---モエ---
近国にある冒険者ギルド支部から、あの最上級ポーションのサンプルと、エリクサーもどきのサンプルが送られて来た。それをセイさん、私、所長の三人で検分をした。
「注意書きによると、そのエリクサーもどきは効果がアップしているものの、取り扱いには劇物扱いでって書かれていますよ」
劇物扱いの薬ってなんだろうね?心臓病患者の使うニトロのイメージかな?って…
「まさか、これを作った人って、転生者だったり」
セイさんも私と同じ想像をしたようだ。二人で見つめ合い、頷きあった。
「所長、私達のいた世界では、劇物を飲んで心臓の動きに喝を入れていました」
「それじゃ、これの制作者は転生者か召喚された彼ってことか?」
研が生きている可能性が出てきた。この世界のどこかで…私と同じ薬用植物研究をしながら…少し嬉しくなった。同じことをしていると思うと。
「人体実験をするとなると…少し怖いなぁ」
劇物って色々ありますよね。所長が瓶の蓋を注意深く開けていくと…目が痛い!これって、カプサイシンだぁあぁぁ~!
「所長!閉めてください!」
私は目を押さえながら叫んだ。
「あぁ、わかった」
気化したカプサイシンを部屋から出さないと…窓を開けないと…
◇
窓を所長が開けてくれたそうだが、私達三人は部屋で意識を飛ばした状態で発見された。
「危険だろう?これ…」
恐るべきエリクサーもどきの威力。傷んだ髪の毛がツルツルのピカピカになり、所長の口ひげは伸びていた。私とセイさんお人にはお見せできないデリケートな部分のヘアが伸びていた。そのことから細胞の再生力がハンパ無いという結論になった。
「薬を使う場所と、使う薬剤師の注意が必要であるが、これはこれでアリだな」
「出来れば女性が使わない方が良いですよ」
と、セイさん。同意する私。意識が戻って初めての感覚は脇の下のゴワゴワ感だったなんて言え無い。
「最上級ポーションの方の分析は出来たが、微量であるが、様々な毒が検出されたようだ」
微量であるので、人体に影響は無いものの、適量を飲めば致死性の高い成分らしい。
「毒と薬は紙一重と言うが…」
所長のつぶやき。紙…そういえば、注意書きの書かれていた紙って、わら半紙だったような…
---ケン---
マインの治療はマインとマイルに任せ、俺一人で移動中である。目指すは聖シュルール協和国聖都シュルールの聖シュルール教会治癒士ギルド本部にあるダンジョンである。
ここには萌達はいないだろう。王国では無いし。でも、無実の罪で刃物を向けるって、どうなの?異教徒は総て死すべきってやつか?ならば、ダンジョンをこっそり攻略で仕返ししようと思う。まず、ダンジョン内に侵入して、転移を自由に出来るようにしておく。深夜なので、入り口は閉まっているが、そんなの短距離転移で、ドア程度開かなくても出入り自由である。
地下に降りる階段が見つからないが、エレベーターらしき物を見つけ、地下に降りた。その結果、ダンジョンの入り口を見つけた。いざ、ダンジョン内に侵入した。今日はここまで、家へと転移をした。
翌日、オートマッピングスキル持ちのマイルと共にダンジョンに侵入した。シロはデフォルトで俺の背中に貼り付いている。
「これって、浄化で一掃出来るのでは?」
マイルの助言通り、このフロア内を『浄化』し、ドロップ品を総て『強奪』して収集した。
「この床って、ケンさん無属性エクスプロージョンで破壊出来ませんかね?」
攻略も何もない。力業での踏破か。試して見ると何層も一度で抜けたようだ。開いた穴に飛び込む俺達。そして、特に戦闘の無いまま、50階層のボス部屋らしき場所に辿り着いた。穴が開いての各フロアがワンクローズエリアになったことより、ワンルームと見なされたのか、『浄化』一発でダンジョン内の総てのアンデッドを殲滅したようで、地下50階にて、とんでも無い量のドロップ品を手に入れた。
「ボス部屋は攻略しないと、ダメだろうな?」
「ですねぇ~」
どんなボスが出るのか。まずは飯だな。今日のお弁当は肉じゃがと焼き魚定食である。味噌汁の具はあおさとナメコである。
「ダンジョン内で和定食って、止められませんねぇ~」
シロは和定食では物足り無いみたいなどで、牛串焼きのバーガーである。
◇
食後、少し寝てから、ボス部屋へ…扉を開けて、部屋の中に足を踏み入れた。中にいるボスの全身には至る部位に顔が浮き出ている。怨霊の集合体みたいである。
「ケンさん、鑑定結果はワイトです。浄化一発でどうですかね?」
マイルがナノちゃん達と協議結果を知らせてくれた。では、『浄化』を一発…俺の浄化術を打ち消すようにワイトから闇魔法が放たれていた。だけど、俺の浄化術は魔法では無い為、打ち消せず。ワイトは消えていく。なのに放たれた闇魔法は消えずに俺達に迫って来た。
迫って来た闇魔法を強制転移させた。勿論、地上にある建物にだ。治癒士ギルド本部は、俺の中では敵認定であるから。
ワイトが消えた後には、魔石と魔法書と杖が残っていた。なんか、ラスボスにしてはドロップがしょぼいんだけど。
「ここって、ラスボスの部屋なのか?」
「この魔法書は、禁忌魔法みたいですよ」
「使っちゃマズい系だよな?禁忌って…」
「ですねぇ~」
って、俺とマイルは禁忌の魔法書を回し読みした。その後で、俺のアイテムボックスで預かることにした。
悪行ポイントが溜まったおかげか、地面から光輝く扉が生えてきた。この先がラスボスじゃないのか?扉に手を掛けると、俺の魔力が扉に吸い込まれて行く。減った魔力をMP回復ポーションで補っていく。
大量に魔力が吸い込まれた頃、扉が開き始めた。俺のお腹はポーションでタプタプだけど…扉の先には降り階段が、その先にはアンデッドドラゴンが鎮座していた。これがラスボスだろうな。迷わず『浄化』を掛けた。
◇
アンデッドドラゴンのいた場所には金銀財宝、武器、防具、魔法道具に嗜好品まで色々なお宝が現れた。吟味している暇は無いので、総て『強奪』してアイテムボックスに収納した。
「そういや、ダンジョンコアって、あったか?」
「無かったですね」
お宝を全部回収すると、ダンジョンコアを探すことなく、ダンジョンの入り口に戻されていた。
「帰るか」
「ですね」