純情ハートとウマ娘(凍結)   作:ゲーミング

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 ギリギリアウトー!いや、申し訳ない。事前に告知出来れば良いんですけど、日常生活が不安定なもんで……まぁ言い訳にしかならないので自己弁明の時間は終わり!

 本編どうぞ!


第六十八話(結)

 オグリキャップは1人栗東(りっとう)寮の前で右往左往していた。帰りたい筈だったのだが、足が思う様に寮へと向かわない。頭の中でグルグルと巡っている思考は新人と会話した瞬間で、新人が最後に見せた顔が余りにも悲痛な、今にも身投げしてしまいそうな雰囲気を醸し出していた事から自分の発言で彼処まで傷付いてしまうとは思っていなかったからだ。

 

 けれどトレセン学園に戻ろうとしても、新人になんと言えば良いか分からずに足が止まり、そうしてる内にまた寮へと足が進む。けれど寮の部屋へと帰る事も出来ず、トレセン学園に行く事も叶わない。そんな幻日がオグリキャップを蝕んだ。

 

「……何をしているんだ私は」

 

 ふと立ち止まり、目が沈む。いつも着ている制服のスカートが視界に入り、更にその下には蹄鉄の付けていない普通の靴があった。何も初めから重たい蹄鉄を付けて走りたかった訳じゃなかったのだ。オグリキャップはトレーナーの、新人が考えたトレーニングという事もあり、それを行っていた。気付けば重りを付けて走る事への楽しさを見出してしまい、今では激重蹄鉄無しではトレーニングを行う事すら思考の外へと飛んでいってしまっている。

 

 新人だから、オグリキャップ自身を見付けてくれた新人トレーナーだったからこそ単純な答えにすら辿り着けない。慌てん坊で慣れてきた頃かと思えば噛むのは治らずいつも通りなポンコツトレーナー。かと思えばゴールドシップと会話する時だけやたらと言葉が早くなる。その差が分からずに一時期はゴールドシップに対して若干とはいえ対抗心を燃やしていた時期もあった。

 

 思考は巡る、答えは出ているのにソレがどうしてそうなるのかが分からずに、迷路に迷い込む。そんな時だった。

 

「なーにしてんだお前は」

 

「……ゴールドシップ」

 

 新人の1番気安い相手であるゴールドシップが、思考の迷路に迷い込んでいたオグリキャップの前に現れた。

 

 

 

◆❖◇◇❖◆

 

 

 

 オグリキャップは確かめる。自身の正確極まる体内時計——腹時計——を。その結果既に今はトレーニングの時間になっていた。故に此処に、栗東寮前にゴールドシップが居るのは可笑しい話だった。

 

「……トレーニングの時間じゃないのか?」

 

「いや、そのセリフそっくりそのままお前に返すからな?」

 

「私は……私は……一体、どうしてなんだろうな……」

 

「……ふふーん?まぁ良いか。取り敢えず何があったか話せよ、アタシが聞いてやっからさ」

 

 そう言ってゴールドシップは何処からか取り出した折り畳み式の小さな椅子を2つ出し、栗東寮の門、その真横に2つ並べた。

 その1つに座ると、オグリキャップにも座れと椅子をポンポンと叩いて催促していた。そうしてオグリキャップは椅子に腰を下ろし、ポツリポツリと話し始めた。

 新人との会話、前回のご飯への誘いを断られた事、此処に居るの理由、その全てをゴールドシップへ語った。その結果は……。

 

「……お前さてはバカだな?」

 

「……?」

 

「いや、新人の話最後まで聞いてやれよ。その話し方だと新人の言葉遮ったんだろ?ただでさえ彼奴会話下手くそ何だから、最後まで聞かなきゃ結論なんて出せねぇよ」

 

「それは……いや、それもそうか」

 

 哀れな程新人のコミュ力が低い事は既にチーム内のウマ娘達は知っていたが、あの時のオグリキャップはそれを忘れてしまい結論を急いでしまった。最後まで聞いていたのならこうはならなかったと言うのがゴールドシップの意見であり、オグリキャップもまたそれには同意を示していた。

 だがそれとコレとは話が違う。オグリキャップはどうして自分ではダメだったのかの答えを知りたくて新人と話したが、当の新人はソレについて答える事をしなかった。正確には言わなくても良いよね?と言う新人トレーナーの可哀想な程低いコミュ力と、オグリキャップなら分かってくれるだろうと言う傍迷惑な信頼によって起きた事だったからだ。

 

「んで、お前自身の答えは出てんのか?」

 

「……私がトレーナーの期待している所に到達していないからだろう?」

 

「ちっげー……なんで彼奴が熱血よろしく根性論スパルタトレーナーになんだよ。単に彼奴金がねぇんだよ」

 

「私は持ってる」

 

「……いやお前が持ってても新人が持ってねぇからダメだからな?自分の担当ウマ娘に金出して貰って食べる飯が美味いと思うか?まぁ新人が出した金で食べたカツ丼は最高に美味かったけどな。目ん玉グルグルしてて1粒で2度美味しいってああいうのを言うんだなって実感したわ」

 

「……そうなのか?でもたづなさんとは一緒に食べに行っただろう?」

 

「んー、それは新人なりの甘えだな。金が無いけど、今後の食費を切り詰めればギリギリ生活出来るからって言うのと、たづなさんとご飯食べに行ったのは夏合宿の話し合いがあるからってのが本音らしいし」

 

「夏合宿?それがどうしてたづなさんとご飯を食べに行く事に繋がるんだ?それに夏合宿はトレセン学園の方で色々用意して貰えると昔のトレーナーがボヤいていたが……」

 

 オグリキャップは前のトレーナーとの夏合宿は色々あって体験出来なかったが、トレセン学園からの援助等が有るのは知っていた。故に何故新人がたづなさんと食事に行ったのかが余り分かっていなかった。

 

「一応有るには有ったらしいんだよ、他のトレーナー達との合同夏合宿って感じのやつがさ。それは他のトレーナー達との合同って事で学園の方が全部用意すんだけど……彼奴のウワサ、聞いた事あんだろ?」

 

「……噂?何かあるのか?」

 

「まじかよ……んー、まぁ他のトレーナー達から良く思われてねぇんだよ新人はさ」

 

「そうなのか?でもトレーナーは悪い人じゃ……」

 

「良い人だからって好かれるとは限らないんだぜ?まぁあんまり良い噂じゃないのは確かだ。そんな中他のトレーナー達が居る所で新人が耐えられると思うか?アタシ達が思ってるよりメンタル弱くねぇけど、対して強くもねぇからな。アタシはそんな中でトレーニングするのは断然反対だったし、新人の判断は間違ってないと思うけどな」

 

「……なら、私とは単純に行きたくない……?」

 

「いい加減にしろよお前!?新人がんな事思う訳ねぇだろ!あのウマ娘バカがんな事考える訳ねぇんだよ。……はぁ、良く聞けよ?1回しか言ってやんねー……意地があんだよ、男の子にはさ」

 

 いつか新人がゴールドシップとの耐久ランニングを行った際に言った言葉をそのままオグリキャップに伝える。男として、トレーナーとして担当しているウマ娘との食事やお出掛けにウマ娘にお金を払わせたくないと言うちっぽけな意地。けれど新人は心の底から意地を張る、その結果新人自身の言葉足らずと相まってオグリキャップが頭を悩ませる事になってしまったが。

 

「……意地?それは私にだって」

 

「そー言うんじゃないだよ、単に男としての意地って奴。つうかあのバカトレーナーお前やテイオー達がマトモに話してくれないからってアタシに助けを求めて来たんだぞ?涙目になりながらな。今回お前にトレーニング前に会いに行ったのも、お前と仲直りしたかったからなんだよ」

 

 オグリキャップの瞳を真っ直ぐに見詰めて離さないゴールドシップだったが、一瞬耳が跳ねた。

 

「……仲直り」

 

「そ、まぁ良いや言いたい事言えたし、聞きたい事も聞けたしな。アタシはそろそろトレーニング行ってくるわ」

 

 そう言ってゴールドシップは腰をあげる。ゴールドシップの言葉通りならゴールドシップはコレから既にトレーニングを受けているであろうトウカイテイオー達の元へと向かうらしい。それを聞いてオグリキャップもまた立ち上がり、ゴールドシップへ声をかけた。

 

「私も……」

 

「おめーはダメだ」

 

 勇気をだして言った言葉に帰って来たのは、明確な拒絶。漸く顔を上げたオグリキャップだったが、また直ぐに下を向いてしまう。

 

「勘違いすんなよ?単に行き違いになったら気まずいからだからな」

 

「……行き違い?」

 

「おう、そろそろお前の耳も聞こえてんじゃねぇの?ドタドタやたら煩い足音が近付いて来てんの」

 

 ゴールドシップに言われ、オグリキャップもまた耳を澄ますが、一向にそんな音は聞こえて来なかった。

 

「……聞こえないが?」

 

「ま、アタシはゴールドシップだからな。耳がいーんだよ」

 

 んじゃな、と言っていつの間にか椅子を仕舞いゴールドシップは去ってしまった。また1人ポツンと立ち尽くしていたが、ゴールドシップが言った通りオグリキャップの耳にも聞こえて来た。

 

 ドタドタと煩い足音が。オグリキャップはゆっくりと瞼を閉じた。

 

 音が止んだ。代わりに聞こえて来たのは荒い息遣いだった。オグリキャップが閉じた瞼を開くと、ソコには——。

 

「はあ……は、ぁ……おぇ……とお、いち、いや、おぬ……おぐ、ぅ……」

 

「1度深呼吸をした方が良いんじゃないか……?」

 

 汗だくになりながら、吐きそうな顔をしている新人が居た。

 

「おぐ、オグリ……ぃ……」

 

「……トレーナー」

 

「「……ごめんなさい」」

 

あ、いや僕の方こそ(いや、私の方こそ)

 

「「…………」」

 

「……ふふ」

 

「……あはは」

 

「「ははは……」」

 

 2人して同時に話し、会話が被る。その事が可笑しく思い2人は笑い出した。本来ならトレーニングを行っている時間帯。けれど2人はトレーニングをほっぽり出して片方は立ち止まって、もう片方は迎えに来た。

 

「……あのさオグリ」

 

「あぁ、大丈夫だ。もう分かってる」

 

「……ううん、改めて言わせて……ごめんなさい。僕が説明不足だったから、オグリに勘違いさせちゃったからさ」

 

「私も、色々深く考え過ぎていた。だから私もごめんなさい……だな」

 

「……いっそトレーニングサボって今からご飯食べに行こっか!」

 

「……それはトレーナーとしてどうなんだ……?」

 

「目の前にいるウマ娘の夢……夢?を叶えるのもトレーナーの本分だからね!」

 

「……テイオーやマヤノに怒られても助けてやれないぞ?」

 

「うっ……まぁ、仕方ないよね……取り敢えず何が食べたい?僕はオグリと同じ物が食べたいよ」

 

「……ふむ、どうしたものか。さっき食堂でご飯は沢山食べたし……ぁ、甘いものが食べたい……」

 

「……それじゃあ行こっか、ちょっと歩くけど」

 

「あぁ……2人で怒られよう。今日は……トレーナーともっと話がしたい」

 

「僕もオグリともっとちゃんと話がしたい」

 

 そうして2人はトレーニングをすっぽかして歩き始めた。この時のために買って置いたチョコレートは、もうその役目自体は終わっており、今はただ単純に2人で甘いものが食べたかった。

 

「あ、一応チョコ有るけど食べる?」

 

「……いただこう」

 

 後日隠れてスイーツを食べに行った事が無事にバレ、というかバラしてトウカイテイオーとマヤノトップガンに怒られる新人だったが、不思議とその表情は明るかった。

 

「お給料入ったら皆でご飯食べに行こうね、もちろんオグリと2人でご飯食べに行くのも」

 

「……トレーナー」

 

「その代わり今日サボった分夏合宿は厳しく行くからね!」

 

「あぁ、望む所だとも……!」

 

 2人の擦れ違いは無くなった、今の所は。

 きっとこの先も些細な事で喧嘩する事が有るだろう、けれどその時はもうこんな事には成らない。そう2人は確信していた。




 長かった……夏合宿前にこう言うすれ違い回と新人くんの成長回を入れたかったんです。冗長的に捉える方も多いでしょう、けれどこの小説は主人公が6人いるんです、その中でも新人くんは1番人間的に成長させたいキャラなのでイベントが多め。

 それはそうとオグリやテイオー達への詫びスイーツ回はまた何処かで書きますので、お楽しみに?

新人トレーナーの妹ウマ娘予測アンケート

  • 1番人気ライスシャワー
  • 2番人気キタサンブラック
  • 同じく2番人気メジロドーベル
  • 大穴カレンチャン
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