巫女誘拐事件
---ツバサ---
ティーナ一行が来るまで2ヶ月かかるらしい。転移での送迎はしない。森の館は来られないから転移サービスをするが、アルメリア公国へは、交通機関で来て貰う。これも学習の一環である。
彼女は国立の学校で文字や計算などの初等教育から学んで貰う。それと並行して、アイリス母によるブートキャンプもだ。えぇ、丸投げですよ。これが分業制ですからね。
俺とマイルはティーナ父の家の改装工事の準備をする。家の設計図を貰い。まず、汚水槽の設計をする。実際の施工は土魔法でアルメリア公国の学生達にやらせる。アルメリア公国では下水設備を拡充中であり、それ専門の部署もある。そこに就職する為の学生もいる。国民には冒険者以外の職も覚えさせている。怪我をして冒険者を続けられない場合の救済処置にもなる。
簡易タイプなので、汚水槽からは、支店で売っている交換用の魔石の魔力で強制転移させる。転移先は、支店とゼロス君の家で共同で使っているメタン発生槽である。発生したメタンガスは、電気と無害な物に返還し、電気は、ゼロス君の家の家電で消費する。メタンガスを発生させた汚物は、スライムに食べさせて、腐葉土と水に分離し、水だけを川へ流す。これで環境に優しいシステムになるはずだ。森の館で実証実験済みだしね。
魔法王国ソリステアの人々はほとんど魔法が使える人なので、水タンクへの水の補給も魔法で行って貰う。出来ない場合は、水を発生させる魔石を商会で買ってもらえばいいし。
そんなノンビリとして日々を送っていると、ミト・ミツクニ公爵から救援連絡が来た。
◇
俺とマイル、プライド、セイと共に、ミトの元へ転移した。
「先輩、大変です。テニオン神殿の巫女が浚われて、行方が分からないんですよ」
神殿?ミトに訊くと、この国では教会はなく神殿があるそうだ。
「ミトとサトゥーの探査スキルで見つからないのか?」
「です」
そうなると、増援部隊としてユナとケーナを呼び出した。
「あとですね。この子、転生者で、身食いの可能性があります」
ミト達が見つけた転生者の奴隷の少女。セイが彼女の身体を精査していく。それと並行して、ケーナ、ユナが行方不明の巫女を探しに行った。セイが精査した結果を受けて、俺が彼女、アリサの魔力回路の魔力の調整をしていく。
「そうだ、サトゥー、地下の探査を頼む。ミトの探査でみつかないなら、地下の可能性があるぞ」
「了解です」
「ミトは、地下通路の地図があったら、持って来て」
「わかったわ」
ミトは神殿の奥へ消えた。
「このサプリを噛まずに水で流し込んで」
身食い対策サプリを手渡した。このサプリ、アレを濃縮して粉末にしてカプセルに詰め込んだ物だ。飲む時の苦痛を減らす為に開発してのだが、胃酸と反応すると、あの臭いガスが発生して、体内から鼻孔へ向かうので、
「鼻呼吸はするなよ。死ぬ程苦しくなるから」
って、そうそう鼻呼吸は止められない。みるみるアリサの顔色は悪くなり、涙と鼻水でグチョグチョ状態に…
「臭いよ~臭すぎるよ~」
「臭さが難点の薬なんよ。良薬は鼻に臭しっていうだろう?」
味はクリアしたから、苦痛は半減したと思う。
「見つけた!地下に悪魔の反応がある」
と、ケーナ。サトゥーは能力が使いこなせないようだ。まぁ、F1マシンをド素人が運転するようなもので、性能が生かせないのだ。ゲームと違うからな。魔力操作は…
「ケーナ、そこへの侵入口は?」
「穴開ければすぐ」
それはそうなんだが、街が破壊されないか?地盤沈下とか…
「俺とケーナとマイルで侵入する。ユナとアイリスは、セイを頼むぞ」
ケーナの開けた穴から、悪魔の居る処へと向かった。そして、悪魔は塩に、魔王狂信者達は灰になり、空気中に拡散していく、で、巫女は?身食いの末期になりかけで、肉と骨だけになりつつあった。俺が触れると塩に塗れた肉と骨に…冷風乾燥すれば骨付きハムになりそうだな。
「マイルは、結果を地上に報告して。おれとケーナは、この骨付きハムを身食いの治療施設に運ぶ。後からアリサを連れて戻ってくれ」
ケーナと共に転移した。
◇
塩を洗い流し、アレをみたした容器に骨付き肉を保存した。
「当分骨付きのハムは食べられないかも」
とは、ケーナ。アレは衝撃的な絵面だよな。俺は治療の度に肉の塊を見慣れているが…初めてアレを見たケーナはショックを受けていた。
「あれが体組織が変化する前段階だ。あれより進行っすると、ダメかもしれない。今まで一番ひどかったのはアルファだよ」
「あの美人エルフが?」
「あぁ、治療を終えたアルファを目にした時、助けられて良かったと思った」
「塩漬けになったのって…」
「たぶん、悪魔か魔王が取り憑いていたんだと思う。聖者の能力は悪魔系は塩化するんだよ」
塩化スキルが聖女との大きな違いなんだろう。セイにはそんな能力は無い。
一般病棟に行くと、セイがアリサを精査し、治療師ギルドのメンバーに指示をだしていた。俺達以外でも、見た目の変化が無い者は、治療師にまかせている。その研修もさせている。教皇が声を大きくし取り組んでいることだ。
「ねぇ、セーラはどうなったの?」
目を腫らしたミトに訊かれた。
「治療を開始した。今は見ない方が良いぞ」
ケーナがショックを受ける程、グロい見た目である。
「そんなに酷いの?治る?」
「あぁ、治るよ。あれより酷いヤツを治療した事がある。ただ、時間は掛かるぞ。半年位は見ておけ」