---アラン・スティアート---
カタリナとカタリナの関係者が消えた。遂にカタリナの実家であるクラエス公爵邸もアスカルト伯爵邸のように爆破されてしまった。一連の出来事を兄達の派閥の貴族達によるものだとジオルドは考え、ジオルドは王位争いに名乗りを上げた。
仮にジオルドが王になった場合、兄達を含む派閥全員の粛正が行われるだろうな。
俺は王位継承権を放棄し、旅に出た。そして今、旅のバイオリン弾きとして生計を立てている。ある街で冒険者の隼人と意気投合し、近くにいる隼人の友人を一緒に訪ねることになった。
「僕、初めてなんですよ。ケンさんが開発する街に行くのは」
楽しそうに話す隼人。ケンと言う人物を慕っているようだ。
「錬金術師としての腕は確かだし、最近は商業ギルドランクも上げているそうなんですよ」
自分で錬金した物を自分の商店で売っているのか?
「今から行く街はデカイのか?」
「どうだろう?再開発中だって言ってましたから」
再開発?田舎の村か何かか?一度出来上がってしまった街は、再開発する土地は無いから。
「あぁ、見えて来ましたよ。はぁ?何だ、あの塀は…」
塀というか城壁のような壁で囲まれている街が見えて来た。デカイ…こんな街の再開発しているのか?
街に出入りする門はどこかの城の門のようで、門自体が建物でもあるようだ。
「この街では、普通の貨幣は使えないから、両替商で両替をまずした方が良いぞ」
と、門番。普通の貨幣は使えない?どうしてだ?隼人達と両替商へと行く。その店は門を入って直ぐのところにあった。両替は持っているコインに含まれる銅、銀、金、白金の含有量で、ここで使えるコインに交換してくれるようだ。
「金貨以上の貨幣は紙幣に交換になるが、良いのかな?」
「え?紙幣ですか?珍しいでのお願いします」
隼人は金貨を1枚取り出し、両替商に渡した。
「これではダメだ。3枚くらいないと紙幣にはならない。この金貨の金の含有率は低いぞ」
何かの機械に入れると含有率が分かるようだ。あれは魔導具か?
◇
紙幣…文字がアレコレ書かれているが、どこの言葉だ?見た事の無い文字だ。
「へぇ~、銀行券だ。アルメリア公爵銀行券かぁ~。流石はケンさんだな」
隼人にはあの謎文字が読めるようだ。
「なぁ、これはどこの言葉だ?」
「僕達のソウルランゲージですよ」
ソウルランゲージ?魂の言語?どういう意味だ?
「独自貨幣だと、盗まれる心配は少ないですね。他領や他国では使えませんから。それに金貨をジャラジャラ持ち歩くこともないし、何よりも軽いですからね」
まぁ、それは分かる。下手に大金を持ち歩くのには、護衛が必要であるから。だが…
「この街の者に盗まれる心配があるだろ?」
「それも無いですよ。この領内で悪意を持つと、天に召し上げられますから。悪意除去の結界を張っているそうですから、悪意を抱いて生きていると、突然倒れ、衛兵に回収されるそうですよ」
錬金術師って、そんな物まで作れるのか…開いた口が塞がらないぞ。
屋台では見た事の無い食い物が並んでいた。それを隼人は懐かしそうに買い食いしている。この街に来たのは初めてじゃ無いのか?
---ケン---
隼人のパーティーが領都に来たようだ。外周部の公営アパートは完成したので、再開発は一段落している。領都からスラム街は消え、衛生レベルが1つ上がった感じである。ボロボロだった教会は新設され、併設されていた孤児院も以前より広くなっていた。教会には学校も併設され、初等科だけが開校している。この初等科は誰でも無料である。中等科以上は有料であるが、初等科は最低限知って欲しいことだけを教える、領民にとっての義務教育と言う位置づけであるのだ。
「運営資金はケン持ち?」
何故か、まだ逗留しているアイリス母に訊かれた。
「まぁ、エチゴヤ商会が儲かっている間は、開発資金も含めて俺が持つよ。ただ、税収が上がったら、お小遣いは貰うけどな」
敵対勢力から、金貨以上のコインをこっそり『強奪』で奪い取っているのは内緒である。
「ねぇ、アイリスちゃんを一生護ってあげてね」
「俺はモブな平民ですよ」
「モブな平民が、大国の王女二人と婚約なんかしないでしょ?」
プライドとティアラ…あそこの女王は何を考えて、早々と俺を婚約者にしたんだ?便乗してアイリスとカタリナまでも俺と正式に婚約している。
「娘達の独断じゃなくて、全員、両親の承諾を得ているのよ。もう逃げられないわねぇ、おほほほ」
その両親の一翼はお前だ!俺のモブなスローライフを返せぇぇぇぇ~