期待だった。
そしてその話が終わり、新人が向かった先は食堂だった。
「……オグリ居る?」
「む、トレーナーか。どうかしたか?」
新人の探していたウマ娘、オグリはそこに居た。初めは高等部を覗きに行こうと考えていたが、食堂に居そうな気がした為に新人はまっすぐ食堂へと足を進めていた。
そうしてオグリは見付かった、満足そうにご飯を食べながら、やや出てしまった腹部を隠そうともせず堂々と。
「出走登録して来るって伝えに来たよ」
「そうか。てっきりもうしたのかと思っていたが」
「いちおー確認したかったから……」
「走るぞ」
「……そうだよね。あのさオグリ」
新人はオグリの座っているテーブルに椅子を持ってきて座る。新人とオグリの前には山の様なキャベツ等があったが、ソレは気にしていなかった。
「……僕は覚悟を決めた。オグリも決めたんだよね」
「あぁ、菊花賞に出て、必ず1着を」
「その前にさ」
「……何かあるのか?」
新人との会話であってもオグリの箸は止まらなかった。早めの昼食はトンカツ定食の様でオグリの咀嚼音が響いた。
「菊花賞の前に、多分……と言うかほぼ確定で記者会見見たいなのが挟まると思う」
「……菊花賞だからか?」
「クラシック三冠の最後だからね。それと……良い意味でも悪い意味でもオグリは目立つ。だからかなり厳しいものになるかも知れない。オグリはその記者会見……インタビュー?に出ても大丈夫?早ければ今週中にはインタビューが始まると思うし」
クラシック三冠、それが菊花賞だ。多くのウマ娘が皐月、ダービーと夢を追い駆け、そして同時に多くのウマ娘が敗れて行く。けれどそれでも手を伸ばして夢を追い駆ける。それがクラシック三冠だ。
事実ウマ娘の中でクラシック三冠を取れているのはとても少ないが、居ない訳では無い。1番有名なのは勿論『皇帝・シンボリルドルフ』だが、他には『覇王・テイエムオペラオー』等が居る。そうして多くのウマ娘が手を伸ばして届かないのがクラシック三冠なのだが、今回最後の冠である『菊花賞』は注目度が他2つと比べても大幅に違う。
勿論他のクラシックレースと比べて皐月やダービーも注目されるが、『菊花賞』は文字通り桁が違うのだ。
故にオグリの存在は異色を放つ。
『皐月賞』はチームに未加入だったのと、勝利数ファン数が足りず、『日本ダービー』ではなんとか新人のチームには入っていたが、勝利数ファン数が足りず未出走と言う形で終わってしまった。
そして『菊花賞』、これはチームに加入出来ており、勝利数ファン数も規定数を超えている為に出走登録自体は出来る。
クラシック三冠の内二冠、取り零してしまっているオグリは、他のクラシック三冠路線のウマ娘達から見れば横槍であり、そのクラシック三冠を取るウマ娘を応援している
「……つまり、皐月賞や日本ダービーに出て居ない私を応援する人達は少ない……という事か」
「そうなる。初めから分かっていた事だったけど、改めて実感させられたからね……」
シンボリルドルフとの会話は酷く端的で、駆け引き何てものはなかった。ただ一言。
——トレーナーくん、君には汚名を着る覚悟はあるかい?——。
という物だった。それは勿論新人だけでは無く、オグリも着る事になる汚名だったが、あくまでシンボリルドルフは新人に向けて言った言葉だった。そしてそれを聞いて、今一度オグリと一緒に再確認をしている。
「トレーナーは不安か?」
「不安……まぁ、不安っていうか、単純にオグリがしんぱ——」
「私は
短く、けれど確かな重みを持った言葉をオグリが呟く。
「————いいや?」
そしてソレに新人も答えた。全く何の憂いも無い表情で。
「私では菊花賞を取れないと思うか?」
「全然?」
「私と2人で他人に悪く言われるのは嫌か?」
「何言われても構わないけど、言われ続けるのは嫌だね」
「なら……決まりだな」
「……なんか心配して損しちゃった……と言うか言いたい事殆どオグリに取られちゃったし。これじゃ立場逆だって」
「は、すまない。そこまで考えてなかった」
いつの間にかあったオグリと新人の壁となっていたキャベツは無くなり、気付けばお互いに視線を交えていた。そして——。
「菊花賞を取り、天皇賞・秋を取り、有マ記念すら私が喰らおう」
「……そこは取るとかじゃないの……」
「私は良く食べるからな。けどトレーナー、それ位じゃ私は満足出来ないからな?」
「……分かってる。オグリの耳に歓声しか届かない様にしてみせるから」
そうしてオグリと新人の覚悟は決められた。これから歩むであろう茨の道に、確かに一歩踏み入れた。
新人が汚名を着れば、必然的にチーム全体にも影響は出るが、
なぜなら『菊花賞』とは、クラシック三冠の終着点であると同時に——。
クラシック最強と言う確かなモノを得られるモノなのだから。
「それはそうと新人は何か食べないのか?」
「僕も食べるの!?あー、どうしようかな」
「私も追加で頼むし、どうせなら2人で食べよう」
「……まだ食べるんだね……」
「ハードなトレーニングを頼むぞ?」
「程々にするからね……?」
次回、菊花賞に向けてオグリキャップ初めてのインタビュー。トレーナーとしての意地と覚悟、そして流れ星の如く。