---ケン---
「萌、やっと帰す方法が分かったよ」
萌の部屋を訪れた俺。俺の言葉に怪訝な表情を浮かべている。
「帰す?一緒に帰るんじゃなくて?」
「あぁ、俺は帰れない。俺は…この世界に永住して、骨を埋めるよ」
決心が鈍りそうなので、萌の意識を刈り取った。そして、人里離れた森へ転移して、萌を手に掛け、その魂を手に入れた。
オリヴィエに憑依した者、始祖魔導王で、初めての召喚者から得た情報…誰かの魂に帰りたい者の魂を憑依させて、憑依をした者を死なすことで、魂が元の世界に帰ることが出来るらしい。
だから他人の魂を取り込めるように、転生者、召喚されし者の魂は二重に見えたのだろう。この世界仕様の魂を着た本来の魂。この世界の魂を憑依させた者にあてがい、本来の魂は本来あった世界に戻れる。だから、アレはオリヴィエに憑依し、元の世界へ帰ろうとしたのかもしれない。
魂が二重に見える俺は、理不尽に召喚された者や、転生した来た者を本来の世界へと帰還させる為に、この世界に呼ばれたのだろう。もしかすると、ステイタスには表示されない帰還スキルを持っている可能性がある。
萌の器だった肉体を荼毘に付し、その場に墓を作った。萌の墓の隣には、静の骨の入ったロケットを埋め、静の墓を作った。あとは、萌の魂を誰かに憑依させて、葬れば良いだけだ。
オリヴィエに魔方陣を施した人物を探し出す。裏でアレコレと動いていたので、割と簡単に見つかった。そして、魂を憑依させて、その者の生の時間を止め、器を焼却した。これで、帰還できたはずだ。
万が一出来なかったら、無駄死にかな…
---若草萌---
「私は身体は興味無いの!彼の知識を借りるだけよ!」
「彼はあなたの猫型ロボットじゃ無いのよ!」
いつもの日常である。彼の元カノである静との言い合い…あれ?彼って、誰?
「ねぇ、彼って、誰?」
「そうねぇ。誰だったかしら?」
静にも分からないようだ。まさか、エアー彼氏を巡って言い合い?それも日常的に…私達病んでいないか?
「静の元カレって誰?」
「いないわよ。どこかにいい男はいないかしら」
いたら、私も欲しい。
その時からだ。心に何かぽっかりと穴が開いた感覚を感じたのは。それは、帰宅後も感じていた。何かを忘れている感覚もある。大切で、大事な事…
◇
帰宅し、お風呂に…衣服を脱衣していると、見慣れないロケットを持っている事に気が付いた。ロケットの中には何も入っていない。これって、誰にもらったんだっけ?
入浴後、自分の部屋に戻る。なんか懐かしい気分になる。なんでだろうか?毎日いるのに…ふと、日記帳が目に入り、パラパラとめくっていると、伏せ字の箇所が何か所もあることに気づいた。誰かがマジックで塗りつぶしたというより、そこだけ黒で印刷されている感じだ。
『●●から告白を受けた。もちろんオーケーした』
誰かの名前のようだ。誰かに告白って、されったっけ?思い出せないので、告白を受けたらしい日付のスマホの予定表を確認してみた。
『1500ケンと待ち合わせ 体育館裏』
とある。ケン?誰だっけ?記憶の引き出しを片っ端から開けていくように、思い出していく。と…
走馬灯のようにカレとの記憶が脳裏に浮かび上がっては消えていく。嬉しかったこと、楽しかったこと、悲しかったこと、辛かったこと…なんで忘れていたのか?思い出せもしないなんて。私って、若年性健忘症かな
そうだ!ケンに連絡をしてみよう。将来、介護してもらう約束を取り付けよう。
『お客様がおかけになった番号は、電波の届かないところにあります』
どこかに道草でもしているのか?メッセージアプリでお願いを送っておくか。