---モエ---
【聖女召喚の儀】とは、 スランタニア王国に古の時代より伝わる儀式だそうだ。遥か昔に、瘴気に包まれた王国に魔物達が蔓延った時、どこからか聖女が降臨して、瘴気を晴らして魔物を退けたそうだ。
どこからか降臨では無く、違う世界から拉致してきたのだろう。そう、私達のように…
「どうしたの?」
目の前にセイさんという女性がいる。私達二人に聖女らしさが無いってことで、懲りずに召喚して拉致されてきた女性である。現在、私達は薬用植物研究所にいる。王宮にいても暇なので…
「この国、おかしいでしょ?聖女候補を召喚って、これって、拉致ですよ、ら、ち!」
「そうよねぇ。でも帰る方法は無いと言うし…」
セイさんはOLだったそうだ。それもデスマーチな職場の…そのせいか、ノンビリとしたここの生活が気に入ったみたいだ。
「彼のことも心配だよね」
そう、彼…研のことが心配である。器用貧乏系なので、サバイバル生活でもなんとかなるだろうけど、他の女と生活をしていないかが心配である。漸く、あの女から奪ったのに…なんでこんなことに。
---ケン---
カタリナと一夜を過ごした。中々のスタイルの上、甘い歌声も良かった。
「私の身体を味わったんだから、約束は守ってね」
「あぁ、この先、ずっと傍にいるよ」
萌とお泊まりのはずが、アクシデントに巻き込まれ、溜まっていた俺はカタリナの添い寝で、狼になった。いやカタリナが女豹になったと言うか…
「これから、どうする?」
「まずは地図が欲しいかな」
「地図は高いわよ」
旅行をするのは高位貴族だけらしく、国内地図もあまり無いらしい。あっても高額だと言う。
「だけど、闇雲に船は出せない。せめて陸地の方角は知りたいなぁ」
ってことで、カタリナの記憶頼りで、近くの街へと向かった。目指すは冒険者ギルドである。まず冒険者になって、お金と信用を得ようと思うのだ。冒険者ギルドの信用を得られれば、地図を見る機会もあるだろうと。
しかし、着いたの違う街だった。やたらに大きな街である。ここはどこだ?
「ごっめぇ~ん」
カタリナが謝っている。まぁ、冒険者ギルドがあれば、どこでも良いんだよ。って、ここはどこ?
「もしかして、『FORTUNE・LOVER』のカタリナ・クラエス、さん?」
おぉぉぉ~、カタリナは転生者を釣る撒き餌か何かなのか?乙女ゲーを知っている人が釣れた。話し掛けてきた女性を見た俺は、彼女を二度見してしまった。
「そっちは、『君は僕のプリンセス』のアイリス・ラーナ・アルメリアか!」
まさかの乙女ゲー二大悪役令嬢の揃い踏みである。カタリナもそうだけど、アイリスもゲーム内で見るよりも、表情が柔らかい。きっと破滅フラグを回避して、悪役令嬢にならずに生きてきたのか?
「そうなると、お二人とも転生者?」
アイリスに訊かれた。
「いや、俺は召喚されたんだ。ここはどこ?」
「ここはタスメリア国のアルメリア公爵領の領都よ」
「あれ?」
カタリナの脳内地図は当てにはならないようだ。目的とは別の国にいるんだけど…
アイリスと話した結果、しばらくアイリスの館、アルメリア公爵邸でご厄介になることにした。アイリスは領主代行の仕事をしているそうなので、俺達も手伝うというかバイトとして衣食住付きで雇ってもらった。カタリナも公爵令嬢であるので、貴族としての手紙の代筆を、俺は経理、計算系を担当した。
「そうか。破滅フラグを避けまくっても、湧いてくるのね」
三人でのお茶会での折、アイリスにカタリナが逃避行の経緯を話した。
「で、冒険者ギルドって、どこ?」
俺の目的を話した。
「この国には冒険者ギルドは無いの」
国のシステム的に無いらしい。そう言えば、カタリナのいた国にも無かったなぁ。乙女ゲーの世界には無いのかな?
「地図は用意出来るけど、ここに居て欲しい。日本の話を一杯したいの」
「じゃ、カタリナはここにいろ。俺だけで、どうにかする」
公爵家の令嬢のカタリナには、長旅は向かないだろう。
「ちゃんと帰って来てくれる?」
ゲーム内では見る事が無いカタリナの上目遣い気味の甘えた表情。
「勿論だよ。取り敢えず、ここでバイトをしながら、アイリスの側近達に剣を鍛えて貰って、冒険者ギルドに登録しに行くよ」
◇
半年ほど、アイリスの館で過ごし、稼いだお金と、剣と地図を貰い、冒険者ギルド探しの旅に出る準備が整ってきた。経理系は、俺とアイリスで複式簿記を推奨に、お金の流れが追いやすくなった。
「明日には出るの?」
アイリスに訊かれた。
「地図もあるから、迷わずに行けるはずだよ」
「ねぇ、ここにイイ女が二人いるんだから、変なの引っかからないでよね」
とはカタリナ。
「そうだな。カタリナとアイリスに勝てる女はいないだろう。色々な意味でね」
今夜も二人と身体を合わせて、身体も心も夢の世界へ…