純情ハートとウマ娘(凍結) 作:ゲーミング
トレーナー回、三人称視点
新人トレーナー式トレーニングを実地して2日が過ぎていた。
落ちていた体力は充分に戻ったオグリキャップと、徐々に体力の付いてきたトウカイテイオー達。
オグリキャップのレースまで後3日となったその日。
未だオグリキャップの足は戻っていなかった。
ここ最近は天気に恵まれ良バ場が続いていたが、レース当日の天気予報は生憎の曇り。
降水確率は30%と言った所だった。
新人としては不良バ場のトレーニングも行いたかったが、今はまだその時ではないと感じておりそう言ったトレーニングは行っていなかった。
大事なのは体力作りと、走る事への楽しみを思い出して貰う事だったからだ。
とは言えオグリキャップ自身走るのは好きそうに見える、が。
競走となるとそうも行かなかった。
何故そうならなかったのか、新人は自分の経験と知識で打開策を模索し続けていた。
一人黙々と事務室にて考えていた所に、突然扉が開く音がし、新人はその方向に目線を動かす。
「よっ、最近どうだ?」
「ぁ、先輩……おはようございます。主語が大き過ぎて、その、何処を話せばいいのか分からないんですけど……」
入って来たのは『スピカ』の先輩トレーナーだった。
いつも通りの服装で棒付きの飴を咥えながら、新人の返した言葉に笑いながら謝っていた。
その姿に新人も笑みを零したが、ふと先輩トレーナーが小脇に抱えているモノに興味が行った。
「それ、その小脇に抱えたモノはなんですか?」
「ん?コレか?お前と見る為にたづなさんに掛け合って貸してもらったオグリキャップのメイクデビューレースの録画されたもんだよ。最近頑張ってるみたいだからな、俺が手伝える所は手伝ってやりたくてな」
「……そうか、そんなのも有るのか……うん」
実の所、新人はオグリキャップのレース時の録画を見た事が無かった。
それは思い付かなかった訳ではなかったが、歴玉ウマ娘達のレース録画を探したがオグリキャップのモノは見当たらなかったからだ。
「見るだろ?」
「はぃ……あの、ありがとうございます」
「良いんだよ、お前の為でも有るけど1番はオグリキャップの為だからな……」
そう言いながら事務室に置かれたビデオデッキにモノを入れて行く先輩トレーナー。
笑ってはいたが、その笑顔は何処と無く辛そうなモノだった。
そうして見たオグリキャップのメイクデビュー。
天気は晴れ、快晴にしてターフは絶好の良バ場に仕上がっており、オグリキャップも外枠7番と言うモノだった。
ラッキーセブンで良いな、と新人は考えたが、直ぐに思考を切り替える。
オグリキャップは負けた、そのレースを見る為の覚悟を決め、テレビに齧り付いた。
スタートは良好、やや外めに居ながらも膨らみはしない好走をして見せるオグリキャップ。
担当トレーナーとしての意見を一旦置き、1トレーナーとして見ると、やはりオグリキャップはこのメイクデビューに出走しているウマ娘達の中では抜きん出ていると新人は考える。
故郷で鍛えた足に、トレセン学園に来てから行われたトレーニングの数々が確かに身になっている良いレースだった。
無駄の無いコーナリング、足を溜めつつ何時でも前に踏み込む為に姿勢を正して走る姿は確かに初めて目の当たりにしたオグリキャップの走りだった。
そうして最後の直線へと入る最終コーナー。
そこからオグリキャップは仕掛けた、大きく踏み込み、録画故に若干の荒さが有るが芝を巻き上げながら走り、己の前を歩むウマ娘達をゴボウ抜きした姿は正に圧巻と言った所だった。
そうして残り400となり、1着になっていたオグリキャップは突然足が弱まる。
それまでのレース運びが全て消えて無くなる様な、今までの好走が嘘の様に走りは弱まって行く。
前髪で隠された新人の瞳が細くなる。
着順は最下位、そして俯いた顔を上げる事が出来ずにその場に立ち尽くしたオグリキャップを見て、胸が傷んだ。
そこで録画は終わり、事務室のテレビは役目を終えた。
「……オグリキャップに必要なのは、時間だと俺は思ってた」
先輩トレーナーの言葉に新人は答えない。
そうして先輩トレーナーはもう一度テレビに映像を流し始める。
「過度なトレーニング、その行き過ぎてしまったトレーニングによる親しかったウマ娘との別れ、不慣れな土地での出走。どれをとってもオグリキャップ自身に非がないと俺は思ってる」
そうしてもう一度見せられるオグリキャップの敗走。
先輩トレーナーは目を細めながら悔しそうに呟いていた。
「……どうして」
「ん?」
新人が重たくなった口を開く。
それがどう言う事に対しての疑問なのか、先輩トレーナーは心当たりかま有り過ぎて返答に困ってしまった。
数分が流れ、漸く先輩トレーナーは口を開いた。
「本当は俺がオグリキャップを狙ってたんだが、お前に先越されちまったからな。だからお前に託すんだ」
「……託す?」
「そう、俺が成し遂げたかった事をお前に託す。重荷かも知れない、本当はこんな事をお前に言うのはお門違いなのかも知れない。だけどな」
先輩トレーナーは新人の瞳を真っ直ぐ見詰めた。
棒付きの飴は既に無くなっており、真剣な表情だった。
「オグリキャップのレースが失敗すれば、お前はきっと潰れちまう。ここ最近はお前も頑張ってるが、自分の担当したウマ娘がチームから離れたり、レースを諦めて去っちまうと覚悟してても受け止め切れないもんなんだ」
全てはオグリキャップの為に。
その序に新人トレーナーの為に。
オグリキャップがトレセン学園を去ってしまえば新人トレーナーは、きっと自己嫌悪と罪悪感で潰れてしまう。
そう思った先輩トレーナーはそうならない為に新人に手を貸そうと行動していた。
その事実に新人は内心震えてしまう。
覚悟はしていた、けれど改めて感じる重圧感、背負っているのは自分の夢だけでは無く、オグリキャップの夢もまた背負い賭けられていた。
「……オグリキャップの心に出来た傷に付いては、僕には何も出来ません」
重たい口を開く新人。
そしてその言葉を静かに聞く先輩トレーナー。
新人は続けた。
「僕に出来るのはウマ娘——オグリキャップへのトレーニングだけ……ですけど、だからといってオグリキャップをこのままにしては置けません。だから……」
「……手は打ってある……って?」
先輩の言葉に対し、新人は。
「とびきりな博打ですけどね」
それはそれは弱々しい笑顔を浮かべていた。
実際その博打を考え付いたのはついさっきであり、オグリキャップやトウカイテイオー達へのトレーニングと並行して行うには過剰スケジュールも良い所だった。
けれど新人は考えを変えない。
先輩トレーナーに心配され、おハナさんには試され、ゴールドシップには蹴り込まれた。
ならもう充分だった。
新人トレーナーは負けさせる為にオグリキャップを出走させるのでは無い。
「先輩、僕のオグリキャップは……きっと勝ちますよ。その為に僕が——
そう言って新人は席を立つ。
向かう場所はウマ娘寮。
とびきりの博打を打ちに、新人は己の心を砕き燃やし自身の焔で震える身体に熱を灯す。
「オグリキャップのレース見せて下さって、えっと……あり、ありがとうございました……また明日」
「……おう、また明日な」
そうして新人トレーナーは事務室から出ようとした、次の瞬間。
「オグリキャップの出走するレース、ウチからスズカも出る」
その一言が耳に入り、新人を足を止めた。
そうして新人は振り返る、するとソコには棒付きの飴を咥えたスピカトレーナーが、そこに居た。
新人の脳裏には様々な思考が巡るが、その間僅か数秒。
瞬き一回分と言った所で、言葉を返す。
「僕のオグリキャップが、先輩のサイレンススズカを差して勝ちますから、楽しみにしててくださいね……!」
此処にチーム『スピカ』とチーム『流れ星』の対決が成ってしまった。
芝1600m、出走枠4番オグリキャップの二度目のメイクデビューまで、残り3日。
ごめん、うじトレが……新人が『僕の○○が勝ちます』って言う台詞言わせたくてこの小説書き始めたんだ……。
レースの名前は出しません。
偏った知識晒して読者を困惑させたくないし。
GII、GIIIのレースを想像してくれると嬉しいかも。
以下レースが決まってからの行動。
新人トレーナーへの説教(この時点で当日入れて残り8日)
↓
劇場版ゴールドシップ(残り7日)
↓
新人トレーナー式トレーニング(残り6日)
↓
宣戦布告回までの2日(残り4日)
↓
今夜(残り3日間)
↓
次話(残り2日)
と言う流れになるから可笑しくないとは思う。
新人トレーナーの妹ウマ娘予測アンケート
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1番人気ライスシャワー
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2番人気キタサンブラック
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同じく2番人気メジロドーベル
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大穴カレンチャン