純情ハートとウマ娘(凍結)   作:ゲーミング

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 一章の終わり、二章への道。


エピローグ.1

 オグリキャップは変わった。

 僕はそう思う、あの日(レース)からタイムは縮み始めたし、以前にも増して会話もする様になった。

 

 チーム全体の空気も、オグリを心配していたやや重めの空気から変わっており、良い傾向だと思う。

 対して。

 

 

「……僕は大して変わらないなぁ」

 

 

 今日のトレーニングが終わり、1人トレーナー室にて呟く。

 確かに似合わない黒いスーツは脱いだ。

 オグリとも上手くやって行けると思うし、うじうじ悩む事も少なくはなった。

 でもそれだけだ。

 

 未だに他人の目は怖いし、大声なんか出したら人の視線で死にたくなる。

 結局、僕は僕のままだ。

 

「……あぁぁ……」

 

 思わず溜め息が零れた。

 

「悩み事ですか?」

 

「うん、変わろう変わろうと思ってるのに、変われなくて……ってなんでサクラバクシンオーが此処に居るの!?」

 

 背後から聞こえてきた声に、言葉を返し違和感に気付き振り返ると、サクラバクシンオーがソコに立っていた。

 

「忘れ物です!主にカバンを忘れてました!」

 

「……なんでカバン忘れちゃうの?ちゃんと自分が持ってきた物は持って帰ろうね……?」

 

「ちょわ!?いや、確かに、えぇ、確かにその通りですとも……忘れ物に気付いたの全速力で寮に帰ってから気付いたんですぅ……」

 

 そう言われてみれば、確かに少しサクラバクシンオーの額には薄らと汗が浮いていたし、心做しかサクラバクシンオーの周りだけ湿度が高い気もした。

 

 取り敢えず水分補給をさせようと思い、サクラバクシンオーに僕が飲む用に作り置いた麦茶を手渡す。

 

「まだ飲んでないから、全部飲んじゃって。寮から此処まで少し距離あったろうし。少し休んでから帰るといいよ」

 

「はい!ありがとうございますトレーナーさん!」

 

 個人的に彼女は好ましいと思う。

 元気があるのは勿論、サクラバクシンオーに裏表が見えないと言う所も好きな所だ。

 この娘が影で誰かの陰口を言っているイメージは付かない。

 

 後、正直話してて楽しい。

 

「そう言えばトレーナーさん!」

 

「……なに?」

 

 明日のトレーニング計画表をPCで作っていると、サクラバクシンオーが話し掛けて来る。

 僕から話題を振らなくても良い所も好きだ、気楽だ。

 

「トレーナーさんの、その()()()()()()()()()()()()

 

 一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。

 

「……なんで?」

 

 質問に質問を返すと言う訳の分からない事をしてしまう程、今の僕は焦っていた。

 まさかサクラバクシンオーにそんな事を言われるとは思っていなかったし。

 

「いえ!トレーナーさんって私達の目を見て話そうとするじゃないですか。それなのに前髪で隠れてたら結局相手の目が見えてないから、意味が無いんじゃないかと思いまして……」

 

「……まぁ」

 

 サクラバクシンオーの言う通りなのだが。

 それでも僕はこの前髪を切ろうとは思って無かった。

 色々不便だけれど、僕を守ってくれて居たものだったから。

 

「不便ですよね?」

 

「……切ろうとは思わないけど」

 

「なるほど!じゃあ()()()()()()!」

 

「……あげる???」

 

 座っていたサクラバクシンオーが勢い良く立ち上がり、その健脚を持ってして爆速で詰め寄ってきた。

 

「ちょ!?何するの!?」

 

「大丈夫です!一瞬で終わりますから!バクシンですよトレーナーさん!」

 

「こわ、こわい!怖いよ!?」

 

 僕を捕まえようとするサクラバクシンオー、サクラバクシンオーから逃げようとする僕。

 

「にっがしませーん!」

 

「人の嫌がることしない!あ、まって、あっ!」

 

 どう考えてもこのトレーナー室は小さいし、あっという間に捕まり、それでも諦めなかったせいでサクラバクシンオーと僕は足をもつれさせながら倒れ込む。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 サクラバクシンオーの瞳が、桜が僕の瞳から離れない。

 何か違和感を覚えるが、サクラバクシンオーの瞳から意識が外れなくて動けなくなっていた。

 

 僕の顔の横からサクラバクシンオーの手が伸びてきて、一瞬身体がビクつく。

 

「……ほら、やっぱり前髪上げてた方が良いですよ?」

 

「……ぁ……」

 

 サクラバクシンオーは僕の頭に、恐らくサクラバクシンオーが付けていたで有ろうカチューシャを取り付けた。

 

 ゆっくりと僕はサクラバクシンオーから離れ、座り込む。

 前髪が上げられ、視界がクリアに見えるが、ほんの少し寂しく感じた。

 

「自分を変えるのは難しいかも知れませんが、私で良ければ手伝いますとも!学級委員長ですから!!」

 

 ……あぁ、でもそれで良いかなと、サクラバクシンオーの花が咲いた様な笑顔を見て思ってしまう僕は、きっと単純なんだろう。

 

 仕方ない、うん。

 

 

 

 だって僕はウマ娘には勝てないんだから。

 

 

 

「……コレ、少し借りていい?」

 

 

「トレーナーさんにあげましょう!」

 

「借りるって話してたのにあげるの!?コレ使ってるやつでしょ!」

 

「まだ後部屋に6つありますから!」

 

「まさかの1日おきに変えてた!?」

 

 

 ……この日、僕の部屋にサクラバクシンオーから貰ったカチューシャが加わった。




 難産だった、ホントに。

 初めは新人くんゲロ吐きながら自分の意思で前髪切る話にしようかと思ったけど、コッチの方が新人っぽいかなと思い変更しました。

 後2話くらい書いたら第二章行きます。

新人トレーナーの妹ウマ娘予測アンケート

  • 1番人気ライスシャワー
  • 2番人気キタサンブラック
  • 同じく2番人気メジロドーベル
  • 大穴カレンチャン
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