純情ハートとウマ娘(凍結)   作:ゲーミング

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 プール、水着、勧誘!

 IQ30000ゴールドシップ。



第二十七話

 その日の朝がやってきた。

 ゴールドシップの提案により引き起こされたメジロマックイーン争奪戦、その最終日が今日だった。

 確かな手応えも無いまま新人と先輩トレーナーは今日の予定を組み立てて行き、トレーニングを行なう時間へと流れて行く。

 

「おはようトレーナー」

 

「おはようオグリ」

 

「今日は何をすれば良い?」

 

「今日のトレーニングはね、プールを使うんだ。漸く施設を借りれたからね……長かった」

 

 トレーニングを行う為の施設は基本争奪戦になる、人気順だとジムが1番高く、2番目にプール、3番人気はターフやダートと言った特設コースだ。

 

 勿論3番人気だからと言って何かある訳じゃない。

 コースが3番人気な訳としては、やたらコースが大きい為に、そもそも予約をしなくても使えると言う点が大きい。

 

 けれどジムやプールは室内の為に、必然的に使える人数が限られていく。

 

「なら水着が必要だな」

 

「そうだね、トウカイテイオーやマヤノトップガン達は今取りに行ってるよ。オグリも行ってきたら?」

 

「そうする、トレーナー」

 

「なに?」

 

「トレーナーは泳がないのか?」

 

 オグリキャップの言葉に、一瞬思考が止まる新人だった。

 

「僕がプールに入ったら、誰がトレーニングの監督するのさ」

 

「……そうだった」

 

 それ以外にも理由はあったが、新人は言わなかった。

 別に担当ウマ娘に自分が泳げない事を伝える必要は無いと、そう思ったからだ。

 水が怖い訳では無い、単に泳ぐ機会が少なく更に言えば泳ぐ事に意味を見いだせなかったから特に練習をしていなかったというのが本音だ。

 

「トウカイテイオー水着バージョン!」

 

「マヤちんも水着だよっ♪」

 

「早くない!?色んな意味で早過ぎない!?」

 

 既に水着に着替えたトウカイテイオーとマヤノトップガンの突撃により、時間は過ぎていく。

 

「バクシン的に来ました!」

 

「……可笑しいなぁ、トウカイテイオーやマヤノトップガンは少し時間掛かったけど、サクラバクシンオーは数分で帰って来てる……」

 

「早着替えも得意ですから!」

 

「なるほど?」

 

「学級委員長ですし!」

 

「そこやっぱり関係有るの?無いと思うんだけど……」

 

 そうしてトレーニング前の雑談に花を咲かせながら、今日もトレーニングを行った。

 

 そして、空が夕焼け色に染まった頃、最後の勧誘が始まった。

 

 

 

◆❖◇◇❖◆

 

 

 

 新人と先輩トレーナーの表情は固かった。

 目の前に居るのは、この一週間勧誘を全て断り続けたウマ娘メジロマックイーンが居る。

 そしてそんな新人達を見守る様に両チームのウマ娘達が居る。

 その中には当然、ゴールドシップも居た。

 

「……騒がしかったこの一週間に、終止符を打ちますわ」

 

「……なんかごめんなさい」

 

「すまん……」

 

 もう既にトレーニングを終えているウマ娘達より、3人は疲れ切っていた。

 と言うのも新人や先輩トレーナーが断られても勧誘を諦めなかった為に、たまたまその光景を見ていた他チームのトレーナーがメジロマックイーンを勧誘し、更には1度断った後のチームからも勧誘が飛んで来るという事象を引き起こしていた。

 

 因みにたまたま出会ったゴールドシップにメジロマックイーンがジャーマンスープレックスを掛けたのはもう既に全てのウマ娘達が知っている。

 白目を向いて気絶したゴールドシップをその場に放置して、執拗い勧誘から逃げる様に立ち去って居た為に余計に疲れていたのだ。

 

 ジャーマンスープレックスを掛けたのも、別に1日だけでは無かった。

 ゴールドシップと出逢えば必ずやっていた為に、ゴールドシップの後頭部には割と大きなタンコブが今現在も出来ていた。

 

「うーし、じゃあ先ずはトレーナーから勧誘開始いってみよー!」

 

「お前が仕切るのか!?今の今まで殆ど何も介入してこなかったお前が!?」

 

「だってゴルシちゃんの存続が掛かってるし、この話はアタシが主役だからな」

 

「……もうなんでもいいですから、やるなら早くしてくださいまし」

 

「じゃ、じゃあ……」

 

 と、先輩が口を開こうとした瞬間。

 

「私の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 突如として言われた言葉に、先輩トレーナーは止まる?

 

「……メジロ家悲願?」

 

「えぇ、私の悲願と言うのは天皇賞・春の連覇ですわ」

 

「……3200mの長距離レースの連覇……」

 

「貴方も無謀と言うのかしら?それとも無責任に出来るとだけ残すの?」

 

 メジロマックイーンの悲願を聞いたのは、1部のトレーナー達だけだが、悲願を聞いたトレーナー達はこぞって言うのだ。

 

『君ならできる』

 

『一緒に頑張ろう』

 

『勝負の世界で絶対はない』

 

『貴女の悲願のお手伝いがしたい』

 

 などと言った耳触りの良い言葉を言って、良くも悪くも期待するだけ期待して終わりなのだ。

 メジロマックイーンはそう言ったモノに引っ掛かり、埋もれてしまわぬ様に教育を受けてきたから。

 故に自分の目で見て入ろうと思ったチームに入ると決めていたが。

 

「……俺はお前が夢を叶える瞬間が見てみたいと思った。だけどお前俺から良く逃げてたろ?その時に見た末脚に惚れちまったのも事実なんだ。それにお前が1人でトレーニングをしているのも見てたしな」

 

「見てましたの!?」

 

「おう、寂しそうにやってたのを見た」

 

「……別に、寂しくは」

 

 新人は知らなかった。

 メジロマックイーンに逃げられた事も無ければ、その日の勧誘が終われば寮に帰り、死んだ様に眠る日々だったから。

 

「だから俺のチームに来い、仲間が居れば寂しくは無いし。俺もお前の夢を()()したいんだ」

 

「…………」

 

 そう、先輩はメジロマックイーンの悲願を、夢を応援したいと思った。

 デカければデカい程、先輩はその夢を応援したくなる。

 トレーナーだから。

 

「んじゃ、次は新人だな!取り敢えず自己PRから言ったらどうだ?」

 

 数秒の沈黙が流れた後、ゴールドシップにより新人のターンがやってくる。

 目を瞑りながら先輩による勧誘を聞いていたが、ゆっくりと瞼を開く。

 

 覚悟は決まった様だった。

 

「……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 開口一番だった。

 それはメジロマックイーンだからと言った理由では無い。

 

「僕は新人トレーナーだから。だからきっと失敗してしまうんじゃないかと思う。元々長距離(ステイヤー)の為のトレーニングとか殆ど考えてなかったし……」

 

「……アレだけ勧誘して来たのに、諦めますの?」

 

「いいや?諦めてる訳じゃ無い。単に僕はメジロマックイーンの夢を叶えてあげられるか、不安なんだ。だって僕は自分のウマ娘の夢を1度壊してしまっているから」

 

 新人の脳裏に過ぎるのは、オグリキャップの敗走。

 負ける試合じゃ無かった、けれど負けてしまった。

 あの日の事を新人は未だに忘れない、きっと死ぬ瞬間でも走マ灯の1部として蘇る事だろう。

 それが完全記憶能力と言ったモノだから。

 

 

「入って欲しいとは思う。けれどそれは君が入ったらゴールドシップが来てくれるからって言う理由が大きいんだ。僕はしっかり君を見た事が無いと思う。だから、だから……その、ごめんなさい」

 

「………………なんで私が断られてる様な形になるの!?」

 

「……あっ、確かに」

 

「もう!勧誘してくださいな!こほん……まぁ分かりました。そうですわね……なら私は先輩トレーナーのチームに入らせていただきましょう」

 

「ほ、本当か!?」

 

「えぇ、もうそろそろチームに入らなければいけないと思っていた頃でしたから、実際勧誘が来たのは嬉しい事でした」

 

 そう言ってメジロマックイーンは先輩トレーナーの前に歩いて行き、加入申請書を提出した。

 それを受け取る先輩トレーナー、と言う構図にてゴールドシップの引き抜き勧誘勝負は幕を閉じた。

 

 新人は深く息を吸い、他には聞こえないようにゆっくりと息を吐いた。

 終わってしまったのだと、そう自覚した。

 ゴールドシップの勧誘は失敗したんだと。

 いや、メジロマックイーンの勧誘に失敗したんだと。

 

 メジロマックイーンの夢を応援したいと思ったけれど、新人には想像が付かなかったのだ。

 自分のトレーニングを受けてレースに出走するメジロマックイーンの姿が。

 だから、こう言った結果になった。

 

 不意に俯く、新人はこれ以上耐えられる自信がなかったからだ。

 

「……トレーナー」

 

「ごめん、もう少し待ってオグリ」

 

 新人の傍によってくるオグリキャップだったが、新人が一度止めた。

 見られてしまいそうだったから、情けない姿を。

 

「うし、じゃあゴルシちゃんは()()()行くわ!」

 

「……え?」

 

「……は?」

 

 そう言って新人と肩を組み笑うゴールドシップが居た。

 その手には退部届けと加入申請書の2つが握られていた。

 

「……まぁそういう話でしたからね。別に構いませんけど」

 

「ごめんなマックイーン。でもコレで5対5だろ?」

 

「人を数合わせに使わないでください!」

 

「ま、まって、意味が……」

 

「ん?簡単だぜ?アタシがスピカから抜けちまったら、お前のチームは5人になって良いかも知んないけど、スピカ4人になっちまうだろ?だからマックイーンと話してマックイーンが入ったチームじゃない方にゴルシちゃんが入るって話してたんだよ」

 

 今明かされる衝撃の真実。

 ゴールドシップの勧誘勝負は、全てゴールドシップの計算の上に成り立っていた。

 

「ま、そういう事だ。ごめんな元トレーナー」

 

「元って付けるな……はぁぁ、まぁ分かった。凄く腑に落ちないが、認めよう……新人」

 

「は、はい!?」

 

 色々と着いていけない新人。

 けれど先輩はもう受け入れていた、その瞳は一点の曇りもなく。

 

 新人を映していた。

 

 

「ゴールドシップを頼んだ」

 

 

 そう言うと、少し恥ずかしそうに頭を搔くゴールドシップ。

 それがどう言った意味なのか、新人は受け止めながら。

 

 

「……任せて下さい。僕のゴールドシップですから」

 

 

 そう言って締め括られた。

 因みに余談だがこの後、トウカイテイオーとマヤノトップガンに詰め寄られ、色々と発言を撤回させられるのだが。

 それはまた後のお話。

 

 




 難産だった。
 少し過ぎましたが、この小説投稿し始めて一月が経ちました。
 読者の皆様には感謝の気持ちを込め、短編のリクエストでも受け付けようかと思っています。

 アンケートはまた後程。


 なう(2021/05/16 12:48:05)追記、予約投稿時間のミスにて14時投稿になっていました。
 申し訳ございません。

新人トレーナーの妹ウマ娘予測アンケート

  • 1番人気ライスシャワー
  • 2番人気キタサンブラック
  • 同じく2番人気メジロドーベル
  • 大穴カレンチャン
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