---ビーゼル・クライム・クローム---
ツバサ氏が玉の間で魔王様に抗議しにきたそうで、私は急いで玉の間に急いだ。
「あぁ、ビーゼルさん。魔王国はうちと戦争したいの?ここで魔王様を消してもいいんだよ」
何やら激高していた。昨日の今日である。まさか…
「ゴロウン商会が何かをしましたか?」
「商業ギルド本部に、魔王国の国益の為にエチゴヤの全情報の開示を依頼したそうだ。これって、戦争の前準備か?」
全情報だと、商会の出資比率や後ろ盾の個人名に、会頭の個人情報も含む。
「やましいことは無いけど、グラマスから連絡が来たよ。魔王国が侵攻する気だと…なぁ、どういうことか、お話をしましょうよ」
魔王陛下の身体から煙が立ち昇っている。神聖属性のオーラにさらされているようなぁ。
「自転車100台の為に、侵攻する気か?ケンカ売るならいつでも買うよ。合図を出せば、魔王国が大陸から消えるけど、どうする?」
「そんな侵攻なんかしません。戦力差は充分に理解しております」
バケモノ揃いの戦力である。彼が聖者で、聖女が奥様。人類最強レベルの戦士や賢者、騎士もいるし、魔女、天使、吸血鬼まで…
「じゃ、クーデターなのか?悪いやつは誰だぁ!」
「たぶん、ゴロウン商会だと思います。商売に1枚噛ませろって、私の所に来ましたから」
「ほぉ~、シャシャトーでの商売を認めず、ユナをスカウトだと?その上、エチゴヤの儲けを寄越せって?何を舐めたこと言う商会なんだ?潰すか?」
「それは困ります。魔王国内で一番大きな商会です。民草に影響がデカイです」
「でも魔王国の国益の為、エチゴヤを取る気満々なんだろ?それなりのリスクを背負って貰うよ」
「わかりました。魔王国から人質を出します」
「そんな者は要らない。魔王はいつでも消せるんだから、人質のエサ代が勿体ないだろ?」
「では、どうすれば、怒りを静めていただけますか?」
「今後、刃向かわないことを条件で、魔王国は、トキオ共和国の属国扱いにしろ。体制は現状のままでいい。補償金を払えとは言わないが、魔王国への税金はフリーにして貰うよ」
「分かりました」
新たな条約を締結すると、ツバサ氏は消え、股間を濡らした魔王様が玉座に残った。
---マイケル・ゴロウン---
小娘と思って、前準備を怠った私に非がある。しかし、ボタンの掛け違いが、忖度というフィルターを通り、事は大事になってしまった。
魔王様から、魔王国はトキオ共和国の属国になったと、布告があった。
私の知らない間に、無血開城があったようだ。私の発した『国益の為にエチゴヤの全情報の開示』を宣戦布告と取られ、速攻で魔王国が落とされたそうだ。なんてことだ。
商業ギルドによると、国営企業の全情報とは、その国の国力、軍事力や主要産業などの情報を含むらしい。それは、宣戦布告前の情報収集とギルド本部は捉え、戦乱を避けるタメに、関係各国へ知らせたそうだ。
外交担当のクローム伯は冒険者ギルドの聴取を受けたそうだ。一般的には、宣戦布告の前には冒険者ギルドに通達を出し、関係のない隣国との国境付近を警戒する必要があるそうだ。
「まさか、隣接もしていない国に挑むなんて…バカじゃないのか。アソコに攻め込むって、龍王国も侵攻するつもりだったのか?」
と、冒険者ギルドのギルマスに呆れられたそうだ。
「お前のせいだぞ、マイケル」
クローム伯の怒号が会頭室に響き渡った。
「だから、今更、問題を起こすなって言ったんだよ。あの国に勝てる訳ないだろに…相手国は聖者が国王なんだよ。聖属性のオーラを浴びるだけで、魔王様が消滅するんだから」
なんだって!魔王様が暗殺される危機に陥ったらしい。
「まぁ属国になる以外の被害は無かったから良かったよ。あの国は平和を愛する国で良かった」
トキオ共和国は龍王国に囲まれ、龍王国以外、攻められないそうだ。って、それって、禁足地が領土なのか…秘密のベールに包まれた国なのか。興味が湧いてしまった。
「良いか?興味本位で、領地侵犯を犯すなよ。その場合、ゴロウン一族は消えるからな」
一族郎党の命をベットするカケに出るべきか?