純情ハートとウマ娘(凍結)   作:ゲーミング

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 想いと心を置き去りに。


第十一話

 夕陽が傾き始めた頃、競走の誘いを受けオグリキャップは真剣な表情でターフを踏み締める。

 対する競走相手であるサクラバクシンオーは笑顔を全面に押し出し、ヤル気と活力に満ちた瞳でゴールを見定めていた。

 

「距離は1600で良いですか!私学級委員長なので!」

 

「あ、あぁ、私は構わない……学級委員長は関係有るのか……?」

 

「じゃあ行きましょう!レッツバクシン!」

 

 その掛け声で同時に走り出す二人。

 初めから全速力にて走り込むサクラバクシンオー、そしてそれを睨む様に追走するのはオグリキャップ。

 二人しか居ないターフ、沈みながらも夕陽は二人を照らしていた。

 

 離されている距離にやや焦っているのか、サクラバクシンオーとの距離を徐々に詰めていたオグリキャップ、そうして漸く逃げるサクラバクシンオーに並び掛けるオグリキャップだったが、途中で足が緩みスピードが落ちて行く。

 

 そこからは気持ち良く逃げるサクラバクシンオーが最終コーナーを曲がり、更にスパートを掛ける。

 

 詰めていた筈の距離が離されていき、どうにもならない距離が開いた後サクラバクシンオーが堂々一着を取りきっていた。

 

 そのすぐ後オグリキャップもまたゴールするが、その顔は暗かった。

 

 

 

 

 

◆❖◇◇❖◆

 

 

 

 

「はぁ、はぁ!素晴らしいバクシンでした私ぃ!オグリキャップさんも速かったですね!」

 

「……いや、私は……」

 

「途中体力が尽きたんですよね?分かりますよ!私も1600以上になると凄く疲れるので!ですがやっぱりオグリキャップさんは速いですよ!体力が持つようになればきっと一着間違い無しです!」

 

 言い淀むオグリキャップの言葉を遮りサクラバクシンオーは声高々にオグリキャップを褒める。

 一瞬惚けていたオグリキャップだっが、直ぐに言葉を返していった。

 

「それは適正距離の問題だろう。私もマイルは得意なんだ。だが……」

 

「もう一本走りましょう!」

 

「え?」

 

「私は疲れました!疲れましたけどオグリキャップさんと走るのが楽しいので、もっと走りたいです!ね!」

 

 荒い呼吸をそのままにオグリキャップに手を差し伸べるサクラバクシンオー。

 その手を取ろうとするが後一歩踏み出せないオグリキャップ。

 

 元気な笑顔を浮かべたまま、サクラバクシンオーが一歩踏み込みオグリキャップの手を掴んだ。

 

「事情があってトレーニングから離れていたのは知ってます!でも走るのって楽しいじゃないですか!まぁ私学級委員長なので全生徒の模範としてもっともっと速くならなきゃ行けないんですけどね!」

 

 そう言ってドヤ顔をしながらオグリキャップをスタート位置まで引っ張っていく。

 

「……分かった、もう一度……やろう」

 

「はい!レッツバクシンです!」

 

 先程と同じ言葉を言ってまた競走が始まる。

 またもサクラバクシンオーは初めから全力で前を走って行く。

 そしてオグリキャップもそれに食らい付きながら追走していた。

 

 オグリキャップの胸の中に様々な言葉が浮かんでは消えて行く。

 その度にオグリキャップの顔色は悪くなり、一回目と同じ様にスパートを掛け並び立つもまたしても速度が落ちる。

 

 そうしてまたサクラバクシンオーは一着になり、オグリキャップは二着となった。

 

「……もう……」

 

「もう一回!バクシンです!」

 

「!……あぁ、もう一回だ!」

 

「バクシンしましょう!」

 

 

 こうして三回目の競走が始まった。

 やや荒れた芝に、変わらない1600mの競走。

 初めの頃と比べればサクラバクシンオーの逃げもややキレが落ちていた。

 

 対してオグリキャップは体力は減っているものの、強靭な足腰で上がっていく。

 また徐々に詰め寄り、また一歩、もう一歩。

 

 距離を縮めて行き、また並び立つ。

 

 そうして悪くなった顔色を更に悪くしながらオグリキャップのスピードが落ちて行く——瞬間。

 

 

楽しいですね!」

 

「っ!?」

 

「わた、私すっっっごく楽しいです!オグリキャップさん!」

 

 オグリキャップの少し前を走りながらサクラバクシンオーは叫び続けていた。

 もう既に適正距離以上の競走を殆ど休み無しに走り、バテている筈なのにサクラバクシンオーは元気に走り続けていた。

 

 楽しい、サクラバクシンオーは確かにオグリキャップとの競走を楽しいと叫んでいた。

 

 対してオグリキャップはどうだろうか。

 

 この競走を楽しんでいるか、と聞かれれば——それは——。

 

 

 

「……〜〜……!私も楽しい!

 

 

 三回目の競走は負けてしまった。

 肩で荒く呼吸を繰り返すサクラバクシンオーにオグリキャップは歩み寄る。

 

 

 

「……もう一度、もう一度走ろう!」

 

「ぜっ……ぜぇ……は……はい!臨、む……所……です!」

 

 最早夕陽は沈み、寮の門限の迫る中で二人は顔を合わせ笑い合う。

 

 そうしてまたスタート位置に立つ二人。

 汗と巻き上げた土と芝の残骸にてジャージは汚れ、二人は汗だくになり呼吸は依然として荒いままだったが。

 

 

 二人は同時に走り出す。

 バクシンの掛け声を飛ばし、二人は駆け出していく。

 

「次も私が……!」

 

「……次こそ」

 

 

 

 

一着を取りますよ!(一着を掴むんだ!)

 

 

 

 結果として、オグリキャップはまたサクラバクシンオーとの競走に負けてしまった。

 

 けれどそれでもオグリキャップは競走を『楽しい』と思えたのだ。

 

 過去の傷は未だ残ったまま、置き去りにした心はまだ取り戻せていない。

 

 けれど確かにオグリキャップは前に踏み出した。

 

「づぁ……おぐり、オグリキャップさん……ふぅ」

 

「………………なんだ?」

 

「明日も、競走しましょう……!」

 

「……良いだろう……明日もまた、走ろう」

 

 ゴール地点で身体を荒れたターフの上に投げ出しながら二人は約束を交わして行く。

 

 サクラバクシンオー、オグリキャップの本日最終競走。

 ハナ差にてサクラバクシンオーの勝利。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 毎日投稿=爆進。

 バクシンはいいゾ……ジョウジィ……!

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