純情ハートとウマ娘(凍結) 作:ゲーミング
あ、前回の続きです。前回までのあらすじ?マヤノ危機一髪。
前書き終わり、本編どーぞ!
「アタシがラーメン食いに行ってる間に何があったんだ?」
「やぁおかえりゴルシくん」
拗ねて部屋から出て行ったと思われたゴルシはどうやらご飯を食べに行っていた様だった。そして帰って来て目の当たりにしたものは。
「テイオーちゃん助けて!」
「やだ。トレーナーに助けて貰えばイイじゃん」
「そのトレーナーちゃんから助けて欲しいんだけどぉ!?」
テイオーは我関せずとしているが、一応マヤノと新人の側に立っては居た。タキオンの入れてくれた紅茶を飲みながら。本当に危なくなった場合は助けてくれるだろうが、それまでは助けてくれないらしい。
「トレーナー、トレーニングしよう。私はトレーナーのトレーニングが好きだぞ」
「オグリ、オグリくび、首キマってる……うごご」
「トレーナー、トレーナー。マヤノから離れないともう少し強くしなくてはいけなくなるんだが」
「おぐ、オグリちゃん!?トレーナーちゃん絞め落とそうとしちゃダメー!でもなるべく早く助けて欲しいかな!」
新人の背後から近付き引き離そうとするオグリだったが、しっかり腕を新人の首に回して引っ張っていた。もう既にキメていた。マヤノを助ける為とは言えこのまま新人の魂まで引き離そうとしているのだろうか。真意は定かでは無いがオグリの耳は垂れていると言う事だけ残しておく。
そしてそんな光景を見たゴルシは。
「んー、取り敢えずほっぽっといて良いんじゃね?」
「うん、この光景を見てそれを言えるのは人の心が無いんだよ」
「人の心持ってるかどうかとか知らんけど、人の心がわかるウマ娘ランキング16位のゴールドシップ様に死角は無いのだ!」
「いや死角しか無いよね!16位でそんな胸張られても一切自慢にならないと思うんだよ私は!」
果たしてゴルシの下がいたのかどうかはまた別として、そろそろ新人の顔が青紫色になっているのだが、最早話題に上がる事は無いだろう。さらば新人
「ぐぐ……しぬ、し、しぐ……殺す気かぁ!」
「むっ……凄い力だったな。全力で引っ張っていたのに振り解かれた」
「そうだよね!?呼吸出来なかったもん!もう落ち着いたよ!なんで担当に殺され掛けてるんだよ僕は!」
「それはトレーナーが悪いからでしょ!」
「僕悪かった!?何がだよ!」
「まぁまぁ、モルモットくんも皆も落ち着きたまえよ。血圧が上がるよ?」
『
ウマ娘の腕力を人の腕力で振り解く事に成功した新人だったが、瞬時にタキオンの元へ跳んで行く。最早安心出来るのはタキオンだけと言う事なのだろうか。恐らく新人の担当しているウマ娘の中で一番危ない(当社比)ウマ娘だと言うのに。
「ほらな?ほっぽっといても勝手に解決したろ?」
「あ、その話まだ続くんだね」
「僕が危うく死に掛けたのに何この扱い……」
「どーせ新人がやらかしたんだろ?アタシは詳しいんだ」
「何に?」
「美味いラーメン屋」
「僕と全然関係無いじゃん!」
「誰もお前に詳しいなんて言ってないぜ?」
「〜〜〜!!!」
「本当に仲がいいねぇ」
青紫だった新人の顔が真っ赤になって行く。勘違いした事への恥ずかしさもそうだが、ゴルシの手の平の上、いや最早手の平の下で踊らされている様な気がしたからだ。新人がゴルシに勝てる日は来るのだろうか。多分来ない。
◆❖◇◇❖◆
気を取り直して、とは誰が言った言葉だったか。取り敢えずゴルシが予測した通り3000mの競走を行う為に全員が外へ出た。とは言え走る為にジャージに着替えて貰う為に新人だけが外に居る状態だったが。
ふと、新人は上——空を見上げた。もう直ぐ十月になる空を、秋から冬に移り変わる空を見てほんの少しだけナイーブになっていた。
「……後僕には何が出来るだろう」
菊花賞に向けた最後の調整として選んだのは、『流れ星』名物となりつつある競走。本当にコレで良いのかと悩みながらも、それ以外術を知らない新任トレーナー特有の焦りと疑問を胸に抱いていた。スピカやリギルからも出走するウマ娘は居ると言うのに、何故か頭にチラつくのはキングヘイローと言うウマ娘。と言うかキングトレーナーだった。
嫌われ者の新人が担当しているウマ娘になんて負けないとまで言われてしまい、本気で頭に血が上ってしまった為に恐らくもう話し合い等出来ないと思い自己嫌悪に浸った。
「よっしゃ!いっちばんのり!」
「くっ、早着替えで負けるとは思って居なかった」
「……いや、ジャンプしたら着替えが終わってるゴルシが規格外なだけだと思うよ?」
「ちょっとゴルシくんの身体を調べたくなって来たよ。どう言う原理で着替えたのかな」
「ゴルシちゃんだからね〜♪」
そうして浸っていると続々と星が集って行く。新人の自己嫌悪は吹き飛ばされる事は無くとも、少し落ち着いた。
「それじゃあ初めようか。全員整列!」
そうして走る前準備として全員が横一列に並んだ。内枠から1番として、1番マヤノ、2番タキオン、3番テイオー、4番オグリ、5番ゴルシ。そして忘れ去られたバクシンオーは欠席。何時になったらエアグルーヴは頭痛から開放されるのか。
「……ねぇトレーナー」
「なにテイオー?」
「あのさぁ……この競走ってボクが1番になってもいいんだよね?」
テイオーの一言で全員の耳が伸び、尻尾が振られた。新人はそんな事は気にしておらず、ただ一言、火に油を注いだ。
「当然。1着取った人には何かしらご褒美あげるよ。最下位は一週間チームのお茶組みね」
「よし来た!ふふふ……やったね」
「何を勝つ気でいるんだ……?トレーナーとご飯を食べに行くのはこの私だッ!」
「……え?あ、待って!?」
「じゃあマヤはスイーツでも食べに行こっかな〜♪またお買い物でもいーしー」
「ふぅン……?」
新人のお財布危機一髪!テイオーが何を強請るか分からず、オグリは新人の財布の中身を消し飛ばす気満々であり、マヤノはデートする気満々、タキオンは妖しく笑みを浮かべるだけ。絶対に誰が勝ってもロクな事にならないと察しが着いてしまい、この流れを止められる自信も無かった新人の表情筋が死んだ。
「全く、コレだから子供は」
「へー、ゴルシはご褒美要らないんだー?じゃあトレーナーと二人で遊び行こーっと」
「……長距離レースでアタシが負ける訳ねぇだろ」
乗り気じゃ無さそうだったゴルシだったが、テイオーの一言でだらけ切った表情は也を潜め、笑みを浮かべた。
「……もういいや、位置についてー」
諦めた新人は手を空に伸ばし。
「よーい……どん!」
3000mの競走が始まった。