純情ハートとウマ娘(凍結)   作:ゲーミング

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第百十二話(後夜祭)

 一般に公開されていたファン感謝祭も終わり、後に残ったのはウマ娘とトレーナー達で行う後夜祭だった。実際の所はイベント等で出店等に出れなかったウマ娘やトレーナー向けに学園関係者のみでの交流会という物なのだが。

 

 そしてそれは勿論新人達にも適応されるのだが、昼の一時間だけのイベントだったのでその後は殆どが自由行動となり一人一人イベントを回っていたのだが。

 

「もうムリ死にたい……」

 

「まだ言ってるのかいトレーナーくん?良かったじゃないかミニライブは大成功だよ。もっと無い胸を張るといい」

 

「男だもん……胸なくて当然だもん……」

 

「いや胸はあんだろ。アタシに比べりゃねぇけど」

 

「お前と比べて同じかそれ以上だったら僕の性別はどうなるんだよ!?」

 

「……女?」

 

「バカ!お前ほんっとバカ!」

 

「涙目になりながら見上げてくんじゃねぇよ、きゅんってしちまうよ。きゅん」

 

「棒読みで言うなよ……せめてもう少しなんかリアクションしろよ……」

 

 現在の新人はウマミミカチューシャは付けていた。流石にライブ衣装は脱いで居たが、それでも傍から見ればウマ娘にしか見えなかった。そして新人の身長でゴルシと目を合わせようとすると必然的に見上げる姿勢になるので意識していない上目遣いとなる。ゴルシには効かなかったが秋川理事長やたづなにしたら案件である。

 

「気にしててもしょうがないじゃん、と言うかトレーナーだってノリノリだったクセにー」

 

「……それは、まぁ……ちょっとね、ちょっとだけだよ?ほんの……ほんの少しだけ」

 

「その割にモグモグウィンクしてモグモグたモグモグ」

 

「食べ終わってから喋ろうかオグリ」

 

 あの大食い大会にて持ち帰ったドーナツを食べながら新人の頭を撫でるオグリだったが、行儀が悪いと言う理由で止められた。因みに新人に注意をされている中、ゴルシやテイオーがオグリのドーナツを摘み食いして居たのをタキオンとマヤノは見ていた。

 

「……取り敢えず後夜祭見に行く?」

 

「そうだね、でも流石にそのカチューシャは」

 

ばかばかばかばか、タキオン言うなよ!あの状態で知り合いにあった新人の反応もしくは知り合いの反応見てーじゃん?

 

「……なるほどね。だからさっきからカチューシャに対して誰も突っ込まないのか

 

「後夜祭って何かあったっけ?」

 

「ふっふっふ、後夜祭とは!」

 

「うわっ、急にどうしたのバクシンオー」

 

「後夜祭とはその名の通り夜に開かれるお祭りです!以上!」

 

「……まんまじゃん」

 

「まんまだね〜」

 

「読んで字の通りだからね」

 

「食べ物は出るのか……?」

 

「……そーいやマックイーンに焼きそば売り頼んだけど回収するの忘れてたな」

 

「……キミ達バクシンオーくんに対してもっとこう、何かないのかい……?」

 

「「「「無い」」」」

 

「ふぅン……ノリがいいのか悪いのか、私もまだまだって事だねぇ」

 

「?、??あの、タキオンさん?」

 

 新人とは違い確かにある胸を張りながらドヤ顔をしているバクシンオーに対して、何処か遠い目をしながらも暖かい目でタキオンはバクシンオーの頭を撫でるのであった。

 

 

◆❖◇◇❖◆

 

 

 流石にお昼頃の賑やかさは無かったが、それでも静かながら祭りは続いていた。

 

「じゃあ……全員で動く?それとも各自見て回る?」

 

「各々好きに見て回るでいいんじゃね?」

 

「じゃあそうしよっか、テイ」

 

「時間も多い訳じゃないからな〜、マヤノ一緒にどう?」

 

「いーよ♪手繋いで行く?」

 

「ボクの手で良ければ……ってね」

 

 そう言ってテイオーとマヤノは手を繋いで二人で行ってしまう、そうして新人は悟った。

 コレ二人組み作ってって奴だ!?悲しい事に一番回り易いであろうテイオーとマヤノがペアを組んで行ってしまった事で、新人は出した手を引っ込められなかった。

 

「……それじゃバクシンオーくん、キミは私と行こうか」

 

「?はい!所でトレーナーさんカチュ」

 

「さぁ!さぁさぁさぁ、行こう!もう待ち切れないんだ!」

 

「え、あ、バックシーン!」

 

「……お、オグリってもう居ない!?」

 

 タキオンとバクシンオーもペアを組み、最後の頼みとしてオグリも既に居らず周りを見渡すと。

 

「タマは食べないのか?」

 

「あんだけ食べたらもう食えんて!」

 

「いっぱい食べていっぱい寝ましょうね〜」

 

「クリークもやめぇや!?ウチ一応おのれらの先輩やぞ!?」

 

「……タマが先輩、かぁ」

 

「それデビューした日の速さで言ってますよね〜?」

 

 と、そんな感じで別のコミュニティの方々と行ってしまった。残されたのは新人一人。では無いのだが、出来れば二人っきりになりたくなかった相手だった。何せ考えてる事が筒抜けになっている様な気がしてしまうし、何となくこうなると思ってたからなのだが。ゆっくりと身体を後ろに振り向かせると。

 

「……にやにや」

 

 意地悪そうな笑みを浮かべるゴールドシップがそこにいた。

 

 

◆❖◇◇❖◆

 

 

「じゃ、僕一人で」

 

「おいおいおい、そりゃねーだろしんじーん。アタシ一人で回れってか?そんなぁ、ゴルシちゃん寂しくて泣いちゃいそう!」

 

「そのニヤニヤ引っ込めてから言ってよ!絶対今日の事ネタにする気満々じゃん!」

 

「いや?ライブでの女装に関してはネタにする気はねぇよ」

 

 意外な一言を聞いて新人は固まる。自分を玩具にしている時が一番楽しいとまで言ったゴルシが、格好のネタである女装をいじらないという事に衝撃が隠せなかったからだ。

 

「んで、正直どうだったミニライブ……お、たこ焼きあんじゃん」

 

 ゴルシの言葉を聞いて思い返す。色々と急ピッチで仕上げた故に休まる日はなかったし、何よりタキオンとの出会いもあり忙しい期間であったのは間違い無かった。

 けれど、楽しく無かったかと聞かれれば。

 

()()()()()()()()()()

 

 そうした答えを返すのだった。

 

「ならいいじゃねぇか、似合ってるぜ……そのカチューシャ」

 

「……外すの忘れてた」

 

「なんだよ、外しちまうのか?諦めてた夢、少しは叶ったってのに」

 

「……それなんだけどさ、今回ウマ娘になりきって自分がウマ娘だったらってやってみたけど、割と出来ちゃったのが悔しいよ」

 

 ゴルシ以外に触れられればそれこそ烈火の如く感情が吹き出すであろう話題だったが、手に持ったウマミミカチューシャを見詰めながらミニライブでの光景を思い出しながら、一つ一つ出して行った。

 

「……でも僕トレーナーだから。来年もミニライブやるかもしれないけど、その時はトレーナーとして裏方にでも回ろうかなって」

 

「それはアタシが嫌だ。お前もチームの一員なんだから歌っておどれー」

 

「そう言うと思った……ちくしょう、逃げ道が無い」

 

「逃げたら追い掛けるのがアタシだぞ?」

 

 そう言って新人の頭に肘を乗せてゴルシは笑う。夕焼け空と相まって綺麗だと思ってしまった新人は自身にコイツはゴルシ、コイツはゴルシと言い聞かせる。そうこうしていると気付けばトレセン学園の屋上に来ていた。一体どのルートを辿れば屋上につくのか、最早ゴルシに扇動されたまであるが、夕日が沈んで行くのを見ながら新人は口を開いた。

 

「なんの曲も無いけど、一緒に踊らない?」

 

 そう言ってゴルシに手を差し出した。そしてその手を迷わず取るのがゴールドシップ。

 

「珍しいじゃん、お前から誘ってくんの」

 

「お前にばっかり振り回されてるの嫌だもん。偶には振り回させろ」

 

「……何言ってんだお前……充分アタシの事振り回してるって」

 

「足りないんだよ!ネタにされてる度合いがさぁ!?」

 

「あぁん!?良いじゃねぇか楽しいんだから!」

 

「楽しいけど素直に楽しめないんだよコッチは!」

 

「楽しめよ!」

 

「今は楽しいよ!?」

 

「お、そうだな。……アタシも楽しい」

 

「急に落ち着くなよっ!?」

 

 そうしてお互いがお互いを振り回しながら、踊りとは言えない何かだったが、それでも二人でファン感謝祭と言う祭りを楽しんだのだった。

 

 

 

 

「……いやー、ゴルシに言われて動画撮ってくれーって言われてたけどさぁ」

 

「ねぇ〜……アレずるーい」

 

「……私もトレーナーと踊りたかったな」

 

「それはまた次の機会にしたらいいんです!今年はゴルシさんの年なんですよ!」

 

「いや今年は間違い無くオグリくんやバクシンオーくんの年だと思うんだが……まぁ、細かい事は良いかな。取り敢えず来年は私が踊らせてもらおう」

 

「「「それはずるーい(ずるい)!」」」

 

「息ピッタリですね!流れ星、さいこーです!」

 

 結局後日新人は勿論、ゴルシすらネタにされてその日一日不調気味になったという。




 前回の話もう少し書き込みたかったなぁ。とか思いつつ。
 コレにてファン感謝祭終了!次回から菊花賞に向けた話になります。
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