---ディーン---
久しぶりにアイリスの元を訪ねたのだが…なんで、ここに冒険者ギルド本部、錬金術師ギルド本部、商業ギルド本部が移転しているんだ?領都と行政区を繋ぐ道沿いに並んでいた。王都よりも利便性が良い気がする。街中では無いので、それぞれが割と広めの敷地となり、建屋同士が隣接していても、圧迫感が無いのが良い。
行政区も様変わりしていた。見事なお屋敷街に変貌していた。真新しい建物が目に入った。植物の研究所か?温室が幾つも並んでいるし。ますます王都よりも王都らしく変貌していくな。
「こんにちわ」
アイリスの執務室へ入っていった。
「あら、ディーン。久しぶりね」
アイリスの表情は少女のものから、大人の女性のものに変貌していた。何があったんだ?まさか、建国記念パーティーの事件で、心が壊れたのか?
「どう?街の変貌ぶりは」
「驚きました」
前回の訪問から半年くらいで、こうも変貌するだろうか?領都の堅牢さは王都よりも固そうである。各ギルド本部があることにより、ここにケンカを売るバカはいなくなっただろう。一番の驚きは、領都に教皇公認の教会があることだろうか。王都にすら無いのに…まぁ、王都には国教の教皇公認の協会があるけど。我が国だけの宗教な為、そんなに威厳は無いし、国教の教皇は不正に塗れているし、碌な者では無い。
「後、貨幣の改革もしましたのよ」
私の目の前に紙の貨幣が置かれた。
「これ、ここの領内でしか使えませんけど、これが金貨の代わりになるんですの」
偽造防止の為か、透かしが入っているようだ。こんな高度な紙製造技術があるのか。
「紙幣専門の紙すき工場や、印刷工場もあるんです」
これではどっちが王都か分からない。ここには世界中に展開している二大商会の本拠地もあるし。
「まだまだ、発展させます。領民達が平和に暮らせるようにね」
アイリスの野望は広がりをみせているようだった。こんな豊かで将来性のある領地では、第二王子が手を出しそうだ。無理矢理無謀な命令を下しそうで、心配である。
---ケン---
頭の弱い第二王子が領地を寄越せと言ってきた。何をバカなことを言っているんだ?渡さないと、国家反逆罪に問う言う。
「自分の直轄地にしたいみたい」
アイリスは相手にしない方向である。いや、努力の末に領地が潤ったのに、王家が取り上げるって、あり得ないだろうに。この国では当たり前のことなのか?
「攻めて来たら、返り討ちにしよう」
そんなことを考えていたが、宣戦布告も無しにいきなり、第二王子を担ぎ上げる貴族達が兵を率いて攻めてきた。プライド、マイルのラスボス2TOPがいるのに、コイツらアホか?更に、聖女と認定聖者もいるし、身食いが二人いるのにだ。第二王子はバカに違い無い。
「なんか失礼なことを思いましたか?」
マイルが俺の心を読んだのか、妙なことを言う。
「いや、思っていない。妥当線を想像しただけだよ」
俺は後方支援に徹する。攻めてきた敵軍の後方で、『強奪』しまくっている。武器、防具、魔導具や、攻めてきた貴族達の本邸から金、宝飾品などを情け容赦なく頂いていく。所謂、戦利品であり、窃盗行為では無い。
「エゲツ無いなぁ。補給路を断つよりエゲツ無いですよ。逃げ帰った先に安らぎすら残さないなんて」
って、セイ。俺が敵領地で強奪三昧して居る間、マリア、マイン、オリヴィエと共に、敵領地にて平民達へ治療祭りをしている。ガードはチーム隼人である。欲深いヤツラは街中にいないので、隼人達は暇で、子供のお守りをしているし。
◇
短期決戦となった。相手の補給物資は、総て自領に強制転移させたので、半年ほど籠城しても大丈夫なくらい、潤っているアルメリア公爵領。
敵の大将の第二王子は、戦乱に乗じて行方不明に…アイリスを虐めていた第二王子の婚約者は、オークの群れに襲われて見るも無惨な姿に…意味の無い内乱は、呆気なく終わった。
戦後、処理が楽しみである。勝てば官軍だよなぁ。問題は相手に、払うだけの財力が残っているかだな。
---アイーリャ・フォン・タスメリア---
あの出来損ないの第二王子が、急激に発展をしているアイリスの領地を奪い取ろうと動いた。第二王子と共に第二王子派閥の貴族達も決起し、戦力差的に第二王子が負ける訳が無いと思ったのか、勝ち馬に乗るべく中立派閥までも決起に参加した。
『一人勝ちの領地は許せない』
と…あそこは努力を重ねて、潤った領地なのに、それに気づかぬ愚かな貴族達。仮に勝ち取ったとして、維持管理できるはずも無く…本当に愚かな者どもである。
結果は圧倒的な戦力差があるはずだったが、第二王子軍は一つの領地に負けた。大敗であった。戦力差なんか無にするほど、情け容赦の無い戦略、一騎当千の側近達。群VS個で個が勝ってしまう理不尽さ。
「領内にすら入れなかったそうですよ」
戦にもならなかった蹂躙劇を見てきたアルフレッドが語った。
「領地境に結界が張り巡らされ、アルメリア公爵領に害意、悪意、殺意を持つ者は、アルメリア公爵領の領内に入れないようになっていました」
「そんな広い範囲の結界なんて可能なんですか?」
第一王子派閥の貴族が訊いた。
「可能です。大容量の魔力持ちが、5名以上確認されています」
聖者、聖女、身食いが二人に、メルリスが目を付けた二人…そこに勇者パーティーまでいた。桁違いの戦力である。
「敵対したら、この国は存続出来ないでしょう」
第一王子ががっくりと肩を落とした。狙っていたアイリスに、付けいる隙が無かったらしい。
「反乱軍に戦勝したあの領地に褒賞を出そうと思います。絶え間ない努力の末、あのような豊かで強い領地にした褒美です」
愚か者の第二王子達を反乱軍と位置づけた第一王子。これで、愚かな貴族が減り、多少は国政もよくなるだろうが…
---ケン---
ここにケンカを売った隣接する貴族達の領地は、この地に併合されることになった。
「領地が広くなった分、色々面倒ねぇ」
アイリスは不満顔である。
「行政区だけ引っ越すか?どこか、ノンビリ出来そうな土地にさぁ」
「魅力的な提案だけど、現実的じゃないわね」
俺に笑顔を向けてきたアイリス。
「領民を捨てて行くことは出来ない。私達だけ、苦労を捨てることは出来ないわ」
アイリスらしい回答である。
「じゃ、俺は俺らしく、傍にいるよ」
「うん。これからもよろしくね、あなた…」
今日だけは平和を満喫するか。問題はまだまだ山積みだし。