純情ハートとウマ娘(凍結) 作:ゲーミング
こんな人間がこのままこの小説を書いていて良いのか!
良いんだよっ!
オグリのレース日がやって来た。先日お姉さんとの合同トレーニングをしたばかりで、身体を休める暇があったのかと聞かれると、恐らく無いと思う。
少しばかり不安な気持ちを抱えながら、阪神競馬場へとやって来た。今回はチーム全員で観戦に来たのだが……。
「いやぁ昨日の今日でめっちゃ身体つれーわー」
「だ、だから何度も謝ったじゃないか」
「謝りが足りないんだよトレーナー!焼きニンジン!」
「マヤは楽しかったから良いんだけどねぇ、ミックスジュースお願い♪」
「アタシは焼きそばとたこ焼き頼むわ」
「買い出しのお手伝いしますよトレーナーさん。学級委員長として!」
僕の周りにはバクシンオー以外の心優しいウマ娘は居なかった。先日大雨が降ってバ場状態は生憎の不良バ場となった。芝が雨水で濡らされ、土は所々とは言え泥になっている状態。
オグリが負けるとは思っていないけれど、楽勝ムードじゃ無いのは確かだ。
「……オグリ」
「感傷に浸ってる様にしょんぼりしながら呟いても買い出しには行かせるかんな」
「この鬼!ウマ娘!ゴールドシップ!」
「……後2つは罵倒なのか?」
「うーん、トレーナーって所々抜けてるって言うか。ちょっと可愛いよね」
「テイオーちゃんとは良いミックスジュースが飲めそうだね☆」
「ミックスジュースなんだ……じゃあボクもミックスジュースおねがーい」
「かしこまりました!じゃあトレーナーさん、行きましょー!」
「……行こっかバクシンオー」
こうして僕の財布からまたお金が飛んで行く。ちくしょう、給料日まであと何日有ると思ってるんだ……そろそろ僕の財布ぺたんこになっちゃうんだけど……。
GIIIだけど少し人は多く入ってる見たいで、なんとか最前列を取ったけど外に行くのが若干不便だと思った。贅沢な悩みって奴だと思う。
今頃オグリはパドック入りしてるんだろうなぁ……そろそろオグリのGIも検討したい。今回のレースに勝ったらの話だけど。
「あれ、買ってくるのなんだっけ……焼きそばとたこ焼きと」
「焼きニンジンとミックスジュースですね、メモ取っておきました!」
「……なんだろう、最後の
「話を聞いてなかったから、そもそも記憶してないんじゃ無いんでしょうか。後アイデンティティってなんですか?」
「僕が僕である為に必要な物……って解釈だった筈」
「???難しい話は頭が熱くなってきますね……」
「取り敢えずバクシンオーもなにか食べる?もしくは飲む?買い物に付き合ってくれた御礼がしたいから」
「良いんですか?……それじゃあ私も焼きニンジンとミックスジュースが飲みたいです」
「良いよ、ゴルシには取り敢えずお茶買って行ってあげようかな」
「なんだかんだトレーナーさんゴールドシップさんの事好きですよね」
「べ、別にあんな奴好きじゃないし、そばに居ると落ち着くなんて訳でもないんだからね!」
「うーん、何処かで聞いたような反応。何処で聞いたんでしょうか」
「も、もう!変な事言ってないで早く行くよ!オグリのレース見損ねちゃう!」
「あ、待ってくださーい!」
そうして僕とバクシンオーは完全に観客席から抜け出して行った。ゴルシ達の間食を買いに行く為に。僕もお腹空いたから何か食べようかな。財布の残りと相談しなくちゃ。
◆❖◇◇❖◆
ほんの少しだったとは言え、激重蹄鉄を提案された日から重りを付けて生活していたが、今日やっと外してみた。
意外と身体は普通で、重りを外したからと言って急に軽くなる様な感覚はしなかった。正直に言えば今日のレース、勝つ気しか無いがマスターがどう出てくるかで話が変わって来そうだ。
無限シャトルランで見せたあの走り。私より重たい重りを付けた状態で私とほぼ同タイミングで倒れていたから、単純なスタミナやパワーは負けて居そうだ。
「む、オグリキャップでは無いか」
「マスター。おはよう、今日はよろしく」
パドックから帰って来たマスターと顔を合わせた。自信満々な微笑を浮かべたマスターに、僅かだが勝つ自信が揺らいでしまったが、それを悟られない為に手を差し伸べた。
……狡いな、私は。
「うむ。レースが始まれば互いに蹴落とす側じゃが、レース前は単なる1ウマ娘に過ぎん」
「……何の話だ?」
「レース前から怯えるな、と言っているんじゃ。レース中でも怯えるな。前を向いて芝を抉り抜く様に走り抜けてしまえ……そう言ったんじゃ」
「……バレてたか」
「当たり前じゃ。ワシを誰だと思っているんじゃ。我が名はマスターアジア!この日本という矮小だが歴史ある国に産まれた、この世にたった1人しか居らんウマ娘。それがこのワシ
微笑を浮かべた表情は、歯を出した獰猛な笑みへと変わり自信満々に振る舞う其の姿は、とても私と同じクラシックとは思えなかった。
威圧感はある、ほんの少しとは言え勝利への疑心もある。
だが、だがそれても勝利への渇望は止まないんだ。1番にトレーナーの前を、ゴールバーを横切るのは私でありたい。『流れ星』の1番人気は私でありたいと言う願いは、きっと『流れ星』に集ったウマ娘全員が思っている事だと思うけれど、それでも1番は私でありたいんだ。
だからこそ。だからこそ私は名乗りを上げた。
「……ふっ、ならば私も……トレーナーのウマ娘、オグリキャップだ」
「……うむ、良い面構えになった。それでこそワシのライバルじゃ!共に往こうぞオグリキャップ!」
「あぁ、共に駆けようマスターアジア」
芝を踏み締めたら水が出て来た、今日のレースは走りにくそうだ。
けれどバ場状態なんて関係無い、周りの目なんてどうでもいい、ただ私達は私達として、遠くに見えるゴールバーを……トレーナーの前を横切るだけなのだから。
『各ウマ娘ゲートイン完了です』
さぁ、駆け抜けよう。私達は、私はウマ娘なのだから、
◆❖◇◇❖◆
空は綺麗な青空だった。踏み締める芝からは多分な水を含んでいる為に、1歩前に出る事に水と溶けた土が混ざり飛沫を上げていた。
ウマ娘達が来ている体育着に土と水による染みが作られて行くが、誰もそんな事は気にとめていなかった。
『第1コーナーに入りました!先頭はゼッケン番号1番です、続いて5番、その外からは3番が追走、少し開いて6番が内目を付きその傍には8番。ゼッケン番号9番が8番の隣に着きました!1バ身程遅れて7番オグリキャップが着きますがやや外に膨らんでしまっている!』
出走しているウマ娘は15人。オグリキャップは7番、そしてマスターアジアはと言うと。
『最後尾は13番マスターアジア!第2コーナーを抜けて先頭は5番に変わっている!1番負けじと駆けていきますが、展開としてはどうでしょうか?』
『逃げウマ娘としては此処で2番手をキープしたいというのが有りますが、やや急ぎ過ぎている節がありますね。1度冷静に呼吸を入れて欲しいと思います』
現在は1番手に5番、続く2番手に1番、3番と続いているが、若干先頭と距離が離れてしまっていた。
『残り1000mを通過し、第3コーナーへと駆けていきます。先頭は5番、並び掛けてきたのは1番です。半バ身差で3番と6番が追走、自分のペースを守っているのは8番、そして9番が内に入りました。また外に膨らんで
『第4コーナーを抜けました、残り400を切り先頭は5番!そしてその後ろからは1番……あ、いえ違います!大外です!大外から
『最後の直線に入りました
『3番手には1番……13番!13番のマスターアジアが抜けて来た!5番と
凄まじい追い上げを見せるマスターアジア。そしてひたすら大外を回り、出来るだけ泥濘を避けて来たオグリキャップ。
後続も続いて行くが、2人に追い付けず、加速的に後続との距離は開いて行った。
「凄まじい!凄まじいぞオグリキャップ!」
「……よく喋る……ッ!」
残り100mを通過して、ゴールバーを駆け抜けて行った。
『……しゃ、写真判定です!写真確認します!』
『第4コーナーを抜ける前に7番と13番が鮮やかなごぼう抜きをしていましたね。これは果たして何方が人魚に近いのか。楽しみです』
そうして写真判定が行われ、結果は———。
◆❖◇◇❖◆
ウイニングライブの準備を進め、ステージの上にウマ娘が立つのを今か今かと待っていた頃。
オグリキャップとマスターアジアは向かい合っていた。
「良きレースだった!」
「……あぁ、全くだ。全く……良いレースだった」
7番オグリキャップ、1着。
13番マスターアジア、2着。
その差は——ハナ差。
「次はワシが1着を取り、貴様が2着となる」
「……ふっ、次も私が1番でお前が2番だ」
今回のレース、勝利を分けたのは強いて言うなら走ったコースの差と言える。オグリはひたすら誰も走らない大外を回った。無論それはスタミナの消費も激しくなる為に、得策では無かったが、マスターアジアは内を狙ったが故に泥濘に足を撮られ上手く加速が出来ていなかった。
単にその程度の違いであり、決定的な勝因でも無ければ、敗因にも成り得ない。けれど敢えて因果をつけるならそう言う事になる。
断じてゴールバー前に、観客席に居た不安そうな、焦った様な新人トレーナーを見てその顔を笑顔に変えたくて驚異的な末脚でオグリが抜け出した訳では無い。
「……ふふ」
「はは……」
「「ふはははは!」」
ステージ裏で2人の笑い声が響いた。
マーメイドS、前日の雨も相まって水と芝が強く絡みついたこのレースに勝ったのはオグリキャップだった。
一つだけ言わせて?すっごい疲れた。
阪神競馬場の実況を参考する為に色々見たし聞いたけど、ホントに実況者によって話し方変わるよね。
後久しぶりに4000文字超えたわ。
新人トレーナーの妹ウマ娘予測アンケート
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1番人気ライスシャワー
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2番人気キタサンブラック
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同じく2番人気メジロドーベル
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大穴カレンチャン