純情ハートとウマ娘(凍結) 作:ゲーミング
若干シリアス、早くシリウスにしたい()
先輩トレーナーに連れられ、トレセン学園屋上へと足を運んでいた。
空には星々が煌めいており、ロマンチックなシチュエーションであった。
「マヤノトップガンの勧誘おめでとさん、新人トレーナー」
「あり、ありがとうございます」
「……まだ俺に慣れない?ゴルシとはあんなに軽口叩き合ってるって言うのに……くぅ!」
「彼奴は、彼奴は……何でしょうね……ほんと、何なんでしょう」
ゴルシ事ゴールドシップ、先輩トレーナーの作ったチーム『スピカ』の初期メンバー。
今のチーム『スピカ』には五人のウマ娘が所属しており、『ゴールドシップ』『ウオッカ』『ダイワスカーレット』『サイレンススズカ』『スペシャルウィーク』といったメンバーになっていた。
「……先輩こそ、サイレンススズカやスペシャルウィークの勧誘おめでとうございます」
「ありがとな、色々腐ってたけどスズカのお陰で立ち直れたし、夢も見れた。スペに関しては……まぁ勧誘かな」
事実スペシャルウィークに関してはほぼ誘拐に近いのだが、其れを知らない新人トレーナーは素直に先輩トレーナーの勧誘成功率の高さに舌を巻いていた。
サイレンススズカに至ってはお花さんのチーム『リギル』から脱退した後に『スピカ』に入って居る。
新人トレーナーと先輩トレーナーの勧誘成功率、これはコミュ力の差であった。
無論経験の違いもあるが。
「そーだ、お前飴食べるか?疲れてる時は飴食うと良いんだぞ」
そう言って
色は爽やかな水色だった。
「初めてのトレーニング何かもしたらしいけど、どうだった?ワクワク出来たか?」
「……まぁ、やっぱりウマ娘の走りは見ていて、その……心踊ります、ね」
「まぁ鼻血吹き出すくらいだったらしいもんなぁ」
「何でその話が!?……ゴールドシップゥ!」
「ははは!彼奴に見られちまったからな。トレセン学園のウマ娘達全員知ってんじゃねぇかな」
「……嘘でしょ……」
新人の脳裏に過ぎるのはゴールドシップが新人トレーナーの痴態をチラシにして配って歩く姿がありありと想像出来た。
ゴルシならやり兼ねない、ゴルシならもっとやっている可能性もある。
「……鬱だ……」
「まぁ仕方ねぇよ、それにゴルシなりの気遣いかも知れないしな」
「人の痴態をバラすのがですか!?それは大変初耳ですね!ちょっと住んでる世界が違うかも知れません!あぁ、そういえば彼女故郷が違う星でしたっけね!この星の常識インストールしてくれよッ!」
「……ご、ゴルシの事になるとホント容赦ねぇな……」
ゴールドシップ以外の事が頭から抜け落ち、一種のゾーンに入っている新人トレーナーに、若干引いてしまう先輩トレーナーだった。
「……まぁ、色々あった、あっ……あったんですよ」
一頻り騒いで落ち着いてしまったのか新人トレーナーの舌はまた上手く動かなくなっていた。
ソコに少し安心する先輩トレーナー。
星空の下で流れる空気にしては軽かった。
暫く無音だったが。
「……スペシャルウィーク」
新人トレーナーがソレを破った。
「あん?」
「スペシャルウィークのデビュー戦、おめでとうございます」
トレセン学園に転入して来たウマ娘『スペシャルウィーク』、彼女の出走したメイクデビュー戦は、彼女の堂々一着で飾られていた。
ウイニングライブでは天を仰ぐスペシャルウィークの顔がドアップされていたがそれもまた良い宣伝になった事だろう。
「おう、ライブの練習させてなかったの忘れてたけどな」
「……戦犯じゃないですか」
「はっはっは!ウオッカとスカーレットにも言われたな」
ウマ娘達の晴れ舞台は二つ。
先ずレースであり全てのウマ娘達の目標。
ウマ娘達が走り、順位を競う。
そうして一着から三着の三人がセンターを飾る『ウイニングライブ』と言うモノが始まる。
その昔ウイニングライブの成り立ちとしては、確か神様の言葉をウマ娘が人々に伝える——と言う物が原点だった筈。
それが今は姿を変え一種の催しになっていた。
「……先輩」
「なんだ?」
「……僕のチーム、二人目が加入しました」
「そりゃ目出度いな、おめでとう。何度でも言ってやる、おめでとう!」
人当たりのいい笑顔を浮かべながら、まるで自分の事のように喜ぶ先輩に、新人も釣られて笑顔を浮かべる。
「んで二人目は誰なんだ?」
「オグリキャップです」
「…………なに?」
「他のウマ娘達は授業中だったんですけど、その、芝を走ってる所を目撃して……あまりにもかっこよく見えてそれで……」
新人トレーナーの思い出すのは、あの力強い走りだった。
芝が抉れているのでは無いのかと錯覚する程力強く、そしてしなやかな足。
今思い返しても胸が熱くなっていた。
そんな新人とは対照的に、先輩トレーナーの顔は曇っていた。
「今日マヤノトップガンとまた乱入してきたトウカイテイオー、そしてオグリキャップの三人でトレーニングを……」
「お前知らないのか……?」
「……え?」
先輩トレーナーが新人の前に立ち、両肩を掴む。
その瞳は先程と同じ様に細められていたが、色が違った。
まるで責めている様な、決してお祝いの雰囲気では無かった。
「なに、が……」
「オグリキャップはな……事件の起こったチームに所属していたウマ娘だったんだよ」
その一言で、新人トレーナーの頭は冷水を掛けられたが如く冷ややかにされて行った。
◆❖◇◇❖◆
男は決して優秀なトレーナーという訳では無かった。
けれど人当たりが良く、頭は良かった。
色々な原因が重なり合ったが故に起きた悲劇。
男が担当していたウマ娘は六名。
その中にオグリキャップは居た、仲のいい同期や先輩とは離れたチームだったが、ソレでもオグリキャップは自身の夢の為にそのチームで頑張ろうと息巻いて居たのだ。
一つ目の悲劇、それは男が担当していたウマ娘の一人がメイクデビューを果たした後出走したレースで殆ど負けていた。
故に男のチームから抜け、違うチームへと渡って行った。
元々そのウマ娘は仕方が無くその男のチームに入っていた様なモノで、別にそのチームで無ければイケナイ理由は無かったのだ。
正直にいえば男は納得しては居なかった、それまで作ったトレーニング計画表やこれまでの思い出が否定された気がして堪らなく堪えていた。
けれど他のウマ娘達が居る手前、表面上だけでも快く新しい門出を祝わなければ成らなかった。
そして二つ目、男のチームを抜けたウマ娘が、チームを抜けた途端に一着を取り続けた事だった。
当然男は隠れた場所で荒れていた、酒を飲み暴食し、気付けばトレーニング計画表何てものを書くのも辞めて適当にウマ娘達のトレーニングをしていた。
そうして起こったのが最後の悲劇、まだ入りたてだったデビュー前のウマ娘の健康チェック等を怠り、トレーニングをさせ続けた結果。
そのウマ娘は足を壊し、走れなくなった。
唯一の救いは足を壊しはしたが、走れなくなった訳では無かった。
単に走る事への恐怖が原因で走れなくなったのだ。
そのメンタルケアすら、荒れた男には出来なかった。
オグリキャップはそのチームに所属しており、新人のウマ娘とは仲が良かった。
オグリキャップよりは少ないが、それでも良く食べ、良く走り、良く笑う、新参者ではあったがチーム内のムードメーカーになっていた。
そんな彼女を励ます為にもオグリキャップは、毎日自主トレの後に入院中も通い詰め、勉強した事、何のトレーニングをしたか、等の話をしていた。
勿論オグリキャップに悪気は無い、だが『
そのウマ娘に責められたオグリキャップは翌日デビュー戦を行い、順位は——8着、8人中、8着だった。
男は学園を去り、オグリキャップは夢を諦めた。
他のチームメンバーは別のチームに移籍したりしていたが、オグリキャップはどうにも新しいチームに入る事を拒んでいた。
走る事は好きなのだ、けれど走れば脳裏に焼き付いた親しかったウマ娘の表情が、自分を責める声が蘇り走れなくなってしまう。
故にオグリキャップは一時的にトレセン学園を離れていた。
帰って来たのは、復帰したのは新人トレーナーが散歩していたその日だった。
それがトレセン学園での事件。
夢見るウマ娘達が集うこのトレセン学園で起きた事件の一旦だった。
◆❖◇◇❖◆
事の一部始終を聞き、唖然とし、壁にもたれる新人。
そんな新人の頭に手を置く先輩トレーナー。
二人の間に言葉は無く、暫くして先輩トレーナーは目を瞑り屋上から立ち去って行った。
一人取り残された新人トレーナーの脳裏には様々な事が過ぎり続けた。
トレーニング中休憩を取らないのは、過去の事が原因なのか。
何故自分の勧誘を受け入れてくれたのか。
様々な事が頭に過り、行き着いた感情は悔しいと言う感情だった。
「……僕に、できる事……オグリキャップ……」
新人トレーナーの苦悩が始まる。
オリジナル展開のタグ入れ忘れてた。
先輩トレーナーの教えてくれた真実は新人トレーナーにどんな影響を及ぼすのか。
新人トレーナーのオグリキャップへの対応はどう変わるのか、そしてオグリキャップの心は晴れるのか。
お楽しみに。
尚この小説はハッピーエンド以外認めないし作らないので御容赦を。
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