純情ハートとウマ娘(凍結)   作:ゲーミング

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 物書き仲間の一人が昨日寝る前にハメのランキング見たら作者の小説が日刊21位に入っていたそうで。とても嬉しかったですね、やっぱり目に見えて増える物って言うのはモチベに繋がりやすい。
 作者の小説を読んで下さりありがとうございます、文面では伝え辛いのですが、とても嬉しい、凄く嬉しい。さくしゃ、うれしい。

 嬉しくて数時間程放心状態になりながら書いた前置きは終わりだ、ここからは本編の時間だ!
 因みにこの前書きは昨日書いていたものなので、ランキングは一昨日だそうです。


第百四話

 先日マヤノと話した通り、ミニライブに来るファン達が多過ぎると言う事で新人は秋川理事長に相談するべく早朝から理事長室へ向かっていた。朝早くから芝の上を走り込みに来たウマ娘や、来る途中道路や河川敷を走るウマ娘達と挨拶を交わしながら来ると言う初めの頃からは考えられないコミュ力を出す新人だった。そうして理事長室へ向かう途中、とある一室から怒号が聞こえて来た。

 

「お前本当にトゥインクルシリーズ走るつもりあんのかよッ!」

 

「大いにあるさ、研究の為にね」

 

「っ……なん、なんで……デビュー戦だって1着取っただろ!?来年のクラシックの為に準備だって」

 

「して来たね、私はそれをこなして来たと思うんだが。何がそんなに不服なんだい?」

 

「お、お前……お前なぁ!」

 

 聞き覚えの無い声だったが、何となくウマ娘とトレーナーの喧嘩だと言う事は分かった。穏やかな秋の朝だとは思えない程の喧騒であり、新人は自分が怒られてる訳では無かったが、胸の内が警鐘を鳴らす。そして或る意味その警鐘は正しかった。足が廊下——地面に縫い付けられた様に動かなくなる、早く理事長室に行って秋川理事長にミニライブを午前と午後で分けたいという話をしたかったのだが。

 

クソッ!!

 

「ひゃい!?」

 

「……あ?お前……」

 

 勢い良く開かれた扉から、男が一人飛び出して来た。新人を見下ろす様に視線を落とし、トレセン学園内部で話題となっている新人だと気付き、表情は歪んだ。

 

「邪魔だ、どけ!」

 

「えっ!?あっつ……いったい」

 

 扉から出て来た男の進行方向に居てしまったが為に、新人は突き飛ばされてしまった。それ程強い力で押された訳では無かったが、体格の小さい新人は踏ん張りが効かずに尻餅を着いてしまう。鈍い衝撃に顔を歪めるも立ち上がろうとするが、視線を上げた新人の目の前には二本の足が視界に入ってしまい動きが止まる。

 

「大丈夫かい?災難だったねぇ」

 

「……君は」

 

「うん?あぁ、私の名前かい?私は」

 

「アグネスタキオン……だよね?」

 

「……驚いたね、キミと私は初対面だと思うんだが……アレかい?キミは危ない人って事かな?」

 

「何処をどう見たら危ない人に見えるの!?」

 

「いやだって、キミさっきから私の足を凝視してるじゃないか。年頃のウマ娘の足をそんなにマジマジと……蹴られても文句は言えないねぇ?」

 

「ぁ……いや、ちが……べ、別に足綺麗だなとか思ってないんだからね!」

 

「どの目線の言葉かな……?ほら、手を貸してあげようじゃないか」

 

「……あり、ありがとう……?」

 

 どうやら先程言い争いをしていたのはアグネスタキオンと言うウマ娘と、そのトレーナーだった様だ。新人はアグネスタキオンの手を借りて立ち上がる。幸いもう既に臀部には痛みは無く、立ち上がるのもスムーズに行えた。

 傍から見ればウマ娘の足を凝視し、そのウマ娘に立ち上がる為に手を借りたトレーナーと言う酷く不名誉な状況だったが、新人は気にしていなかった。

 

「……えっと、アグネ」

 

「タキオンで良いよ、長いからね。キミも新人トレーナーって呼ばれるのは嫌だろう?トレーナーくん」

 

 一々フルネームで呼ぶのは非効率だ、と言わんばかりに食い気味に言うタキオンだったが、新人はと言うと。

 

「いや全然?だって事実だし」

 

「そ、そうかい?……ふむ、普通なら嫌がると思うんだが」

 

「だって来年になれば僕新人トレーナーじゃなくて、普通のトレーナーになるし、何だったら後輩から先輩って呼ばれるんだよ?そう!僕先輩って呼ばれちゃうんだよ!?先輩トレーナーって!呼ばれたい!」

 

「途中から願望になってる事に気付いてるかな!?いや、まぁ良いだろう……それでこんな朝早くから私達のチーム部屋の前で何をしていたんだい?敵情視察かな?」

 

「通りかかっただけなんだけど、その、大声が聞こえて……」

 

「……あぁ、それはなんとも。キミは本当に災難だね。彼もトレーナーだと言うなら私の研究の理解もして欲しいんだが」

 

「……研究?」

 

 最早理事長室に行く事は思考の何処かに投げやってしまい、今は目の前のウマ娘であるタキオンに興味津々で新人は止まれなかった。特にタキオンが言う研究と言うワードに。

 

「そう、研究だよ」

 

「どうしたら早く走れるのか……とか?」

 

「それもあるね」

 

「それも?それ以外なにかあるの?」

 

 ウマ娘なら誰でも考えた事があるだろう、いや、トレーナーですら誰だって考える物だ。どうしたらもっと早く走れるのか、それはウマ娘とトレーナーの一番の課題であり、命題なのだから。けれどタキオンの言う研究はそれを含めた何かと言う。それに新人は興味を持った。

 そしてそれはタキオンも同じく。

 

「キミも興味は無いかい?()()()()()()()について」

 

「……いきなりスケール大きくなってない?その内宇宙の謎を解き明かすとか言い始めそうなんだけど」

 

「それは……いやそれも良いね、私が引退した時にでも考えるとしよう。けれど今はそうじゃない。トレーナーくん、勝ちを積んでいるウマ娘とはいったいどんなウマ娘かな?新人でありながら、チームを作ったキミに聞いてみたいね」

 

「……トレーニングを上手くこなしてるんじゃない?」

 

「実に在り来りだが、その通りだ。けど此処で一つ例え話をしよう。例えば現在トレセン学園で最強と謳われている皇帝シンボリルドルフ。彼女の行って来たトレーニングを他のウマ娘が全く同じ様にこなせたとしよう。そのウマ娘は皇帝の様になれるかな?」

 

「……無理でしょ、だってそもそもルドルフとそのウマ娘は違うんだし」

 

「そう!無理なんだよ!」

 

「ひゃん!!」

 

 新人の答えを聞いてタキオンは新人の肩を掴む、そして新人に詰め寄って行く。逆に新人は突然大きな声を出されてしまい萎縮し、更に肩を掴まれ詰め寄られてしまい更に萎縮した。その結果後退りしてしまい、気付けばタキオンに肩を掴まれた状態で新人の背中は壁とぶつかってしまう。

 

「なぜならシンボリルドルフがやっているトレーニングは他のウマ娘に比べれば重たいモノばかりだが、通常のウマ娘も頑張ればこなせる物だ!じゃあ何故彼女が行えば身になるのか……それは彼女、そう。皇帝シンボリルドルフは一つの可能性だったと言う話だ!」

 

「良いかい?可能性は無限に拡がっている。そして私はその可能性を突き詰め追い続けたい、ウマ娘としての本分であるレースに勝つと言う事と同じ、いやそれ以上に!私は、そう……可能性というを解明したいんだ!例え私が解明できなかったとしても、それはきっと無駄にはならない!突き詰めた研究はきっと他のウマ娘の辿る道の一つになるかも知れない!分かるかい?分かるだろう?キミはトレーナーなんだから!」

 

「は、はい、はい、はい」

 

 この時新人は思った。このウマ娘は僕の知っているウマ娘のどれとも合わない新種なのだと。そしてそれは正しかった。この時ばかりはゴルシの背中に隠れたい思いだった。だが残念な事に今の時間帯ゴルシは寝ている。恐らく今頃夢の中で新人と二人で木星に行く為のドーナツを仕入れている頃だろう。故に此処にゴルシは来なかった。

 

「……すまない、ちょっと熱くなってしまった。何はともあれ私達はもう限界だろう。彼とはコレでお別れになりそうだ」

 

「……あ、うん、そうで、そうですね」

 

「明日からは野良ウマ娘になってしまうな……来年の今頃はクラシックを走っているかも知れないのに」

 

「それ、それは残念だね……で、でもその、タキオンなら他に良いトレーナーが」

 

「彼で四人目だ」

 

「………………へ?」

 

「デビュー前に三人私のトレーナーを辞めているからね。恐らく彼等の中でも噂されているだろう……私にはレースに賭ける情熱が無いのだと。全くそんなつもりは無いんだが」

 

「……そっかぁ、もう四人もトレーナー交代してるんだぁ……それは、その大変だねぇ……」

 

 嫌な予感がした新人はタキオンの手を肩から外し、そそくさと逃げようとするが、逃げた奴(先頭)は逃がさないのがウマ娘。勿論タキオンに捕まってしまう。

 

「逃げるな、おい()()()()()

 

「はっ!?なんで人の事実験動物呼ばわりしてんの!?」

 

「私を勧誘しろ、そして研究させろ」

 

「僕の意思は何処へ!?勧誘を強制してくるウマ娘なんて聞いた事……きいた……あー……いや、聞いた事ない……と思うんだけどなぁ……」

 

 新人の脳裏に過ぎるのはセンスの塊オレンジウマ娘。初めから新人に勧誘してもらう気満々でやって来た彼女だった。けれど最終的には自分の意思で行った事だったので、後悔は無かったが。

 

「…………まぁ良い、暫くは一人で研究に打ち込むとしよう。それじゃあさよならだ元モルモットくん」

 

「元って付けるな!僕がクビにされたみたいじゃないか!」

 

「はっはっは!それじゃあねモルモットくん!」

 

 そう言って走り去って行くタキオンの背を眺めるしか出来なかった新人だった。

 

「〜〜〜〜〜!!なんっなんだよ!もう!」

 

 けれど、その背中は少し寂しそうに見えてしまって、新人は少なからずアグネスタキオンと言うウマ娘に興味を持ってしまった。

 彼女の語る夢、それは数多の可能性を追い掛けたい。そしてその果てにある可能性すら超えたい、と言う或る意味新人の好む夢の形だったから。

 

「……あ、理事長室行かなきゃ……」

 

 そうして漸く本来の目的地へと足を運ぶのだった。

 

 

◆❖◇◇❖◆

 

 

 漸く目的地である理事長室の前にやって来た新人。その道中に有った中々濃い出来事に少なからず意識を割かれつつも本来の目的の為にやって来た。

 

「失礼します……秋川理事長?」

 

「歓迎!良く来たな新人、恐らくミニライブの事だろう?」

 

「……そうです、あの観客の」

 

「その件なんだが」

 

「……あ、どうぞ」

 

「うむ、ミニライブの公演は一回、午前のみにして貰いたいと言う話だ」

 

「……え?」

 

「説明!困惑するのも仕方ないとは思う。けれど色々たづなとも話した結果だ。納得して欲しい。現状私の名前を使って告知してしまったが故に予想以上に注目が集まってしまった。その事に対しては……陳謝!申し訳ない!けれど私は一切後悔はしていない!」

 

「謝ってるのか開き直ってるのかどっちなんですか!?」

 

「両方!そもそも新人はコレが初めてのイベントだ。それなのに初めから余りにも詰め込み過ぎてはいけないと思い、そう判断を下した!これは理事長命令だ!応援してくれるファン達には申し訳ない、期待して見に来てくれるであろう未来のファン達にもまた申し訳なく思うが……こればかりは私の責任だ。新人、どうか私を許して欲しい」

 

 そう言って扇子を畳み、頭を下げる秋川理事長。それを黙って見ているしか出来ない新人。

 新人の脳内には様々な思考が巡る。自分が新人だから折角集まってくれたファン達にテイオーが考えたダンスや、オグリやマヤノ達の歌を聞かせられないと思うと悔しい。けれど午前の一回だけに絞られるなら菊花賞に向けたトレーニングや、ゴルシ達ジュニア組でも出れるGIであるホープフルステークスに向けてのトレーニング等が行えると思えば、悪い話では無いと打算的に考えてしまう自分が居る事。そして単純に。

 

 

 

 ——秋川理事長が頭を下げている光景を目にして、なんと言えば良いのか分からなくなってしまっていた——。

 

 

 

 けれど時間は止まらない、ましてや巻き戻らない。故に立ち止まる事は許されず、新人もまた答えを出さなければならない。

 

「……秋川理事長、とりあえず、その……頭上げてください」

 

「……新人」

 

「面と向かって話してくれてありがとうございます。でも……やっぱり、悔しい気持ちの方が強いですね。でも僕達チームの事を考えて出してくれた答えなので受け入れます……あーでもやっぱり……悔しいなぁ」

 

 それ程ファン感謝祭に強い思い入れがある訳でもない、ミニライブでは自分も踊るが、そんな事はどうでもいい。ただ単純にチームでやると決めた事に、自分の力不足が原因でダメだと言われてしまった事が堪らなく悔しかった。

 この時ばかりは上を見上げる事も出来ず、熱くなった瞳から徐々に熱が零れ落ちる感覚が嫌だった。

 

 

 チーム『流れ星』公演ミニライブ、午前11時から午前12時までの一時間の一回にてイベントは終わりと言う形で話は決まった。




 昨日投稿しようと思って書き終わってたのに、話に納得出来なくて書き直したら間に合わなくなって結局夜投稿になってしまった。
 今回の話のボツとしては、ダンス練習から始まって理事長に呼び出されて向かうと後半にあった通り、では無いけど似た様な形で終わる話で、タキオンは後二、三話後に出す予定だったんですけど、どうにも話の繋ぎ方が雑になってしまったので、思い切ってダンス練習の部分をカットしました。

 ついでにタキオンとのフラグが立ちました。キャラ崩壊……はしてないと思う。何気にゴルシ、オグリ、タキオンの三人が育成回数最多キャラだから思い入れも強いんだけど、上手く書けてるかは分からない。
 自信あるけど。
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