---アイリス・ラーナ・アルメリア---
ケンのお持ち帰りしたものは、国に目を付けられるのには充分であった。フリージア王国との友好条約を公爵領として締結したのは、父も母も王太后様も目が点になるほどのビックリな出来事であった。こういった条約というものは普通、国同士が締結するものであるからだ。
「アイリスちゃん、どういうこと?」
王都から母が駆けつけた。
「ケン、あなたは、アイリスちゃんという良い女がいるのに、何をしているの?」
そこなの?
「え?俺が悪いの?」
「いい?正妻の座はアイリスちゃんにしなさいよ!」
母の剣幕にケンはコクコクと頷いていた。問題はそこなの?公爵領として大国と条約を結んだことでなくて?
---ケン----
「いい?正妻の座はアイリスちゃんにしなさいよ!」
モエの立場は…無いかぁ。モエは結婚まで考えていないみたいだし。帰れれば、元の世界に帰りたいらしい。俺は、もう帰れなくてもいいかな。無責任に放りだして、元の世界には帰れない。帰っても浦島太郎状態はイヤだしな。
「ちょっと待った!俺はアイリスとは結婚が出来ないんだろ?」
アイリス母の言葉に流されそうになったが、平民と公爵令嬢は、この国の貴族ルールでは結婚出来ない。
「ふふふ…フリージア王国で結婚式をあげちゃいなさい。友好国でしょ?」
アイリス母の顔が悪人顔になっている。結婚証明書もフリージア王国で貰えば、この国では撤回出来ないらしい。悪代官夫人が俺の目の前にいた。
「それにあちらの王女様達は、平民としてあなたと結婚をするんでしょ?」
「まぁ、確かに…」
「ふふふ…ならば、アイリスちゃんが正妻の座でも問題は無いわ」
平民と公爵令嬢では、公爵令嬢の方が正妻の座に座れるが…フリージア王国に王配になれば、立場的にアイリスと問題なく結婚出来るのでは?
「ねぇねぇ、私も公爵令嬢よ。両手に花な結婚式にしようね」
って、もう一人の悪役令嬢が、悪代官夫人の案に載っかってきた。あぁ~、これ逃げられないヤツだぁ~。なんかフラグが立った気がする。
「ケン、身から出た錆ってことで、責任は取ってね」
と、アイリスが笑顔で抱きついて来た。錆びは無いと思う。俺から求めたことは無い。裸を見たかもしれないが、あれは男湯に入って来た女性陣が悪いんだし…
だが救いはある。プライドは12,ティアラは2歳下の10である。成人が15のこの世界では、二人共まだ結婚出来る年齢では無い。アイリスとカタリナは問題無い年齢であるけど…ティアラが成人するまで5年は逃げられる計算である。そうだ、結婚よりも領内の再開発を優先にして貰えば。
---アイリス・ラーナ・アルメリア---
王宮内で行われている建国記念のパーティーに招待され、目の前にはエド様とその婚約者ユーリがいた。護衛としてケンとプライドが付いていたが、二人共、王太后様の事情聴取が行われており、、私一人でエド様達に対応しないとダメな事態になっていた。
「ユーリが、お前の着ている物が欲しいそうだ。今すぐ脱いで献上しろ」
エド様がいきなり無理難題を言う。それはパーティー会場内で私に下着姿になれと言うのか?
「そもそも、お前のような者が呼ばれるのがおかしい。おい、チンケな国と友好を結んだくらいで、いい気になるなよ!」
エド様の側近達に押さえられ、エド様の手により、服を脱がされていき、ついには下着まで…その場に身をかがめて、男性達の視線から見えないようにする。
「おい!衛兵!この裸女を牢にぶち込んでおけ!」
エド様の冷たい声。側近やユーリの笑う声…なんで、こんな目に…
パサッ
あれ?頭の上に何かを被せられたわ。
「ポンチョだ、アイリス」
ケンの声だ。言われるままにポンチョを羽織った。これでひと安心だ。周囲の状況を確認すると、エド様は何故か玉座に座っていた。私を取り押さえようとしていた衛兵達は、装備を剥ぎ取られたのか、下着姿である。そして、私の周囲には、ケン、プライド、シロちゃん、マイルちゃんが臨戦態勢で私を護るように立っていた。
「これはどういうこと?」
王太后様が異変に気づき近づいて来た。
「お前が俺達から話を聞いていた間、てめぇの孫の命令で、アイリスが全裸にされていたんだが、俺達をアイリスから引き離したのも、あんたの罠だったのか?」
ケンの声が届いたのか、王太后様の顔色が変わり、目つきが厳しいものになった気がする。。
「アイリスが全裸に?誰の命令?」
「だから、今、玉座に座っているヤツにだ」
一斉に玉座を見るみんな。そこには第二王子のエド様が、座っていた。
「エドワード!なんで、そこに座っているの!そこは王以外、座れないのよ」
「エドワード様が事実上の王様だから、問題ないでしょ?」
ユーリが王太后様に答えた。あぁ、王族のルールを沢山破っているんだけど…エド様が玉座に座る為の条件は、第一王子が死に、王様が死んだ場合だけである。ユーリの発言が事実だとすると、王様と第一王子はエド様の勢力に暗殺された可能性があると言うことである。
「あなたは誰だったかしら?」
王太后様が嫌みを込めてユーリに尋ねた。
「おばあちゃんはボケちゃたかな?私はエドワード様の正妻、女王よ。無礼な、膝を付きなさい。あぁ、おばあちゃんだから、目と耳と膝が悪いのかしら?」
王太后様をおばあちゃん呼び、その上で女王って言い切っているし。バリバリの不敬罪である。その上、侮辱罪も付くのでは…
「アイリス、帰るぞ」
ケンに手を引かれ、広間から出ると転移して帰宅した。
◇
「アイリスの全裸の拝観料だよ」
目の前に金貨が山の様に積まれていた。ケンは、参加者の財布から金貨以上の貨幣をこっそり『強奪』したようだ。後、衛兵の装備品もだよ。
「コレを材料に、領兵達の装備品を作るか。おぉ~、ミスリル銀みたいだ。流石は王族の近衛兵だねぇ」
衛兵の装備品を楽しそうにインゴット化し始めたケン。
「しかし、極悪非道ですよね。転移間際に広間に改良版もどきを投げ込むとは」
マイルちゃんからの目撃証言…ケンはあの密閉空間に改良版エリクサーもどきを投げ込んだって。確か今回の改良版って、全身の毛が急激に伸びて剛毛化するんじゃなかったっけ。
「ハゲている人が多いから感謝されるかな?」
「脇腹が痛そうですねぇ~」
脇毛が刺さるくらいの剛毛になったって、言っていなかったか?今回の改良点は細胞の再生スピードの強化だけで無く、細胞自体の堅牢化だった気がする。
「あぁ、アイリス母は、強制転移させて、王都邸に返してあるから、問題は無いよ」
問題大ありの気がするのは気のせいだろうか?
---ケン---
アイリス全裸事件から数日後、王都からアイリス母がやってきた。
「あの第二王子はダメね。玉座はもう俺のもんだ、だって…アイリスちゃん、婚約破棄は正解よ。まだケンの方が良い物件よ」
何故、俺と比べる。心外である。俺は単なるモブ平民風情だぞ!
「婚約者のユーリ様は。不敬罪になりましたか?」
「ならないわ。第二王子派閥の貴族達が、かばいまくりよ。バックには現王妃様が付いているし、王様はふぬけだし、暗殺を恐れて第一王子は雲隠れ。この国は終わったかしらねぇ」
アイリス母は、何故楽しそうな顔で話しているんだ?
「消すんなら、いつでも言ってくれよ」
いくら俺やマイルでも、領地ごとの引っ越しは無理だから。ジャマを排除した方が楽である。
「暗殺?ケン、あんなヤツ、暗殺する価値も無いわ」
アイリス母はどうしたいんだ?暗殺する価値がないって、あの図太さは中々自然死しないぞ。
「後、あのユーリって、他国の工作員だぞ」
「それは何情報?」
俺の情報で驚いた顔になったアイリス母。
「エチゴヤの取引相手だよ。最近、北の国にジャガとトマトを輸出して、農業指導もしているんだ」
ポテチ工場を作ろうと思っている。廃熱を利用すれば、暖房に利用出来そうだし。トマトのリコピンは身体に良いし。
「ねぇ、ケンは北の国をコントロール出来る?」
「そうだな。取引相手が結構有能な商人だから、時間を貰えれば…」
北の国は凍てつく大地が広々とある。商材を選べば、大儲けできそうである。それにジャガが大量に生産出来れば,食料問題も少しは解決するだろう。
俺達があの国の問題である食料事情を解決すれば、あの国の上層部を民意で打倒できるであろう。
原作よりもエド様&ユーリの悪行ポイントを増やしてみました(^^;