純情ハートとウマ娘(凍結)   作:ゲーミング

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 新人が死んだ日、オグリキャップが生き返る日。


エピローグ.2

 新人が前髪をカチューシャで上げ始めて早3日が経ったある日の事。

 

「私の出走記念?」

 

「負けちゃったけどさ、やっぱりレースに出たなら何かしらのご褒美?があった方が、その、いいんじゃないかと思ってね」

 

 トレーニング終わりのオグリキャップを呼び止め、レース出走記念祝賀会を行いたいと新人は話していた。

 何を隠そうこの新人、厚かった。

 この日の為に手持ちの金全てを財布に入れて来た。

 

「そうか、なら私はご飯が食べたいな」

 

「えっと、トレーニング中にもおにぎり作ったけど足りなかった?」

 

 今現在オグリキャップと新人以外は既にトレーニングを終え、寮へと帰宅している。

 オグリキャップも帰る所だったが、新人が呼び止めた形になる。

 つまりオグリキャップはこれから夕飯を食べる所で、1番腹を空かせているタイミングと言っても過言では無かった。

 

 因みにトレーニング中に作ったおにぎり、その数20個。

 オグリキャップ専用に作った特大おにぎりは6個と言う数になっている。

 その際に炊いたご飯の量、なんと8合。

 

「走ったらお腹が減ったんだ。それに」

 

「……それに?」

 

 オグリキャップは瞼を閉じて言葉を溜める。

 続きが早く聞きたい新人は瞬きが早くなる。

 

「最近ご飯が美味しい」

 

「良しじゃあ食べに行こうッ!」

 

 新人は、オグリキャップの良い笑顔に即答した。

 尻尾をブンブンと振るオグリキャップの姿は中々に珍しい、と新人は思っているが、実際は食事となるといつもこうなる。

 

「今から行くのか?私は構わないが」

 

「行こう、今から、直ぐに!取り敢えずたづなさんに連絡は今入れて……早いな、もう返信来た。私の方は構いませんが、寮長にも許可を取ってください……だって」

 

「私の方から連絡を……」

 

 そう言ってスマホを取り出すオグリキャップだったが、動きが固まる。

 不思議に思った新人が声を掛けようとするが。

 

「すまない、やはり携帯は苦手だ。手伝って欲しい」

 

 先にオグリキャップが折れた。

 ピン、と立っていた耳は少し垂れ、尻尾も大人しくなってしまった。

 

「いいよ」

 

 スマホの電源を入れ、ロックを解除して貰いオグリキャップの隣に立って新人はスマホで寮長をやっている栗東寮の寮長である『フジキセキ』に対しメッセージを送る。

 

「……トレーナーもスマホの入力が早いんだな」

 

「まぁ、初めて携帯買って貰ったのが中学生に上がった時だったから……多分10年位使ってるからかな」

 

「ぴーしー?の入力も早かった」

 

「僕が入ったトレーナースクールの方じゃ基本的にPCでやる作業とか多かったからね」

 

 新人はデジタル世代であり、アナログもこなせるが、やはりデジタルの方が楽でありついついそこら辺に頼っていた。

 軽度のスマホorPC依存症と言っても過言では無かった。

 

「……スマホの使い方を教えて欲しい」

 

 文字を打っている新人の指の動きは実際気持ち悪かった。

 

「……使い方……かぁ」

 

 フジキセキからの返信待ちの暇な時間を使ってスマホを教えるべきか、もう直接フジキセキの元へ向かうか迷っていた。

 正直にいえば新人もお腹は減っていたのだ。

 

 なにせ新人の朝はそこそこ遅い。

 恐らくウマ娘達が遅刻をしなければ全員が登校した後、校門を閉めるたづなさんと会うくらいには遅いのだから。

 具体的に言えば起きる時間が午前8時過ぎ。

 朝食を抜いて居るのが基本になっている為に、食事を摂るのは昼を過ぎた13時頃になる。

 そこからトレーニングを行う為に準備を始めとして、オグリキャップ達のトレーニング中に補給するおにぎり等を作る為に基本的に食事を摂る回数は少ないのだ。

 

 完全な新人の自業自得であり、割と生活習慣が悪いからなのだが。

 

「取り敢えず……何処が分からないか教えて欲しいかな」

 

「全部」

 

「……え?」

 

「全部分からない。文字を打つのも……えっと、フリスク?」

 

「フリック」

 

「そう、それだ。お菓子の名前だから覚えてる」

 

「間違えてるからね?覚えられてないよ?」

 

「……お菓子の名前と間違えてしまったんだ……」

 

 そこからフジキセキからの返信が来るまで軽くスマホの使い方を教える新人だった。

 

「なるほど、取り敢えず使い続ければ良いんだな」

 

「……うん、まぁ。そうなるよね」

 

 後は慣れて貰うだけだった。

 

 

 

 

 

 

◆❖◇◇❖◆

 

 

 

 

 フジキセキから返信があり、門限を一時的に解除して貰った後。

 新人とオグリキャップは夜の繁華街を歩いていた。

 右見ても飲食店、左見ても飲食店。

 オグリキャップのお腹の虫が騒ぎ始めていた。

 

「オグリ何食べたい?」

 

「……肉、ニンジン、ご飯」

 

「うーん、肉ニンジンご飯……ぁ、レストランあるじゃん。彼処でも良い?」

 

「あぁ、でもなんか高そうだぞ?」

 

「値段は気にしないの。今日はオグリの出走記念なんだから」

 

「……そうかじゃあ」

 

 そう言って2人はレストランに入室した。

 そして新人は思い知る、財布に入った金なんて、諭吉が財布から飛び出し大差を付けて飛び立って行く恐怖を。

 

「私はこの超特大ニンジンハンバーグと、セットに爆盛りライス。焼きニンジンのソテーと餃子5人前を頼む」

 

「…………」

 

 そうして届いた食事はオグリキャップの口に吸い込まれ、消えて行く。

 新人の頼んだ普通の、ニンジンハンバーグがヤケに小さく見えた。

 

「すまない、追加なんだが」

 

「…………」

 

 まだ食べられるんだ……なんて達観しながら先程より注文量が増えたオグリキャップを見ながら、デザートのティラミスを食べる。

 何故か味が感じられなかったと言う。

 

「デザートで……」

 

「すごい食べるね!?」

 

「あぁ、美味しいし……」

 

「……美味しいし?」

 

「トレーナーと2人で食べに来ているから、なぜか嬉しくて箸が止まらないんだ」

 

 そんな事を笑顔で言われたら、もう新人は何も言えない。

 やたら長い注文表を貰い、新人の財布が薄くなった。

 

 

 

 後悔は無い、新人に後悔は無かった。

 大差のリードを付けて消えた諭吉、あれだけ厚かった1番人気財布はいつの間にか薄くなり、ケツポケットに入れている膨らみがどこか寂しい。

 

 けれど笑顔でご飯を食べるオグリキャップを見たら、お金が飛んだ事なんてそう気にならなかった。

 

「……あ」

 

「どうかした?」

 

「……肉まん」

 

「……ふふ、まだ食べたいの?」

 

「……うん」

 

「いいよ、何時も買ってあげられる訳じゃないからね。食べたい分買うから、遠慮はしないで」

 

「……トレーナー」

 

「ん?」

 

「……ありがとう、美味しいよ」

 

 この日見たオグリキャップの笑顔は、新人の記憶に強く焼き付いた。




 新人くんのお財布が……財布が……財布そのものがァァァ!

 はい、という訳で書きましたオグリキャップによる新人のお財布消滅RTA。

 なお新人くんはお財布が消滅しても、オグリキャップの笑顔を見れば許せてしまう模様。

新人トレーナーの妹ウマ娘予測アンケート

  • 1番人気ライスシャワー
  • 2番人気キタサンブラック
  • 同じく2番人気メジロドーベル
  • 大穴カレンチャン
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