純情ハートとウマ娘(凍結) 作:ゲーミング
オグリキャップのレース日まで残り2日。
僕の考えているモノがオグリキャップにハマるかは分からないけれど、それでもやってみる価値はあると思っている。
それがレース当日にしか出来ないモノだったとしても。
これが失敗すれば、きっと僕もオグリキャップも死ぬだろう。
僕はトレーナーとして、オグリキャップはウマ娘として。
そうならない為に予防線は貼り続けているけれど、それも正直余り宛にはならないだろう。
レース日が近いオグリキャップのトレーニングに張り付きたがら、今後の予定について考え続ける。
「お疲れ様、タイムは落ちなくなってきたね。しっかり安定して来たよ」
「……あぁ、でもそれは……」
「取り敢えず、その、休憩取ろうか。飲み物でも飲むかい?スポーツドリンクで良ければ何だけど……」
「ありがとう……」
今日だけでタイム計測は既に8回を超えた。
初めて計測した日からそう日は経っていないけれど、初めの頃よりタイムは縮んでいるし、そこから落ちたり戻ったりを繰り返していたけれど今はそれも少なくなっている。
でもそれは逆に言えば、
理想タイムは既に解っている、けれど今の最速タイムだと理想には程遠いと言う事がオグリキャップの負担になっている、と思う。
……オグリキャップに辞めて欲しくない、それは僕のワガママかも知れない。
けど、オグリキャップ自身も辞めたらきっと後悔するから、僕はそんな後悔させたくない。
僕も、もう後悔したくない。
沢山後悔した、したくもない後悔を、一つ一つ重なり合う様にして来た。
あの時こうしていれば、あの日こうしていれば。
そうした後悔を積み重ねる度に自己嫌悪と果てしない承認欲求で内側がグズグズになって行くのを僕は知っている。
だから、オグリキャップには——せめて僕の担当したウマ娘達にはそうなって欲しくない。
「……トレーナー」
「なに?」
スポーツドリンクを飲み終わり僕に渡しに来たオグリキャップが、短く僕を呼ぶ。
オグリキャップの瞳の色は晴れない、出会った頃と変わらない迷子の様な瞳。
手を差し伸べたいけれど、きっとそれはオグリキャップの求めているモノじゃないと思う、だから余計に僕はオグリキャップにどうしたら良いか分からなくなる。
「私は……勝てるだろうか」
オグリキャップの疑問、悩みは或る意味当然ではあった。
色々な段階をすっ飛ばしてのレース。
僕はオグリキャップの元トレーナーの様になっていないか不安に駆られる。
「オグリキャップは、その……どうしたい?」
我ながら情けない言葉が出て来る。
答えなんて決まってる、それでも僕はその問いを投げる。
オグリキャップは真っ直ぐに僕を見る。
「……勝ちたい、勝ちたいんだ……トレーナー」
「……うん」
「負けていい試合なんて、ある訳が無い。だから……」
「……負けるのは、悔しいよね」
「……あぁ」
「僕は何回も負けてる、トレーナースクールでも、何処にいても。その度に悔しくて、どうにかなってしまいそうになった……僕は、ほら……その……こんな性格だから仲のいい友達……とかも居なくて、独りでどうにかするしか無かったんだけど……」
オグリキャップは静かに聞き続ける。
少し遠くからサクラバクシンオーを筆頭に走り込み中の声が響く。
「オグリキャップには、そう、そうなって欲しくないって思ってるんだ……負け癖なんて、オグリキャップには……その、似合わないから」
「……トレーナー……」
僕もまた、オグリキャップの瞳を見詰める。
前髪で隠しているけれど、もう視線を恐れる必要なんて無いと、そう思うから。
「だから、今出来る事をひたすら頑張ろう?明後日はレースだからさ、明日はトレーニングをお休みにしたいと思ってるんだ。その日をどう過ごすかはオグリキャップに任せるよ。チーム全体お休みって決めてるから、仲のいい友達や、チームメンバーと時間を過ごしても良い。自主トレだってしていいけれど、おすすめはしないよ……?」
「……分かった。トレーナー、もう一回タイムを測って貰えないか?」
「……うん、じゃあ始めようか」
そうしてまたオグリキャップのタイムを計測し続ける。
結果なんて、分かりきってはいるけれど、それでも僕とオグリキャップは最後まで抗い続ける。
「……僕は、君の笑顔が見たいから」
ほんの数日前には言わなかった。
言えなかった一言を誰にも聞かれない様に、ポツリと零す。
強ばった顔で必死に走るオグリキャップを見ながら、僕はトレーナーとして見続けた。
◆❖◇◇❖◆
その後は何事も無くオグリキャップとのトレーニングが終わり、全員を寮に帰した。
トレーニングも勿論トレーナーとして大事な仕事だけれど、それ以外だってやる事は、やれる事はある筈だから。
ゴールドシップに蹴りこまれて、おハナさんに試されて、先輩とは宣戦布告をしあった。
怖い、怖いけれど立ち止まっても何も良い事なんて無い。
けれどやっぱり怖いから——。
「呼ばれて跳び出てゴルシちゃーん!オラァ!!!」
「トレーナー室の扉を蹴破るなァ!!」
ウマ娘寮長に許可を貰ってゴールドシップを貸し出してもらったんだ。
でもトレーナー室の扉蹴破って入室するなんて思わないじゃん。
何で此奴に助力を頼んだのか、僕にも分かんない。
「テンション上がるなぁ、テーマパークに来たみたいだぜ……とか言いつつゴルシちゃん的にはこの部屋地味すぎると思うからテーマパークに来た気は無くなったんだけどな」
「……トレーナー室を派手にする理由は無いでしょ?」
「いーや!お前は分かってない!そんなんだからお前未だにスルメの飲み込むタイミングがわかんねぇトレーナー何だよ。ほら、スルメ持って来たから一緒に食おうぜ」
「今から出掛けるんだよ!?何で遠足気分なんだよ!」
「ゴルシちゃん的にはスルメはおやつに含まれないから。後バナナとニンジンもおやつに含まれねぇから。そこんとこヨロシクゥ!」
「そんな事言われたって、別に何も持ってかないし遠足気分になんてならないからね?」
……人選ミスった気がしてきた。
一向に話が進まないし、ゴルシが僕の頭抑えてスルメ食べさせようとして来るのホラー以外なんでも無いんだけど。
だからそんなに押し付けられても食べないって。
頬っぺたスルメ臭くなりそうだから辞めて欲しい、切実に。
「ノリが悪ぃなぁ、だからスティックノリ使えって言ったろーよー」
「僕が液体ノリ愛好家に見えるならちょっと眼科行ってこい」
「いや、セロハン使いまくってるイメージある」
「なんだその違いはっ!」
「お前付き合い悪そうじゃん?」
「いみ、意味がわかり、分かりませんけどぉ??」
「図星でキョドってんの草」
「この……っ……はぁ」
「大丈夫か?疲れてんなら無理しなくても良いんだぞ?ゴルシちゃんこのまま帰るから」
「疲れさせてんのはお前だよッ!」
漫才やる為に呼んだ訳じゃ無いし、遠足行く気分でも無いんだよバカゴルシ。
叫んだ所為で喉痛めたし、やっぱり僕はお前が苦手だよゴルシ。
……でも来てくれてありがとう。
そう言うのが照れ臭くて、ゴルシの拘束を解いて扉の無くなったトレーナー室から出て行く。
置いて行かれ無いように隣を歩くゴルシは未だにスルメを食べさせようとしてくるけど、ホント、今は食べないから。
後にして。
今から向かう所に、こんな気分で行く事になるとは思って無かったんだけど……。
全部ゴルシが悪い。
ゴールドシップ、ゴールドシップじゃないか!
Just gorusi
スルメはおやつに入らないのでウマ娘と出歩く際には是非スルメを持っていく事をオススメします。
新人トレーナーの妹ウマ娘予測アンケート
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1番人気ライスシャワー
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2番人気キタサンブラック
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同じく2番人気メジロドーベル
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大穴カレンチャン