---マイン---
意識が戻ると、知らない場所にいた。傍にいたトゥーリに訊くと、私の病気を治す為に移住を決めたそうだ。この地の医学は高レベルらしいのだ。どんだけ治療費を請求されたかと訊いたら、無料だと言う。胡散臭い。まさか、トゥーリの身体はもう清く無いのかな?
「やぁ、目覚めたようだな」
「…」
まさかの日本語で話し掛けてきた男性。転生者なのか、彼も。トゥーリを治療の為といい、部屋の外に出し、部屋には私と男性、そして、女の子が残った。
「俺はケン、召喚された日本人だ」
「私はマイル、あなたと同じ転生をした日本人です」
日本人が目の前に二人いる。話を訊くと、ここには後二人日本人の転生者がいて、その中の一人がこの地の領主代行をしているという。
「おかゆに梅干しで3日、おじやに漬物で3日、そして、和定食って予定だ」
あぁ~、寝たきりで胃が動いて無かったから、胃のリハビリなのか。
「梅干しあるんですか?」
「あぁ、米も味噌も、醤油もある。色々な大陸に行って、和食に合う食材を探してあるよ。転生者が多く住む地だから、和食は欠かせないだろ?」
口に梅干しを入れてくれた。刺激の少ない蜂蜜漬けみたいだ。美味しい。この酸っぱみ…懐かしい。目尻から暖かな物が流れ出た。これ…食べたかった。
「但し、毎食後に、青汁をコップ1杯飲んで貰う」
青汁?何の罰ゲーム?マイルさんの顔が強ばっている。罰ゲームなのね?
「マズいんでしょ?」
「あれよりマズい飲み物は知らない。センブリ茶が甘く感じるレベル」
それはアカンレベルでは…
◇
このお屋敷には本が沢山あった。いや、書庫があったのだ。本好きとして、ここは最良な地である。あの青汁さえ無ければ…
「将来、司書になりたい」
頑張って青汁を飲んだあとに、ケンさんに将来の夢を言ってみた。
「なりたい仕事に就くのが一番だけど、マインにはヒーラーの道も進んで欲しい。マインの魔力属性って、オールラウンダーだからさぁ」
私に魔力があることに驚き、総ての属性の魔力が備わっていることに驚いた。そして、そのことが私の奇病の原因に繋がるそうだ。私の尾奇病は血流で言うとこの動脈瘤で、それが魔力の流れで起きたらしい。
「適度に毎日使わないと、また魔力の瘤が出来る。日本の知識で言えば、エコノミー症候群を想像して欲しい。キツい体勢のまま動かないでいると血栓が出来るだろ?それと同じで、魔力の流れを阻害しないで日々過ごすことが大事だよ。その予防法は魔力の圧縮方法を覚え、毎日マインドロスト近くまで魔力を使い。あの青汁を飲むことだ」
あの青汁がネックだな。食後に飲んだけど、あれはキツい。でも、確かに飲んだ後、胃が落ち着くと身体が軽くなっていくのだ。マズいけど、私の病気には効果があるようだ。
「本のことで知りたいことがあったら、このソフィアに訊いてくれ。彼女が唯一の司書だから、ソフィア、頼むよ。コイツは将来の司書候補のマインだ」
「はい。マインちゃん、よろしくね」
絹のような白い髪に、ルビーのような赤い瞳の可愛い女性が、頭をぺこりと下げた。
「コチラこそ、宜しくお願いします」
青汁以外、問題は無さそうだ。
---ケン---
冒険者ギルド本部に、マインの件の経過を報告しに来た。まだ完全に解けてはいないけど、マイルとマイン自信で、少しずつ解いている状況である。青汁の補充もしておくかな。何故か冒険者ギルドでしか取り扱いをしていない謎の青汁。レインリヒに見せたが、見た事ない飲み物らしい。
「じゃ、ほぼ終了だね。こちらでもあの症状を調べたのだが、『身食い』と言う症状に酷似していたよ」
身食いとは、平民の子供に稀に発生する魔力過多による肉体損傷で、成人まで生きられない子が殆どのようだ。貴族の子供の場合だと、幼少期から魔力操作を習う為に、発症する方が稀らしい。
「ところで、ランクS昇格案件があるんだが…」
国絡みか。面倒だな。
「隼人は?」
「ダンジョンの攻略なんだが、隼人のパーティーとは相性が良くないんだ」
ポップする魔物がアンデッドオンリーらしい。隼人のとこの女性メンバーはアンデッド系がNGだと言う。
「踏破出来なくてもいいの?」
「入り口からあふれ出ないように間引くのがクエスト内容だ」
「報酬は?」
「ドロップ品は貰える。換金も可で、特別価格で装備が買えるそうだ」
う~ん…シロとマイルはアンデッドでも大丈夫かな?
「パーティーメンバーと相談してみるけど、場所はどこ?」
「聖シュルール協和国聖都シュルールの聖シュルール教会治癒士ギルド本部だ」
「俺、治癒士ギルドに所属してませんけど」
「この際だ、入会してしまえばどうだ?」
「俺、宗教系はNGです」
神様は信じているが、それを強要する団体はNGである。八百万の神を信仰している日本人にとって、一神教などナンセンスである。色々な神様がいるのだ。どの神を信仰しようと勝手だろうと思うのだ。
「じゃ、無理だなぁ」
「ギルド長、彼がそうなのですか?」
神官らしき者が聖騎士らしき者達を引き連れてやってきた。あれは捕縛目的のように見えるが、本部のギルマスは俺を売ったのか?って、何の罪でだ?冒険者のルールは破っていないはずだ。
「君の罪を告白する訴状が治癒士ギルド本部に届いた。おい!取り押さえろ!」
聖騎士達が一斉に剣を抜き、俺へと襲い掛かってきた。だけど護衛のシロに駆逐されていく。俺は指令官らしい神官を、冒険者ギルドメラトニ支部にある、あの青汁の大樽の中に強制転移させた。結果、指令官が消え、大量の聖騎士達の死体が床に転がっている。
「これ、正当防衛ですよ」
一応、確認しておく。ギルド内での私闘は御法度だから。
「あぁ、分かっている。クエストを依頼しておいて、えん罪で斬り捨てようとは…それも冒険者ギルド本部内での凶行だと。俺達冒険者は舐められているなぁ。訴状によると、治療費の価格破壊とあるぞ」
「メラトニ支部で銀貨1枚で治療していたからかな?」
「治癒士ギルドの価格設定がおかしいんだよ。どんな治療でも金貨10枚だからな」
わぁ~、暴利だろう。そんなの…銀貨1枚で100円くらいとして、金貨10枚だと100万位か?まぁ、最上級ポーションの件があるから、俺も他人のことは,
あれこれ言え無いけどな。
「帰っていいですか?」
「あぁ、いいぞ」