カノジョ探しの異世界行   作:もっち~!

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ラスボス達の集い

 

---ディーン---

 

旅先で事務仕事のアルバイト募集をしている領主がいたので、アルバイトをやってみることにした。何事も経験であり、実際に見聞きすることは重要であるから。

 

「初めまして。私が領主代行をしているアイリス・ラーナ・アルメリアです。あなたの雇い主になります」

 

旅先で見かける貴族は横柄な態度の者が多かったが、彼女は所作は整っているものの、割とフランクに話される方であった。仕事内容は、住民から上がってくる希望、要望、苦情を的確に仕分けして、それぞれのセクションに持ち込むことであった。住民の声を出来る限り聞き入れる領主に驚く。大抵の領主はそんなことをしない。自分通りの領地運営をする者が殆どである。

 

ここの領主代行に興味を持った。どこまで聞き入れるつもりなのか?単なるお嬢様の領地運営ゲームなのだろうか?

 

各部署のトップにいる人材は優秀な者ばかりの上、他国では上流貴族であったのに、態々この地に移住してきた者が割と多かった。平民でも優秀であれば組織の上部に組み入れてもいた。

 

中でも異彩を放つのは、ソルシエ王国の元宰相が、彼女の下で政務を支えていることだ。更には平民である冒険者が、屋敷の一番良い部屋に住んでいる事にも驚いた。

 

「どうして、平民の彼が公爵邸に住んでいるのですか?」

 

この国ではあり得ないことだったので訊いてみた。

 

「どうして、平民と公爵令嬢は結婚出来ないのですか?」

 

質問を質問で返された。それは彼との身分差の恋ってことか?確か、彼女は第二王子との婚約が破棄されたはず。そうか…きっと傷心していたところをあの冒険者につけ込まれたのだろうか。

 

「あなたは第二王子の婚約者だったんですよ。なのに…何故、平民を囲っているのですか?」

 

本当に理由を知りたく、また質問をしてしまった。

 

「彼は第二王子であるエド様よりも尊敬しています。そして、お慕いしております。それが何か問題でもおありですか?」

 

そこまで言い切られると、反論は難しい。雇い主とバイトの関係であるし。

 

 

 

---ケン---

 

カタリナの専属メイドのアンが現場に復帰した。まだカタリナの介助が必要であるが…主従逆転に見える風景…現場復帰は早いのでは?

 

俺はデフォルトのシロとマイルと共に、冒険者ギルド本部の案件を熟す毎日を送っていた。案件を熟しながら、必要な材質や人材をチェックし、魂が薄汚れたヤツは即刻で消す方向で動いているけど。

 

今日は初めての国へお出掛けである。案件内容は、違法奴隷商の殲滅である。ヤーシスに確認を取ったら、真っ黒な商人グループであった。犯罪紛いで手に入れた訳あり物件を、その筋の愛好家に売る手口らしい。アンのような女性を量産するのは許せない。

 

「あれ?この国名って…ねぇ、ケンさん、『フリージア王国』って、聞いて何かを思い出しません?」

 

マイルのオートマッピングスキルは、国境を越えると、どこの国に入国したのか国名が分かるらしい。

 

「フリージア?あぁ、乙女ゲーの『きみひか』だっけ?主人公と攻略対象者で、極悪非道の自己中心の最強外道ラスボスを倒すってヤツだっけ。あのラスボスの目的がよく分からなかったなぁ。あぁ、正式名称は『君と一筋の光を』だったな。って、まさか…」

 

今思い返してみると、あのラスボスそんなに極悪非道で最強外道では無い上ラスボスってガラでもなかったよな。寧ろ目の前にいるマイルの方が、極悪非道な外道でラスボスタイプだと思う。

 

「ケンさん、今思ったことはブーメランしますよ!」

 

コイツ、俺の心が見えるのか?

 

「俺はラスボスって言うより、モブキャラでありたい」

 

平穏なスローライフを送りたいんだよ、俺は…

 

「どこの世界に、錬金術師ギルドランクSSで商業ギルドランクAのモブキャラがいるんですかぁ~」

 

「それなぁ~、内緒だから…」

 

決して、自慢出来ることでは無い。治癒効能が最強レベルでありながら、凶悪な2次被害が出るエリクサーもどきを発表した途端、錬金術ギルドのランクがSSに昇格した上、アイリス母考案のセット販売も加わり、商業ランクまでもAに昇格していた。いいのか?一歩間違えると犯罪物件商品だぞ。

 

「で、話を戻しますが、あのラスボスの名前を覚えていますか?」

 

「う~ん…確か格闘技系の…そうだ!プライド、プライド・ロイヤル・アイビーだっけ。で、主人公が妹のティアラ・ロイヤル・アイビーだっけ?あのラスボスを最短ターンで倒すことに嵌まったっけ」

 

女性向けゲームって、男性向けよりエロい画像があったりするし、俺は乙女ゲーに嵌まった時期があった。若気の至りってことで…

 

「マップ内にその人物を見つけました」

 

マジかぁ~。俺、妹の方が好きなんだけど…

 

 

 

---プライド・ロイヤル・アイビ---

 

8歳の時、前世の記憶を思い出した。このままでは、私は大切な人達に最悪な結末を与えてしまう。

 

この世界は、前世でやりこんでいたゲーム『君と一筋の光を』、きみひかと呼ばれていた乙女ゲーの世界であった。主人公である第二王女が、攻略対象者達と、乱心した最愛の姉を討伐するゲームである。ハッピーエンドなら姉だけが死に、バッドエンドなら妹を含む家族、攻略対象者を含む仲間達、王国に多大な苦痛や苦難を与え滅ぼしてしまう。まさか、その姉に転生してしまうなんて…

 

だから私はハッピーエンドを目指したい。どうか、神様…私に死をお与えください。

 

「ゲームからログアウトする方法もあるぞ」

 

突然、背後から知らない男性の声がした。咄嗟に振り返り剣を構えた。しかし…

 

「あっ!」

 

急に下半身に力が入らなくなった。

 

「何をした…」

 

全身が悶々としている。

 

「新薬のテスト。被験者は風下にいる君だよ。プライド・ロイヤル・アイビー」

 

何?なんで…この人は日本語を話しているんだ?四つん這いになり、背後からオークにやられるシーンで意識が途絶えた。

 

 

 

---ケン---

 

最強外道なラスボスも、アイリス母ご所望の媚薬を前にして、アヘ顔で堕ちた。液状にしたアレをプライドの食道に転移させたのだ。気化した成分が鼻孔を通じ吸収され、脳へ効能が瞬時に届いたのか、速効で堕ちた。

 

「相変わらず、危険な濃縮薬ですね」

 

白い目で見るなよ、マイル…

 

「これ、売って大丈夫なんですか?」

 

「市販品は効能を薄めてある。ウェンディとアイナ、ソルテで実験済みだよ」

 

「プライドよりも外道で鬼畜ですよね?」

 

「いや、発案者のアイリス母だろ?その称号は…」

 

「それって、面と向かって言えますか?」

 

「言えません」

 

アイリス母とマイルが剣で手合わせをしたのだが、スーパーチーターのマイルが負けた。マイルって、自己流剣術だものな。最近は、アイリス母の実家であるアンダーソン侯爵家で鍛えられているらしい。あの噂は本当であった。剣を持つとバケモノになるという…単なる悪人顔では無い。魔王だったと言われても信用出来るかもしれない。

 

「ケンさんも鍛えられませんか?」

 

「俺、しがない錬金術師ですが…」

 

剣は必要無いと思う。

 

「しがない錬金術師が、極悪非道で最強外道なラスボスを悶絶死に追い込めないでしょ?」

 

そうかもしれない。お持ち帰りしよう。アイリス母に頼めば、更生させてくれるかな?コイツの穏やかな顔を見てみたいし。ゲームでは怒りに染まった顔、悪役面が殆どだったからな。

 

 

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