---ティアラ・ロイヤル・アイビー---
タスメリア国アルメリア公爵領の特産品であるチョコレートというお菓子。それの詰め合わせを今回来訪した他国の特使様に頂いた。部屋に持ち帰り、愉しむことに。箱を開けると、なんとも言えない甘い香りが部屋中を漂っていく。一つ摘まみ、口の中に入れ、舌で転がしていく。甘い香りが口いっぱいに広がり、鼻から抜けていく。あぁ~、幸せな気分になれる。
あれ?箱の中にカードが入っている。カードを手に取り、読んでみる。
『食べ過ぎると鼻血が出ます。食べ過ぎると太ります…』
など、注意書きがカードに書かれていた。我が国の言葉で…えっ!この筆跡…お姉様の…お姉様のクセが文字に反映されている。なんで…カードをひっくり返すと、
『ティアラ、元気かな?私は幸せよ。もう愛しき者達を傷つける心配は無いし、万が一の時、周囲の人達が私を止めてくるって。だから、安心して人生を楽しみなさい プライド・ロイヤル・アイビー 追伸、このカードは燃やしなさい』
お姉様…あなたも未来が見えて、苦しまれていたんですね。そうなると、お姉様は彼らと一緒に暮らしているってことですか。カードを大切にハンカチで包み、机の引き出しに入れ、彼らの部屋へ向かった。
彼らの部屋に着き、ドアをノックするが返事が無い。耳を当てるが、物音1つしない。何かがおかしい。部屋に踏み込むと、薬用植物研究所の研究員の女性がベッドの上に横たわっていた。
---ケン----
フリージア王国の書庫から世界地図関係を総て錬成コピーをして持ち去った。俺とマイルとナノちゃんで、スタンタニア王国の場所を探す。合った!漸く見つけたぞ。
短距離転移を繰り返し、スタンタニア王国へと急いだ。目指すは王城内の神殿及び、魔法書などの資料がある書庫である。召喚の儀は今後行えないようにする。
王城内に潜入すると、神殿風の区画で、見た事のある儀式部屋を見つけた。召喚の為の魔方陣がそのまま残り、魔方陣を描く為の古びた書物もあった。なんて不用心な。それとも、近々また召喚の儀でも行うのか?
神殿にある書物を全部『強奪』し、魔方陣は石床に刻まれていたので、マイルの土魔法でまっさらにして上げた。次は萌達の救出…いや、城にあるあらゆる書物と金と金目の物も貰っておこうか。『強奪』し、アイテムボックスに収納した。後は人質を救い出すだけだ
二人の探索をするが、見つからない。城にはいないようだ。
「マイル、広域マップにして。ここ以外に敷地に何か建物はあるか?」
「えぇっと、薬用植物研究所…後宮…使用人や騎士達の寮…」
後宮って、大奥だっけ?聖女召喚して、まさかなぁ~。だけど、この世界には訳ありの女性をどうにかする文化があるし…先ずは後宮へと向かった。
その後宮だが、内部は予想以上に酷い物だった。そこら中に壊れた女体が散らばっていた。まだ息があることから、彼女達にとっては生き地獄だろうな、これ…肉体を修復して、精神まで修復出来るか分からない。そこまで酷い状態の女体達。
「酷い…ここの主は絶対に許さない」
マイルから表情が抜け落ちている。怒りがレベルマックスへと向かったのだろう。そんな中、居て欲しくない人物を見つけてしまった。
「おい!静…大丈夫か?」
遠目に見ても大丈夫とは思えない身体…損傷が酷い。既に息をしていない。脈も無い…なんで?聖女として拉致されて、こんな目に…俺の怒りもレベルマックスへと…
俺は静を含めた犠牲者達の魂を浄化し、彼女達を損壊させた悪しき魂達は闇に沈めていき、この場に魂が地縛しないで昇天するようにし、マイルはこの忌まわしき場所をまっさらな場所へとしていく。建物や生き物の亡骸を分子レベルに分解し、粉塵爆発を利用して、後宮を完全粉砕した。
◇
未だ萌が見つかっていない。次に薬用植物研究所へと向かった。部屋を探査していき、研究室の1つで萌を漸く見つけた。
「えっ…おかえりなさい」
俺の姿を確認した萌が俺に抱きついて来た。そのまま俺は無言で萌と共に、四人で帰宅をした。
◇
「なんで、静が…ねぇ…うっうぅぅぅ」
静の亡骸はアイテムボックスに入れて、持って帰って来た。亡骸を修復した後、死に装束を着せ、棺に横たえ、ささやかだが葬送の儀をした。趣味で覚えていたお経を唱える俺。棺に祈りを捧げてくれる仲間達。そして、棺に縋り泣き続けている萌。
このまま保存は出来ない。完全に修復出来なかったのだ。一部欠損した身体で、荼毘に付すことにした。マイルとマインが日本式のお墓にするために、石を作り、名前を刻んでいる。ナノちゃんには持って来た書物から、元の世界へ帰れる魔方陣を探して貰っている。
『無いって…その代わり聖女召喚、勇者召喚、賢者召喚なんかの召喚系は抹消してくれたって』
静の供養として、この程度しか出来ないが、これで異世界間の拉致事件は起きないはずだ。
明け方、棺に火を入れる。虫眼鏡を錬成し、太陽光を集めて着火した。ゆっくりと白木の棺が燃えていく。それぞれが信じる神様に祈りを捧げていく。俺達元日本人は、それぞれの覚えているお経を読経した。棺全体に炎が回り大きな炎へとなり、棺が灰へと変移し、肉体は灰と骨に分かれていった。
第1章終了です。次話から新章になります。