純情ハートとウマ娘(凍結) 作:ゲーミング
無様な投稿者ですまない……うごご。
前置きは終わりだ、本編どーぞ!
夏が終わり、直ぐに秋がやってきた。それは詰まるところ、次のイベントが新人の背中へと近付くという物だ。そしてそのイベントの名は——。
「ファン感謝祭……ですか」
「はい、オグリキャップさんの一件もあるので、出来れば何かしらのイベントなどを作って欲しいのですが、新人さん大丈夫ですか?」
トレセン学園名物『ファン感謝祭』。トゥインクルシリーズを走るウマ娘達への応援と、応援してくれているファン達への感謝を中央最大規模のトレーニングセンター学園で開催する。
勿論『祭』と名を打っているのだから屋台も出るし、なんならトレセン学園側でイベントも行われる。正式なチームであるなら、イベントの制作等が行えるが、正式なチームであるだけでは出来ない。
ある程度の功績が必要にはなる。が、しかし『トレセン学園側』からの指名ならば功績を納めて居ない内からでも出来る。
それはその年のトゥインクルシリーズでの注目度や、新人トレーナー達の中から秋川理事長が他の先生方達と話し合い決めた新人トレーナーにイベントの枠を1つお願いすると言う物だ。
その話が今、新人に対して振られていた。
新人の場合、チーム内初のGIレースという事もあり、その注目度は高くなる。そして出来るならばイベントを成功させて、出来る事ならイメージアップをしたいという物。
秋川理事長は今年のトゥインクルシリーズは、贔屓目無しに新人のチームが色々な意味で注目されると踏んでいた。
「……僕にイベント、しかも万人とは行かなくても大勢に楽しんでもらう為のイベントでしょう……?」
「そうです!それを新人さんに考えて——」
「僕に出来ると思ってるんですか!?」
「思ってません!」
「たづ、たづなさん!?」
話を振ったのはたづなである、けれど新人がそんな大層なイベントを思い付くと思っていた訳でもなかった。日頃のコミュニケーション能力がここに来て響いた。
「だって新人さんですよ!?しかもリギルや、最近ノリに乗ってるスピカとの合同イベントでもありません!新人さんが単体で考えなきゃいけないイベントです、逆に何か思い付きますか?」
「………………おもい、つかない……ですけど……と言うか合同でイベントって作っても良いんですか?」
「……まぁ一応新人トレーナーが1人で作ると言う事例はトレセン学園の中でもそれこそ初期のトレーナー達しか経験してませんし……ベテランの人に頼るのも悪くは無いと思いますが、新人さんのチームが大きく絡むイベントでないと、少し厳しいかもしれませんね」
何も新人1人でイベントを作り上げろと言っている訳では無いが、そもそもイベントを企画するに当たって他のトレーナー達とのコミュニケーションが取れるかは新人のコミュ力次第なのだ。
「……とりあえずイベントについては僕も考えてみますけど、正直たづなさんの言う通りきついかも知れません」
「頼れる方はいますか……?」
「……おハナさんや、
「色々と大変でしょうが、お願いします。私と理事長も多少ならお力を貸せますから」
「ありがとうございます。それじゃ、ちょっとチームで話し合ってみます」
そうして爆弾だけを抱えてたづなとの会話は終わり、その足で新人はチーム部屋に向かった。
ファン感謝祭で多少なりともファンの方々が喜ぶであろうイベントを、何とか考えながら。
◆❖◇◇❖◆
チーム部屋に置いてあるホワイトボードの前にテイオーが立っていた。その手にはホワイトボード用のマジックを握り締めて。
「という訳で!ちきちき、トレーナーの為にイベントを考えよーのコーナーだよ!」
「……ありがとう、ありがとう皆……ありがとうテイオー進行役になってくれて」
「本当はお前が進行役にならなきゃ行けなかったんだからな?そこんとこ分かってるかしんじーん?」
「分かってる、でも分かんないよ!」
大まかに今回の話をチーム全体で共有した所、新人の為ならという事で全員で企画を発案する為の話し合いが開かれた。
司会進行はテイオー、発案者『流れ星』全員。
「なんか良い案ある?先ずオグリ」
「……大食い大会」
「それオグリがご飯食べたいだけだよね……?」
「ち、違うぞ!別に、その、私がお腹いっぱいドーナツを食べたいとかそんな事を考えている訳じゃない!」
「もう心の声も食べたい物も出ちゃってるんだよねぇ!!」
「テイオー!私を食いしん坊キャラだと言うのは辞めてくれ!」
「事実だと思うんだけど!?」
「あ、後大食い大会するにしても優勝賞品とか考えなきゃいけないし僕のとしても却下で」
「と、トレーナー!」
先鋒オグリキャップ、企画は大食い大会。尚大食いする物は今現在オグリが食べたくなっているドーナツの模様。テイオーと新人によるダメ出しを受けて失敗。そもそも大食い大会を開く為の予算がなかった。
「マヤノは何かある?」
「マヤちんはねぇ……閃かないかなぁ」
「そこを、そこを何とかマヤノ様!」
「と、トレーナーちゃん!ちかい、近いよ!」
マヤノの肩を掴みその瞳を潤んだ瞳で見詰める新人。切羽詰まった状況の中、マトモな企画が出てきそうなのはマヤノかテイオーのどちらかしか居ないと踏んでいたから、自然と詰め寄る形になってしまう。
「マヤノ!マヤノォ!」
「え、あ、うぅ、じや、じゃあパン食い競走とかは!?それなら予算も少なくてウマ娘としても走るからイメージアップ?とか出来るんじゃないの!?」
「地味じゃねぇか?競走しながら、パン食ってまた競走だろ?なら長距離マラソンとかの方が良い気がすっけど?」
「だったらゴルシちゃんも発案してよ!トレーナーちゃんの目が血走っててちょっと怖いもん!」
今までに無いレベルで接近してくる新人にマヤノは慌てる。自分から距離を詰めるのは良いが、詰められるのはマヤノは苦手な様だ。
ゴルシの一言でマヤノもまた限界になる。一番の原因は新人なのだが。
「トレーナーイエローカードだよ、マヤノに近過ぎ。ずる……そういう事してたら出る企画も出なくなっちゃうでしょ?という訳でトレーナーはボクの隣に座っててね」
「……にしてもイベントだろ?アタシは焼きそば焼きゃ良い気がすっけどなぁ」
「ゴルシ、それゴルシがひたすら美味しい焼きそば焼いて売るだけだよ。それは最早今を輝くウマ娘じゃなくて、焼きそば職人の超新星なんだよ」
「ゴルシの作った焼きそばで大食いたいか」
「オグリは大食い大会から離れようぜ!?」
何時もなら率先して動くゴルシも、今回の事が大きい為に珍しく安定的な思考になっていた。もしもゴルシがハジけて居たなら既に企画立っていたかも知れないが、ゴルシの本質は優しいのだ。
「つーかよー、そういうテイオーはどうなんだよ。新人だって企画してねぇだろ、ダメ出しばっかしてねぇでお前らも企画出せって」
「……ボク思い付かないんだよね」
「……同じく」
「やる気あんのか!?」
「
「じゃあ企画出せって!」
ダメ出しばかりしてしまうテイオーと新人に対し、ゴルシがキレた。と言うよりも聞くばかりで自分達のほんの少しでも考えた企画を出して貰えないと企画を出し合う事が出来ないからと言うのが正しいが。
特にキレた原因として、新人の企画は今現在このチームでやれる限界を突き詰める筈なので、新人の企画の規模とどういった方向性を取るかで一番重要になってくるのをゴルシは分かっていてからなのだが。
「だって、だってさぁ!勝負服とか持ってたら、皆で入れ替えて競走とか面白そうって思ったよ!?でも誰も勝負服持ってないじゃん!強いて言うならオグリが貰えるだけなんだよね!」
「僕に至ってはもう何も思い付かない!イベント!?イベントってなんだ!お化け屋敷とかそう言うの作ればいいの!?僕達のチームで作れるか!?無理だでしょ!」
「そもそもボク達の中でまともな企画出せる人居る!?居なくない!?僕達全員企画発案とか出来ない人達の集まりだと思うんだけど!」
「もう全員に聞いたから終わりだ!このチームは終わった!イベントなんて知らないよバーカ!」
「おま、やけっぱちになんなよ!?」
テイオーはゴルシとの言い合いに発展し、新人は一人頭を抱えていた。マヤノとオグリが慰めながらその場の空気が死んで行く。そんな中だった、ナチュラルに皆に忘れられていたウマ娘が声を上げた。
「皆さん私の事忘れてません?」
「バクシンオー!?」
「はい!サクラバクシンオーです!今って企画を考えるんですよね?だったらとりあえず出された企画は全部ホワイトボードに書いておきましょうよ。何かしらのイベントで使えるかも知れませんから」
そう言ってバクシンオーはテイオーが置いたマジックを取り、ホワイトボードに『大食い大会』、『パン食い競走』、『焼きそば屋』と書き込んで行く。
実現するのがほぼ不可能である『勝負服の入れ替え』は書かれなかったが。
「先ずこのイベントってオグリキャップさんが主役になるんですよね?だってらオグリキャップさんが主役として相応しいイベントにしたい訳で、学級委員長的には大食い大会が一番ベストだと思います。その後もオグリキャップさん主体と言うよりも、他のイベント等に出演させて貰ってオグリキャップさんを覚えて貰うって言う形にした方が良いと思うんです」
「……ばく、バクシンオー?どうしたの……?なんか学級委員長みたいだよ……?」
「……ずっと」
「へ?」
「ずっと私喋ってたのにぃ!だーれも聞き取ってくれないじゃ無いですか!私も混ぜてくださいよぉ!寂しいもん!」
「ご、ごめん」
「許しません!ぜーーーったいに許しませんからぁ!うわぁぁん!」
「ごめんごめんごめんごめん!ごめんなさい!バクシンオーごめんなさい!!」
誰も聞き取らなかった故に一人だけ置いてけぼりだったバクシンオーが叫んだ。その事に対して全員が土下座するレベルで頭を下げたという。
学級委員長であるサクラバクシンオーが、本気で学級委員長をやり始めたら不味い。と言う共通の意識を残して、その日はお開きとなった。
◆❖◇◇❖◆
その日の夕方、テイオー達を寮に帰した後、新人は一人で夕焼け空の下テイオーと初めてであった観客席で黄昏ていた。まだ大体的に発表はされていないし、出走登録欄を見なければ確認出来ないというのに、もう既にオグリの名は菊花賞を楽しみにしているファン達に広まっている様で。
中々に様々な言葉が書き込まれていた。勿論オグリのファンも色々書いてくれていたが、八割程はマイナスな意見だった。
それをせめて七割にでも出来る様な企画を考えたかったが、新人は上手く企画を考えられなかった。
そもそも企画と言うのは誰かを楽しませる物であって、新人は今までそう言った物を考えた事が無かった。直近で言えば夏合宿での海水浴や、スイーツ食べ放題があるが、アレは新人が思い付いた物では有るが、様々な手助けを借りて思い浮かんだ物だったのでノーカンだ。
「黄昏ているねトレーナーくん」
「……シンボリ」
「ルドルフでいいよ。キミはどうしてフルネームで呼びたがるんだい?私とキミの仲だ、堅苦しいのはやめにしよう」
「一体どんな仲だよ」
「抱いた方と抱かれた方?」
「言い方ぁ!!と言うか揶揄う為に来たならほっといてよ!」
「何を言う。私は単にキミが悩んでいると思って探していたんだ」
そう言って新人の前に出て、手を差し出すルドルフ。茜色に染まる視界と、ルドルフの笑顔にその手を取りそうになるが、気合いで踏み止まる新人。気合いと言ったが、本当は疑心かも知れない。
「……なんでさ」
「なんで、か。私はキミに聞いたね、汚名を被る覚悟はあるかと」
「そうだね、でもそれはオグリも同じだ。自分の担当を支えられなくて、何がトレーナーだ」
「……キミのそういう所は素直に美徳だと思う。けれど一人で頑張り過ぎて居ないかい?確かに汚名云々もある、けれどファン感謝祭のイベントをキミのチームだけで行うのは、少し難しいんじゃないかい?勇往邁進、着実に前に進もうとする姿勢は好ましいが、それでキミが辛くなってはきっとテイオー達も悲しむだろう」
特別親しい仲と言う訳ではなかった。けれどルドルフは皇帝として、生徒会長として、そして一人のウマ娘として新人とオグリの心配をしていた。無論それを余計なお世話だと新人が言えば直ぐにでも立ち去るだろうが、新人はそれを言える程恩知らずでは無かった。
自分に頼り甲斐がないからそうなると、悲観的になる訳でもない。単純にチーム個人として行う企画に無理があるのは重々承知していたからだ。
そしてルドルフがそう言った部分を揶揄う事は無いと信じていたから。
「どうしたらいいかな。個人的にはバクシンオーが言った通り、チーム単体のイベントと、他のチームで開かれたイベントにオグリを出して少しでもイメージアップをして貰いたいんだけど」
「……イメージアップか。確かにそれも大事だ、けれど大事な事を忘れていないかいトレーナーくん」
新人の話を聞いていたルドルフが瞼を閉じた。呆れている訳でも無く、ただ静かに聞く為に。
「……ごめん、ちょっとわかんないかな」
「そうか、なら私が言おう」
そうしてルドルフは瞼を開く、その瞳には新人だけを映して。
「ファン感謝祭は祭りだよトレーナーくん」
その一言が新人の思考を大きく変えた。
ファン感謝祭は祭りである。果たしてイメージアップや自分達の立ち位置の安定を図る為のイベントだろうか?
否、断じて否。祭りとは。
本来楽しむ為のモノである。
と言う訳でルドルフ会長からの有難いお言葉でした。
ファン感謝祭のイベント云々のお話は全部オリジナル設定っぽくなりましたが、そこまで違和感は無い筈。