純情ハートとウマ娘(凍結)   作:ゲーミング

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 せめて自分らしく、新人トレーナーの宣誓。

 誤字報告ありがとうございました。
 今回ちょっとまたオリ設定でます。
 ごよーしゃを。


第十三話

 トレーナー寮にある自室にて、僕は覚悟を決めていた。

 

 いつも通りの黒いスーツ、見栄を張り少しでも自分を大きく見せようとして買った革靴。

 

 今に思えば、僕は何がしたかったんだろう。

 こんなモノ必要無かったじゃないか。

 

「似合わない……黒いスーツなんて要らないんだ」

 

 黒いスーツを脱ぎ捨てゴミ箱に投げ込む。

 顕になるのは白いYシャツ。

 

「……この靴も正直足に合わないからスグ転ぶし、タダ高いだけの無駄な買い物だったんだよね……勿体ないかな……いや、こんなモノ要らない!……いら、要らな……うぅ」

 

 やや控えめに革靴をゴミ箱に優しく、出来るだけ傷付けない様に捨てて行く。

 未練がましく思うけれど、一目惚れして買ったやつだったし、もったいないと思うのも仕方ないじゃん……うぅ。

 

 靴箱から適当なスニーカーを引っ張り出した。

 ——学生時代に履いていたスニーカーだ、靴になんて興味も無かったから、買い換える度に同じ靴を買っていた。

 

 だからこの靴は僕が今まで歩んで来た道を覚えているし、僕も履きやすくて好きだ。

 

 

 外の気温はやや高く、陽気な日となっている。

 だからYシャツの上は無くして、ズボンは動き易いモノに変えて。

 靴も履きなれた何時もの靴に。

 

 トレーナーになってから置いて行ってしまったモノが大集合していた。

 けれど別に悪い気なんてしない、だってありのままの僕なんだから。

 何か特別にする必要なんて無いって、分かったから。

 

 悩むくらいなら何も考えなくていい。

 僕にはウマ娘達と同じく、走れる足があるんだから。

 

 

「……だから、行くよ。僕は……!」

 

 

 そうして僕はトレーナー寮から一歩踏み出した。

 

 向かうはトレセン学園だ!

 

 

 

 

 

 

◆❖◇◇❖◆

 

 

 

 

 先ずは事務室へと足を進めた。

 理由なんて簡単だ。

 

「いた……!」

 

「…………あら、新人じゃない。今日もトレーニングを頼みに来たの?それに黒いスーツも脱いで……似合ってたのに残念ね」

 

 おハナさんの視線はいつもと変わらない。

 けれど、その瞳に色濃く浮かんでいた『呆れ』は分かる。

 伊達に他人の視線を怖がって前髪で視線を隠してないんだ、それ位は分かる。

 

 納得も出来る、理解も出来る。

 けれど、単純な話だけど()()()()()()()()()()、僕は——。

 

「いいえ、今日のトレーニングは、僕が自分で担当ウマ娘達に行います。」

 

「……そう。それで?今度のトレーニングはどうするつもりなの?また永遠とウマ娘達に高負荷を掛けさせる様なトレーニングをするつもり?」

 

「トレーニング内容はまだ考えてません」

 

「正気……?もうトレーニング時間まで一時間も残ってないのよ?それなら私やスピカの彼に任せた方が、余っ程いいと思うけれど」

 

 ——大丈夫、おハナさんの色は呆れじゃ無くなってる。

 これは責められてる訳じゃない、これは試されてる。

 

 僕は、おハナさんに試されてるんだ……!

 

「自分の、僕のチームです」

 

「……えぇ、そうね。貴方が一人で集めたと言っても過言じゃないチームよ。新人だとチームを作るのは難しいと言う理由から本来ならチームを作ってからレースに出れるようになるのに、初めの三年間は担当ウマ娘が一人着けばそれでレースに出られる様になったけれど、それを無視してチーム作るお馬鹿さん」

 

 ……そんな事たづなさんから聞かされてたし、忘れてた訳じゃない。

 

 でももう決めたんだ、一度決めて覚悟したんだ。

 ——だから。

 

「僕は自分のウマ娘を他所のトレーナー(ライバル)に全部任せる程、自分勝手じゃなくなりたいから。それに……折角僕のチームに入ってくれたウマ娘達に、オグリキャップに申し訳ないから」

 

「……ふぅ……大丈夫そうね」

 

「はい、僕はもう大丈夫です。御迷惑お掛けしました」

 

「別に構わないわ。コレでまた逃げ出す様な事をするんだったら、貴方のチームからウマ娘達を引き抜くつもりだったし。」

 

「な、なんでそんなえげつない事しようとしてるんですか!?」

 

「ウマ娘の為よ。彼女達の世界は良くも悪くも競争社会。強く(速く)無ければ一着(勝ち)を取れない。だから私達トレーナーはそんな彼女達を勝たせる為に知識を振り絞って支えるのよ」

 

 そう言って口角をやや吊り上げた笑みを浮かべるおハナさんは、とてもカッコよくて見惚れそうになった。

 

 けれど、僕は知っているから。

 おハナさんよりカッコよく笑うウマ娘が居る事を。

 

「オグリキャップのレース前にあと二人集めます、まだ後五日残ってます。これは、これは僕の宣誓ですから——!」

 

「そう、しっかり頑張りなさい。」

 

 僕の宣誓を聞き届けてから、背を向けるおハナさん。

 その背中はとても遠く見えたけれど、立ち止まらなければ距離は縮むのだから、悲観的になる必要なんて無い。

 

 だって僕はトレーナーなのだから、下を向いて足踏みするのが仕事じゃないんだ。

 

 ウマ娘達と一着と言うゴールを見詰め続ける。

 それが、トレーナーだと思うから。

 

「……はい!」

 

 だから僕は力強く、必死に声を振り絞った。

 おハナさんは手なんか振らない。

 今のできっとおハナさんの目には、色々手を貸してあげたくなる新人トレーナーじゃなくて、チーム『流れ星』のトレーナーとして見て貰えた筈だから。

 

「あぁ、そうそう。」

 

「……はい?」

 

 途中でおハナさんは振り返った。

 

「黒いスーツ似合ってたって言ったけど、アレ嘘よ。趣味が悪いと思ってたから」

 

 ……とても良い笑顔で言われてしまった。

 

「い、良い話で終わらせてよ!」

 

「相手のペースを崩すのもレースでは有効なのよ」

 

「いっ、何時から話し合いはレースになったんですか!?」

 

 

 そうして今度こそおハナさんは僕の前から姿を消した。

 先輩にも一言謝りに行きたかったけれど、出会わなかった。

 

「……トレーニング室に向かおうか。今日のトレーニング表に関してはたづなさんにメッセージで送らせてもらおう。書面で書いてないし何ならプリントした訳でも無いから色々ツッコまれそうだけど……」 

 

 

 そうして僕はトレーナー室へ——トウカイテイオーやマヤノトップガン、オグリキャップ達とのトレーニングを行う為に歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 黒いスーツ似合ってたのに=皮肉。
 感想欄で劇場版ゴールドシップとか言う謎ワード出されてて馬鹿笑った。

 ほうれん草のオリジナル設定。
 原則としてレースに出れるのはチームを作り、規定メンバーを集めた場合のみだったが、新しくやって来る新人トレーナー達にはそれを行うのが難しいと考えた為、初めの三年間に関してはチームメンバーが規定数を下回っていてもレースに出る事を許可する。
 これは何の実績も持たない新人(モブ)トレーナーに対しての救済処置として作った設定。
 出すのが遅れてしまった……。

 感想、評価ありがとうございます。
 モチベになります、なのでもっとくれ下さい。

新人トレーナーの妹ウマ娘予測アンケート

  • 1番人気ライスシャワー
  • 2番人気キタサンブラック
  • 同じく2番人気メジロドーベル
  • 大穴カレンチャン
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