純情ハートとウマ娘(凍結)   作:ゲーミング

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 事を一つ片付けたと思ったら、一気に二つ事が増えてしまう現象に名前を付けたい。日常生活を送る事さえ難しくなるの控えめに言って浮世はクソゲー。
 投稿をまた開けてしまって申し訳ない、今度から休む時活動報告にでも書きます。

 愚痴という名の前置きは終わり。大分遅れましたが本編どーぞ!


第百八話

 ファン感謝祭が近付き、トレセン学園も本格的に祭りムードになって来た頃事件が起きた。先日新人の発案でカラオケでの歌練習(八時間)を終え、結果的に全員の歌うパート分けは出来た。その代わり空腹になったオグリによって財布の中身が消し飛んだのだが、それは些細な出来事に過ぎない。

 

「……あのさ、タキオン」

 

「なんだいモルモットくん、私は今何処でダンス練習をしようか考えているんだが?」

 

「……うん、取り敢えずトレセン学園近くの公園か土手に行こうか。いや、そんな事よりもさ……」

 

「それで?」

 

 タキオンの紅い瞳に見詰められ、新人は口が動かなくなっていた。正確には、動いているのだが音が出せない。タキオンに薬を飲まされた訳でも無いが、兎に角口に出すのを躊躇う様な事を言おうとしているのだが、新人は言葉が出て来ず。

 

「……えっと……だ、ダメだ!無理だよ!助けてテイオー!」

 

 情けなく涙目になりながらテイオーに助けを求めるのだった。

 

「……早く言ってよトレーナー!ボク達も皆気付いてるんだよ!トレーナーが初めに言い始めたんだからトレーナーの口から聞きなよっ!?」

 

「そんな捨てられた子犬みてーな目してこっち見ても何も言えねぇからな?」

 

「も〜!ねぇねぇタキオンちゃん、さっきからこっちの方チラチラ見てる人ってだーれ?って聞けば良いだけでしょ!トレーナーちゃん!」

 

「言ってる!マヤノさん全部言っちゃってます!トレーナーさんが聞きたかった事マヤノさんのお口から全部言われちゃってトレーナーさんの顔が梅干しみたいになってますよ!」

 

「マヤノ以外頼りにならない担当でぼくかなしい」

 

 余計な一言とはこのことを言うのだろう。確かに聞き辛い事ではあったが、新人が聞いてくる、と言った為に任せられたのだが、謎のプレッシャーによって押し潰された挙句担当、主にテイオーとゴルシに対して思っても言ってはいけない事を言ってしまった。

 タキオンに謎の男の事を聞くよりも難易度が高いであろう事を何故言ってしまうのだろうか。

 

「上等だよ!そんなに梅干しになりてぇなら顔面陥没させてやろうか新人!」

 

「トレーナーが聞いてくるって言ったんじゃん!ボクちゃんとボクが聞こうかって聞いたのに!このハクジョーモノー!」

 

「たしけて、たしけて……」

 

 顔面梅干し状態の新人が部屋から飛び出し、テイオーが新人が出て行った扉から追い掛ける。ゴルシは窓を割って飛び出して行った、後日新人宛にたづなが弁償代を請求して更に財布が薄くなるのだが。

 

 そんな騒がしい空気から一転し、タキオンが口を開いた。

 

「アレは元私のトレーナーだよ。私とは関係を断ち切ったんだが、どうやら未練があったようでね、私を引き抜くタイミングでも測ってるんだろう。戻る気はサラサラないがね」

 

「なるほど……思う所はないのか?」

 

「……ふぅン……それは元トレーナーくんに思い入れがあったかの確認かな?」

 

「いや、別にそう言うつもりじゃ」

 

「でもマヤ気になるかも!タキオンちゃんってミステリアスって感じがするもん♪」

 

「ははは!そうかい?私程分かりやすく扱い易いウマ娘は居ないさ……そうだね、軽く話そうか?」

 

「……それはまたの機会にしよう、今はトレーナーの救出が先だろう」

 

 ゴルシが割った窓から外を見ると、ゴルシに足を捕まれジャイアントスイング(振り回されている)新人が居た。そしてテイオーはそんな新人をスマホで撮っていた。

 

オラオラオラァ!人間大車輪だオラァ!滅茶苦茶体重軽いじゃねぇかテメェ!ちゃんと飯食ってんのかあぁん!?

 

「ごめんごめんごめん!ごめんって!怖い!コワイよゴルシィ!テイオー!テイオー助けてよ!」

 

「もうボク、トレーナーの事助けないって決めたもんねー」

 

「テイオォオオオオ!!!」

 

「…………アレはアレで楽しんでいるんだろうね」

 

「……アレは楽しんでるのか……?トレーナー泣いてないか?」

 

「あれだよ!ジェットコースターみたいな感じだと思うから、トレーナーちゃんも泣いて喜んでるんだよ♪」

 

「ジェットコースター!はい!私もジェットコースター乗りたいです!何処です?私にはトレーナーさんがゴールドシップさんに振り回されて叫んでる所しか見えません!」

 

「ははは、まだまだだねバクシンオーくん。アレはモルモットくんなりのじゃれあいなのさ」

 

「……じゃれつかれてるの間違いでは?」

 

「オグリちゃん、じゃれあいだよ」

 

「……そ、そうか……そうなのか……?」

 

「見てないで助けてくれないかなぁ!!!」

 

「まだまだ行くぞォ!!このまま土星まで飛んでけるように遠心力高めて二人で行くぞオラァ!」

 

「無理無理無理!いつか一緒に行ってあげるから!僕を使って空飛ぼうとしないでよぉおお!」

 

 最早竜巻と見間違う様な速さで回っている新人だったが、不思議と痛い等の声は聞こえず。最早耐久力と言う点においては人外へと踏み出している様だった。

 

 そしてそれを眺める元タキオンのトレーナーは、新人を助けるべきか否か真剣に迷っていた。

 

「……狂ってやがる……何で誰も助けに行かねぇんだ……?アレじゃアイツ死んじまうぞ……!?」

 

 真剣に新人の身を案じていたのは悲しくも部外者である元トレーナー以外この場には居なかった。

 

 

◆❖◇◇❖◆

 

 

 ゴールドシップによる無限ジャイアントスイングが終わった。新人は最早倒れ伏しており、今日は活動が困難に思われた……が。

 

「……気持ち悪……おえ……」

 

「動画時間20分超えてるんだけど、後で見る?」

 

「ウマスタにでも上げたらどうだ?テイオーのアカウントで」

 

「ボクよりマヤノの方がフォロワー数多いからマヤノに送っとくよ、良い?」

 

「アイ・コピー♪」

 

 後日たづなからの窓の弁償代を請求された後、自身がいつの間にかネットの海で笑い者になったのを知る新人なのだが、今は全く関係の無い話だった。

 

「……だぁれもしんぱいしてくれないじゃん……」

 

「モルモットくん、これを飲むといい」

 

「……たきおぉん……ありがどぉ……」

 

「どうだい?気分は」

 

「……なんだこれ、凄い……今なら、今なら土星まで飛んで行けそうだよタキオン!」

 

「ははは、それは良かったねぇ。じゃあダンストレーニングの為に()()()河川敷にでも行こうか」

 

「よーし!皆僕に続けーッ!」

 

「復活早くない!?え、足はっや!?ごる、ゴルシ行こう!トレーナーがおかしい!」

 

「……回転させた所為で脳ミソ可笑しくさせちまったかな……?」

 

 タキオンの飲み物を飲んだ新人は走り出した。それもテイオーやゴルシですら追い付けない速さで。それはもう新人が夢見ていたウマ娘になると言う過去の夢を叶えている様で。

 しかしそれを見ていたバクシンオーは疑問を抱く。

 

 アレ、トレーナーさんって短距離走れちゃうんじゃ……?と。

 

「ま、負けてられません!私こそがバクシンオー!驀進ですよ!?トレーナーさんに負けちゃったら名前変えなきゃいけなくなる!?バックシーン!」

 

 そうして先に走り出したテイオーとゴルシを追い掛け、その先を走っているドラッグ新人を追い掛けるのだった。

 

「……ねぇタキオンちゃん、トレーナーちゃんに何飲ませたの?」

 

「タキオン印の気付け薬。飲むと一週間は不眠不休で動けるよ」

 

「……絶対その薬レース前に飲んだらだめだぞ」

 

「私が?あの薬を?飲む訳無いじゃないか。あんなモノ飲んだら最後私はウマ娘として終わりだよ」

 

「……ねぇ、それってトレーナーちゃん身体大丈夫なの……?」

 

「……さぁ、人間に試したのも初めてだからねぇ……筋肉痛で一日動けなくなるんじゃないかな?」

 

「と、取り敢えず追い掛けよう!今のトレーナーは色々お危険な気がする!」

 

 そうして残っていたタキオン達も新人を追い掛けて行った。残されたのはストーカー紛いな事を始めているタキオンの元トレーナーだけだった。

 

「……俺アレ飲まされなくてかったな……噂なんて宛になんねぇし……なんだアイツ、滅茶苦茶身体張ってんじゃん……後で飯でも誘うかな……」

 

 此処に一人、新人の友人が出来たのだった。

 

 

◆❖◇◇❖◆

 

 

 新人が駆け出し、そのままの勢いで踊り始めテイオー達は戸惑っていたが、血走った目で新人が早く踊ろうよ!楽しいよ!と叫んだ為に『流れ星』の面々はタキオン以外全員が青ざめながらダンス練習に勤しんだという。尚タキオンだけは薬の作用が自分の想像していたのと違い、今後は一度自分で飲んでから新人に渡す事を決意したと言う。また、別の話だがチーム全体の暗黙の了解として新人に対してもう少し優しく接して上げようと言う話が出たのだった。

 

 そうしてダンス練習が終わり、新人は燃え尽きた。それはもう真っ白に。茜色の空の下、始めてテイオーと出会ったチーム『リギル』選抜レースに使用されたターフの観客席に座り込んでいると。

 

「……お、お疲れ様」

 

「……タキオンの」

 

「お、おう……その、か、身体大丈夫か……?」

 

「……あはは……大丈夫に見えますか?」

 

「……見え……ねぇな」

 

 タキオンの元トレーナーが新人に会いに来て居た。新人の座っている席の隣に腰を下ろし、缶ジュースを新人に渡す。

 

「……これ炭酸ですか?」

 

「おう、好きか?」

 

「炭酸苦手なんですよね……舌がパチパチして……」

 

「……へぇ、口の中弱いのか?」

 

「弱いって言うか、なんでしょう。子供の頃に飲んだコーラが思いのほか炭酸痛くて苦手になって……」

 

「ふーん……え、じゃあもしかして今まで炭酸系飲まずにその年まで?」

 

「……そうですよ?」

 

「……物は試しだ、飲んでみろよ。もしかしたら平気になってっかもよ」

 

 そう言われ、子供の頃のトラウマであるコーラに向き合う。アレは四歳の頃、父親が飲んでいたコーラが美味しそうに見えて新人も口に含んだが、四歳で飲む物では無かった。始めて口にする刺激物に新人の舌が過剰に反応し吹き出した挙句泣き喚いた。ソレをあやすのに色々とあったのだが割愛。

 

「……あ、美味しい」

 

「はは、良かった良かった……なぁ、お前さ自分の噂知ってるよな?」

 

「……まぁ、知ってますけど」

 

「俺もさ、お前の噂だけ聞いてていけすかねぇ奴って思ってたんだけどよ……噂なんて宛になんねぇのな」

 

「……と言うと?」

 

「…………俺お前みたいな奴好きだよ、騒がしい奴」

 

「さ、騒がしい奴!?僕が!?」

 

「おう、だって今日トレーニング見てたけど、ずっと煩かったじゃん?」

 

「誤解だよ!?叫んでるんじゃなくて、叫ばされてたの!」

 

「……タキオンがあんなに笑ってたの始めて見たわ」

 

 そう言って背もたれに体重を任せ、茜色の空を見上げる元トレーナー。その顔は夕焼け色に染まっており、思う所が有るのも相まって悲痛な顔に見えた。

 新人はと言うと、いきなり好きと言われたり騒がしい奴と言われ頭の中がバグっていた。

 

「……俺さ、タキオンのトレーナーになって色々頑張ってたんだけど。タキオンって真面目なのかどうか分からくなっちまって……アイツ、トレーニング偶にサボるんだぜ?……でも悪いヤツじゃ無かったのに。俺が風邪気味の時とか、風邪薬だって言って飲み薬作ってくれて、すぐ治ったりしたし。悪いヤツじゃ……優しいヤツだったのに」

 

「……」

 

 喉を通る炭酸の刺激が何処か暑くなった身体に心地よかった。新人はただ聞いていた。元トレーナーの話を。

 

「タキオンが噂のトレーナーに捕まったって聞いて、心底連れ戻したくなったんだけどさ……お前なら俺が担当になるよりタキオンの為かなって思えたしよ……俺も新しい担当探さねぇとなぁ」

 

 そう言ってコーラを一気に飲む。けれど新人はコーラの口を、缶のプルトップを見詰め、目を細めた。

 

「……勝手だよ」

 

「んあ?」

 

「勝手だよ!タキオンの悪い所知ってて、良い所も知ってたんでしょ!?それなのに、それなのに何でパートナー解消したの!」

 

「……俺が弱かったからな」

 

「……なにそれ」

 

「だってさ……自分の想像通りに行かないとイライラしちまって……でも相手はウマ娘で、我慢してた……つもりなんだけどさ。結局あんな風になっちまって……」

 

「…………」

 

「俺じゃダメなんだって思った。つうかタキオンにしたら俺ってそこまで思い入れがある奴じゃねぇだろうしな……新人、お前ならタキオンにどう接した?イライラしてて、タキオンは何時ものあんな感じだったら」

 

「……変わんないよ、ソレに分からないよ。イライラするのってタキオンとか、テイオー達に対して思った事、そんなに無いし……」

 

「それもそっか。だからかもな」

 

「……なにが?」

 

「……お前のとこにウマ娘が集まるの。俺と話してて殆どお前笑わねぇじゃん?それに偶に共同事務室来ててもパソコンと睨めっこ。偶にあのお姉様トレーナーと話してるけど。でもウマ娘と一緒に居る時のお前すごく楽しそうだから」

 

「……タキオンと一緒に居て楽しく無かったの……?」

 

「楽しかったさ!あぁ、俺の人生の中でも彼奴と出会えた事からメイクデビューで大差付けて一着取ったんだぜ!?楽しくなかった訳がねぇよ!……でもさ、それ以上に辛かったよ。タキオンの目が……期待してるとか、そんな目じゃなくて……次は私に何をさせるんだい?って目。トレーニングやってても、雑談……って言うのかな、そう言うのやっててもタキオンは俺に今日見たいな笑顔見せてくれなかったからな」

 

 それは一種の悩み。踏ん切りを付けた筈の思い、けれど手放したというのに。失ってから気付く新たな一面を見てしまい自分の感情がグチャグチャになってしまった元トレーナーの悩みだった。それを告げられても何と言えば良いのか分からない新人は残り僅かになったコーラを呷る他無かった。決して酔えないと言うのに、今だけは苦手な酒に身を任せてしまいたかった。

 

 

「……あのさ」

 

「……んー?」

 

「僕の名前……君知ってるのに、僕は君の名前知らないのズルくない……?」

 

「……あー、そっか……うし」

 

 そう言って新人の隣から立ち上がり、元トレーナーは新人に向き合う。

 

「俺の名前はイッセイ。適当に呼んでくれ、元トレーナーでも良いし」

 

「……じゃあイッセイトレーナー……ファン感謝祭で僕のチームがミニライブするの、知ってる?」

 

「おう、トレーナーの間じゃ話題だな。()()新人トレーナーが秋川理事長に目を掛けて貰ってるって。それでミニライブを開くんだーって」

 

「……見に来てよ、どうせ担当居なくて暇でしょ。それと……タキオンに僕クラシック三冠取ってもらうし。自分の勝手な都合で手放したウマ娘が活躍する場面見て欲しいし、それで悔しがって欲しい」

 

「…………あはは!キッついなぁ……分かった、絶対見に行く。ミニライブも、三冠も。今度飯くいにいこうぜ、俺奢っからさ」

 

「ホント!?じゃあ今から行こう!?」

 

「え!?ちょ、早くねぇか!?」

 

「今僕お金無くて、いやー、助かるなぁ……今月一杯ヨロシク!」

 

「………………はぁー!?」

 

 新たに新人の友人(?)か出来たのだった。

 

「初めてのご飯だから焼肉でも行こうよ!ね、ね?良いでしょ!?」

 

「ちょ、おま、やめ、お前の顔で上目遣いするんじゃねぇよ!」

 

「だめ?」

 

「〜〜〜!!!行くぞォ!!!」

 

「ヤッター!!!」

 

 訂正、金蔓が出来た。




 多分トレーナーの中にも居ると思うんです。優秀なのはわかってるけどウマが合わなくてパートナー解消する人。けどその後いい思いするか、手放したから気付けたモノに悩むかはその人次第なだけで。

 オグリの場合は無理なトレーニングを続けてウマ娘に怪我をさせてしまい、解約。
 ゴルシは沖野トレーナーとの話し合い?での引き抜き。
 バクシンオーは自分でチームから脱退して来ているので、実質タキオンとバクシンオー+でゴルシだけなんですよね、トレーナーがちゃんと見てたウマ娘って。
 一番そこら辺に敏感なのがオグリ。気にしないのがゴルシとタキオン、気付かないのがバクシンオー。
 
 新人くんに男友達作らせたくてタキオンとその元トレーナー(イッセイ)くん作った作者です。第一プロットの方で作ってた元ライバル位置の人。
 

 因みに初めに作ってたチーム構成がテイオー、マックイーン、マチカネフクキタル、ダイタクヘリオス、エイシンフラッシュだったから、こうして見ると大分大人しめなチームになってたんだなぁと初期構成プロット見てて思った。このチームもこのチームで面白そうですけどね。
 現チームは第二プロットの方で書いているので大分話の筋は違いますけど。そもそも新人くんの性別違うし(暴露)
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