純情ハートとウマ娘(凍結) 作:ゲーミング
オグリキャップのレースが終わった。
僕のユメ、オグリキャップのユメは、終わってしまった。
「……2度目のデビュー……成功させるって言ったのに……」
オグリキャップの勝利を祝福する様に晴れた空だった。
けれど、実際はハナ差での2着。
先輩にオグリキャップが勝ちますとか言ってたのに、僕は何をしてたんだろう。
オグリキャップが走る前に言った言葉は、前を向いて居てくれれば、オグリキャップの元チームメンバーの姿がオグリキャップの瞳に入ると思ったから。
けれど余計な一言だったのかも知れない。
余計な事を言ったから、それを重荷に思って居たのかもしれない。
「……月が出てるのに……満天の星空なのに……ちっとも嬉しくないんだ」
既に陽は落ち、月が昇る。
眩しい陽射しはなりを潜め、鮮やかな月光が地面を照らす。
それなのに僕の心はちっとも晴れない、照らされない。
「僕は……僕はまた
自然と、吐き気が込み上げた。
オグリキャップの心に空いた穴を埋める為に一人行動した。
けれどやっぱりオグリキャップも連れて行くべきだったのかと、今更思い直してる。
後悔なんてしちゃいけないのに。
僕は突き進んだ、その結果がコレなのに。
オグリキャップの元チームメンバーは無理を言って、必死に頼み込んでたづなさんと来て貰った。
今は誰とも会いたくなくて、たづなさんに僕のチームメンバーさえ送って貰っている。
「……何してんだ、僕は」
空を見上げながら、一人呟く。
ウイニングライブを見た、自分の担当したウマ娘のライブを。
何度も視界が歪んで、その都度堪えた。
今日涙を流していいのは、悔しがっていいのはオグリキャップだけだ。
そう思ったから、耐えていたのに。
「……トウカイテイオーの声が聞きたい、マヤノトップガンの声が聞きたい……サクラバクシンオーの声が聞きたい」
一人になりたいから、
湿り気を含んだターフ、重バ場でのレース。
最後の追い上げがもっと早ければ、勿体付けずにオグリキャップに連れて来たウマ娘達を合わせていれば。
寂しくなって、辛くなって自分のチームを利用しようとしてる自分に嫌気が差して。
皆の声が聞きたかった、皆の笑顔が見たかった。
僕を信じて、僕の隠した瞳を見詰めてくれる皆に会いたくて。
でも会えなくて。
本当は、本当に聞きたいのは、会いたいのは……。
「……オグリキャップ……」
零れた想いは止まらなかった。
「僕はトレーナーになるべきじゃ、無かった……きっと先輩なら。おハナさんや他のトレーナーさん達なら……きっともっと……」
僕なんかより、もっとずっと……オグリキャップを導けたのかも知れない。
悔しかった、悔しがっちゃいけないと思っているのに、勝って笑顔を見せてくれるオグリキャップが見たかったのに、その笑顔を自分で壊してしまった気がして堪らなく嫌になる。
「……オグリキャップ……っ」
また、僕は一人だ。
「トレーナー」
背後から今一番
◆❖◇◇❖◆
咄嗟に振り返る。
そこにはトレセン学園の制服を着たオグリキャップが立っていた。
どうして?たづなさんに送って貰う事を頼んだ筈だ。
どうして?失敗した僕をなんでまだトレーナーと呼ぶのか。
どうして?なんで僕が此処に居るって思ったのか。
そんな疑問が頭の中に湧いては消えて、言葉が出なくなっていた。
「……今日は冷えるな」
沈黙の中、オグリキャップがそう告げた。
確かに今晩は冷えていた、でもそれ以上に僕の胸は熱くなっていて、気にならないから気付かなかった。
「そ、うだね」
オグリキャップの顔が見れなかった。
怖かった、ユメを壊される事が、無くす事がどれだけ痛くて辛いか知っていたから、その顔を直視出来なかった。
「……すまない」
「……なんで……」
「私は、1着を取れなかった。トレーナーはきっとその事で……思い詰めているだろうと思ったから」
「……ちが、違う……違うんだ……」
怖い、怖かった。
オグリキャップに言われるかも知れない言葉が。
それに1番悔やんでいるのは、オグリキャップの筈なんだから……っ!
「だから、私は……だけど……トレーナー……」
オグリキャップの言葉を聞きたくない。
なのに言葉は出なくて、怖いと思っていたのに、振り返ってしまった。
オグリキャップと、目が合った。
「……私は、悔しい」
その一言で、胸が締め付けられた。
苦しかった、当たり前なんだ。
負けるのは悔しい、だって頑張ってたんだから。
上手く走れなくなってたのに、頑張ってトレーニングしてた。
僕の考えたトレーニング。
サクラバクシンオーとの競走。
ひたすらタイムを測った。
全部、全部全部全部。
オグリキャップは頑張ってた。
「1着を、取りたかったんだ……トレーナーの為に……私の、ユメの為に」
オグリキャップと言うウマ娘の名前を、知らない人間が居ないくらい。
ウマ娘と言ったら、オグリキャップと言われてしまう位。
「……私は、まだ……」
「……オグリ……」
「っ、トレーナー……」
「……僕は、上手なトレーナーじゃ、無いと思う……。だって、そ……僕は自信が無いんだ。こうしたい、ああしたいって気持ちが強過ぎて、オグリ、達を見てなかった……と思うから……」
思い返すのはおハナさんの言葉。
ウマ娘達への負担とか、考えてなかった訳じゃない。
そうじゃなかったけれど、やっぱり僕はまだまだ
でも、それでも、そうであっても……僕は……!
「オグ、オグリキャップ……
オグリキャップ、オグリと僕の間に合った数歩の距離を、何とか足を動かして詰めて行く。
オグリは僕を見ている、その瞳を僕も見る。
怖い、拒絶されたらと思うと怖くてお腹の底から恐怖が込み上げてくる。
それでも、もう逃げないって決めたから、僕が、そう決めたんだから!
「オグリっ!」
「……トレーナー」
「残って、僕のチームに、残って欲しいんだっ!」
夜空の下、満天の星空の下で叫んだ言葉は、情けない事に去ろうとする
けれど後悔はない、これからきっと沢山後悔する。
そうなってもっと苦しくなって辛いと思うだろうけど、それでも。
「オグリっ!」
もう、
オグリとの距離は、後一歩。
「トレーナー」
オグリの言葉で、一瞬身体が強張る。
「……私は失敗した……でも、それでも、私は……まだ……」
オグリが、その一歩を、詰めた。
「それでも……私、私は……走りたい……!トレーナーのチームで……走りたいって思ったんだ……!」
「オグリ……オグリ……っオグリ……!」
もう堪えられなかった、視界の滲みは涙となって溢れ出た。
オグリの瞳からも、同じ様に流れ出ていたから。
「私を、私を導いて欲しい!」
此処にまた一つヤクソクが出来た。
僕はオグリキャップを導く。
オグリキャップはユメへと駆ける。
そうした先に、きっとお互いの夢がある筈だから。
これにて第一章『うじうじトレーナー』編が終わりです。
こんなんオグリキャップじゃねぇ!とか、あんなに熱い演出作ってたのになんで1着を取らせねぇんだ!とか言われるかも知れません。
でも僕は初めから最後まで強いウマ娘達が1着を取り続ける話を書きたくてこの話を書き始めた訳じゃありませんから。
ご容赦を。
この後エピローグ書いて、第二章『チーム流れ星』編に入ります。
まだまだ続くんじゃよ。
新人トレーナーの妹ウマ娘予測アンケート
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1番人気ライスシャワー
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2番人気キタサンブラック
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同じく2番人気メジロドーベル
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大穴カレンチャン