純情ハートとウマ娘(凍結) 作:ゲーミング
ゲートが開いた。
『各ウマ娘一斉にスタートしました!早い!既に集団から抜け出す影が一つ、サイレンススズカ。サイレンススズカです!』
全員がスタートダッシュを決め、好調に走っていたが、その中でもサイレンススズカは飛び抜けていた。
初めから全速力で走る彼女の背中は、オグリキャップからは遠かった。
『早くもサイレンススズカは第3コーナーを曲がっていきます、続いて2番
1600mと言った短い距離の中既に第3、4コーナーの中間が過ぎた中、スパートを掛けるのが7番マスターアジア。
ソレに続いて3番ドラッグマッシーンもスパートを掛ける。
オグリキャップはまだ動けなかった。
『やはりサイレンススズカは強いですね、2番シャドーウスイも必死に食らい付いていますが、この展開はどうでしょう?』
『シャドーウスイはスタミナが多くスパート距離が長い事も強味のひとつですし、デビュー戦では2000mの中距離コースを走っていたこともありあり、仕上がりは上々だと思います。後方のウマ娘達が差し替えせるかが気になりますね』
『残り600を切りました!先頭はサイレンススズカ!サイレンススズカです!サイレンススズカ強い!後続と既に2バ身差があります!』
オグリキャップはまだ動けない、脳裏に過ぎるから。
全力で走っているつもりだった、走るつもりだった。
けれど、過去に見てしまった。
全力で走ろうと頑張っていた友人が、目の前で倒れ込んでしまうのを。
オグリキャップは前を走るウマ娘達の背中から、目を逸らした。
視線の先は水を含み、重くなった芝。
踏み荒らされたターフを、見詰めていた。
気付けばオグリキャップは後方に位置していた。
『頑張って!
そんな時だった、聞き覚えのある声が、オグリキャップの耳に届いた。
重い首が上げられる。
『頑張れオグリキャップ!』
『デビューの時!応援来れなかったけど!今日は来たからぁ!』
『頑張れぇ!』
『走れ!走り抜けろォ!』
『サイレンススズカを追い抜けぇぇぇ!』
その声はかつてのチームメイト。
新人が呼んだ博打の正体、オグリキャップの心のつっかえを取る為に考え、悩み、突き進んだ。
『残り400!』
『オグリキャップさーん!バクシンですよぉ!!』
『オグりーん!!』
『オグリィ!』
オグリキャップが顔を上げれば、そこには今のチームメイト。
そしてそこには。
「オグリキャップ……っ」
不安そうに口を歪ませる新人トレーナーが居た。
——なんだ、なんでそんな顔するんだ——
オグリキャップは考える、いや。
その前に新人が叫んだ。
身を乗り出して、柵から落ちそうになりながら、トウカイテイオーとマヤノトップガンに支えられながら。
『
普段とは全く違う、タダ応援する為に叫ぶ新人トレーナー。
『
——私はバカだ——。
「……ッ!大バカだッ!」
前を向いた、オグリキャップは確かに前を向いた。
先頭との距離は凡そ八バ身。
重バ場と言う事もあり、上手く加速出来ていない様だった。
——重バ場がなんだ、バ身がなんだ——。
——そんなモノッ!抜いてしまえばどうだっていい!!——。
『残り200に……おおっと!?後方からものすごい勢いで上がってくるウマ娘が居るぞ!』
「む、ムリィ!」
「諦めん!諦めんぞォ!」
抜いて行く、抜いて、抜いて、抜いて。
傍から聞こえてくる声も置き去りにしてオグリキャップは踏み込み続ける。
オグリキャップの踏み込みで芝が捲れ上がる、姿勢は低く、踏み込みは強く。
そうして漸く、その背中に追い付き。
『8番!8番のオグリキャップだ!前を走るウマ娘達を抜いて行く!抜いて抜いて、サイレンススズカに迫るっ!!』
『今!今サイレンススズカとオグリキャップが並んだ!並びました!』
オグリキャップの瞳から消して行った。
——あぁ、そうか。そうだった、走るのはこんなに楽しかったんだ。頑張る事はこんなに楽しかったんだ。忘れていた、忘れていたんだトレーナー。私は、私は——。
曇り空の下、雨に打たれ走った。
そしてそんなオグリキャップを祝福する様に、雨は上がり、雲の隙間からは眩しい陽の光が射し込んでいた。
今、順位が確定した。
◆❖◇◇❖◆
ウイニングライブを終え、オグリキャップは一人控え室へと向かう。
拳を握り締め、歯を食いしばり、控え室へと足を進めた。
「……やっほー、オグちゃん」
控え室の前に、彼女が居た。
元チームメイト、オグリキャップの心に消えない過去と思い出を刻んだウマ娘が、壁に背を当て、杖を付きながら申し訳なさそうな表情で手を振っていた。
「……足は、もう大丈夫なのか?」
「うん、もう歩けるよ……まだレースには復帰出来ないけどね……」
「……復帰、するのか?」
「うん!今日のオグちゃん見てて、凄く走りたくなったから……また怪我しちゃうんじゃないかって不安だけど、それでも私はウマ娘だから!」
「……そうか」
彼女がレースに復帰する。
それだけでオグリキャップは嬉しかった。
彼女もかつての笑顔をオグリキャップに見えていた。
「……どうして、私のレースを見に来たんだ?」
「……うんとね、オグちゃんのトレーナーさんがね……」
新人トレーナーが、過去の事件を知る為にたづなさんや理事長に掛け合いその資料を貰い、オグリキャップの元チームメンバーを探した。
結果として新人トレーナーの頭の中にはトレセン学園に所属するほぼ全てのウマ娘の出走記録から、脚質、適正距離等が入った。
事の発端はゴールドシップに蹴りこまれた夜。
新人は何も知らないままオグリキャップをレースに出そうとしたが、新人は考えた、本当に何も知らないままで良いのかと。
そして悩み、挙句の果てに悩みも考えも飲み込んでゴールドシップと共にウマ娘寮に向かい、オグリキャップの元チームメンバーと話をして、今回のレースの応援に呼んだのだ。
未だ入院していた彼女を探したのも、新人だった。
「凄いんだよあのトレーナーさん。私が入院してる病院に来て、病室に入るなり土下座して来たんだから!」
「トレーナーが?」
「うん、オグリキャップの応援に来て欲しい……って。ホントはね、オグちゃんに酷い事言っちゃって、会うのが気不味くて、避けてたんだけど……トレーナーさんが……」
『立ち止まらないで欲しい、オグリキャップの友人として、またオグリキャップと接して上げて欲しい。怪我の事も知ってる。走れなくなって悔しい気持ちも、完全じゃないけど分かる、だけどオグリキャップが一着を取るには、君や、他のウマ娘達にも協力して欲しいんだ……だから……!』
「って言ってたの。だからね……オグちゃん」
そう言って彼女はオグリキャップに向き直す。
真っ直ぐにオグリキャップを見る。
「あの日、酷い事言ってごめんなさい!私、私本当はオグちゃんにかって欲しかったのに!オグちゃんがお見舞いに来てくれて嬉しかったのにッ!ごめんなさい、ごめんなさい……ごめん、なさい……!」
泣いていた、彼女は泣いていた。
けれど涙をオグリキャップには見せない、頭を下げ声を震わせてオグリキャップに謝っていた。
「……私は、このレースで勝てなければトレセン学園を去るつもりだったんだ」
新人に言った言葉、語ったユメノカタチ。
そういったモノを背負った今日のレース。
けれど最後はそんなモノ全部気にせず、全力で走った。
とても、とても気持ち良かったとオグリキャップは感じていた。
「……うん」
「走る事の楽しみが分からなくなった、知らない内に傷付けてしまったから。私は私が許せなくて、嫌った」
サクラバクシンオーとの競走で思い出しつつあったが、楽しむ自分が許せなかった。
勝てる競走を全て逃した、縮められた筈のタイムも上手く出来なかった。
「……うん……」
「でも、今は少し違うんだ」
それでも、それでもオグリキャップはまだ。
「
今回の順位、8番オグリキャップ。
2着。
「……トレーナーと、話がしたい……そう思うんだ」
「行ってらっしゃい、オグちゃん……
そう言って彼女はオグリキャップに背を向けた。
その顔は悲痛な顔なんかでは無くて、またトレセン学園で会えると確信している様な、信じている様な表情だった。
◆❖◇◇❖◆
控え室で着替えを済まし、レース場の外へと足を運ぶ。
雨が降っていたがレースが終われば晴れ模様。
既に陽は落ち、雲一つない星空の下にオグリキャップは居た。
ウイニングライブも無事に終わり、センターこそ逃したがしっかりと踊り切った。
見様見真似の決して上手いとは言えない踊りだったが、それでもオグリキャップはやり切った。
「……トレーナー」
「……オグリ……キャップ」
そうして今、トレーナーとオグリキャップは再び出会った。
オリジナルウマ娘の名前書いたけど、被ってないよね?
大丈夫だよね??
オリジナルウマ娘の中でお気に入りはアタマオハナバタケ。
この娘で一本書きたい。
今夜22にもう一話更新します。
9番のウマ娘名をカイザーシーホースに変更しました(オリジナルってか遊戯王やんけ)
新人トレーナーの妹ウマ娘予測アンケート
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1番人気ライスシャワー
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2番人気キタサンブラック
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同じく2番人気メジロドーベル
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大穴カレンチャン