---シズカ---
第一王子に連れて行かれた先は、王子専用の後宮、要するに王になった時の為の大奥である。聖女として召喚したんじゃないの?まさか、王子のハーレムメンバーを集める為なのか?
「王位を継いだら、優秀な女性達は、私の側がよく似合うだろ?」
あの…趣味で無いんですが…話して愉しく無い男性はノーサンキューである。見た目は二の次で、本質が大事なのに…
大奥に来ての初夜…王子と二人きり、彼に習った護身術で王子の意識を刈り取った。
---ケン---
地図の存在は偉大である。迷う事無く冒険者ギルドに辿り着いた。冒険者になると自分のステイタスが見られる様になった。ギルドカードという身分証明書に自分のステイタスが随時表示出来る。これからは、ギルドで売っているスクロールを買うことでスキルが覚えられるらしい。アイリスの館で鍛えて貰ったおかげで剣術のスキルは既にあったけども。
予算に合うだけスクロールを買い込む。あると便利な錬成術、覚えてて良かった浄化術、戦闘の必需品の回復術、治癒術、修復術などなど…
冒険者ランクはFからスタートだそうだ。魔物に出会ったら、討伐証明部位と魔石を回収すると、ギルドでお金になるそうだ。で、死体から魔石を取るまでに肉などを切り分けると、食べられるんだとか。間違って魔石を先に取り除くと、魔物の身体は魔素に分解されると言う。
まぁ、Fランクだから、スライムとかゴブリンしか討伐は出来ないけど…
カタリナではないが、手に職をと思い、冒険者ギルドでのバイトも始めた。解体や調理、事務仕事など…ヒーラーが居ない時などは、ヒーラーの代わりを務めたり。
薬草を集めるクエストをして、バイトで回復薬を作ると、二度美味しい。冒険者収入とバイト代が貰えるし。
「お前の作るポーションの効き目が良いらしいぞ」
ギルドマスターに告げられた。手順通りに作っているはずなんだけど…
「お前のに当たったヤツはラッキーだな」
ポーションの瓶には誰が作ったのかが判る印などは無い。ギルドの売店に俺の作ったのも先輩達の分と並んでいるのだ。
◇
ギルドでの一日…朝起きて身支度をしてから、ギルド内の清掃。浄化術で一撃で終わる楽な作業である。次に厨房に向かい、今日の分の食材のチェックをして、材料の下処理をした後に、朝飯プラスギルド特製?謹製?の青汁をジョッキで飲み、朝飯。様々な薬草、毒草が微妙なバランスで混ざっているそうだ。効能は状態異常の耐性の強化、最大HP及び最大MPの引き上げ、スタミナのアップらしいが、初めて飲んだとき、嘔吐プラス下痢で弱体化しまくっていた。これって新人虐めでは無いのだろうか?
午前中は収集クエストなどを熟し、午後からは事務仕事や解体などの雑用を熟して、夜食を食べて就寝である。
半年勤め上げた頃、無属性魔法を覚えていた。スクロールを買った覚えは無い。もしかして、あの青汁のおかげか?無属性とは火、風、水、土の基本4種、光、闇、聖、魔の特殊4種以外の属性で、時間や空間などに関係する属性である。転移や無限容量のアイテムボックスなどがある、ラノベでよく見かけるアレである。
休日、久しぶりの里帰り、アイリスの館まで転移してみた。
「お帰り…」
カタリナが俺の姿を見かけると、ダッシュしてのタックルをしてきた。
「ただいま。明日には出るけどね」
「おぉ~、ケンの臭い…」
クンクンと俺を嗅ぐカタリナ。コイツ、臭いフェチだっけ?俺、そんなに臭いか?浄化魔法を掛けてみる。
「お帰りなさい」
アイリスは貴族令嬢らしい振る舞いで近寄って来た。目の下に隈…デスマーチな勤務時間か?回復術と治癒術を掛けて上げる。
「えっ!ヒーラーなの?」
急に楽になったのか、驚いているアイリス。
「まだ、修行中だよ。よし、屋敷内のヤツラ全員を癒やしてやろう」
屋敷内だけのはずだったのだが、役場の領官達にも施すことに…当然なのだが、MPの使い過ぎでのマインドロスでダウンだよ。俺はどこぞのチーターのようには無尽蔵にMPを使えないんだぞ…
翌朝、目が醒めると両脇には、産まれたままの姿のアイリスとカタリナが満足そうな表情で添い寝していた。
◇
冒険者ギルドのネットワークで調べたが、俺を召喚した国が見つからない。ギルドマスターによると、冒険者ギルドが無い国の情報は入って来ないらしい。そして、この世界には冒険者ギルドの無い国が多いらしい。理由は簡単で、国の指示系統に入らない戦力は要らない王国が多いんだとか。クーデター防止らしい。昔、民意の不満を受けて、王国に牙を剥いた冒険者達。その結果、王国は共和国となり…同じ轍は踏みたくない王国が多いのだろう。
後、考えられる理由…この世界では表面上異世界召喚はタブーらしい。なので、行っても国外に情報は漏らさないそうだ。
おい!見つけられないぞ!!不満爆発同時に、閃きが舞い降りて来た。そうか!冒険者ギルドがなく、聖女がいる国を目指せば良いのかな?って、どこだ?
「おい、ケン。出張だ。アインズヘイルの錬金術師ギルドに行ってくれ」
ギルドマスターからの出張命令が下された。
「そこは冒険者ギルドは無い?聖女はいる?」
「冒険者ギルドがあるから、出張の指示が出たんだよ」
呆れた声のギルドマスター。その国もハズレだな。
「アインズヘイルの錬金術師ギルドでポーションを作って来い。これ、推薦状だ」
効果の高いポーションを作れる者を募集しているそうだ。行ったことの無い場所には転移出来ないし、短距離転移で向かうか。交通費の節約の為に。スクロールを買うには金が必要である。今、狙っているのは鑑定術、検索術である。用途が広い為、価格が少し高めであるのだ。
◇
翌日、あの青汁と朝飯を食して、出張?移転?先へと移動を開始した。短距離転移は目で見える範囲に転移が出来る。山が見えれば、山まで一気に。転移先は障害物の無い地面限定である。いきなり岩の上や木の上には転移はしないので安心である。
なのに転移した先は地面では無く、何か柔らかい。あれ?
「短距離転移かな?」
男の声、振り向くと俺と同じくらい男児がいた。騎士か?鎧を着込んでいるし。
「そろそろ退いて上げて欲しい」
退く?下を見ると、ネコ耳少女が、恥ずかしそうに俯いていた。あぁ、ネコ耳少女と同じ座標に転移したようで、押し倒したようだ。
「すまない」
「うっ…」
ネコ耳少女に手を貸し起き上がらせた。これはラッキースケベなのか?
「なぁ、アインズヘイルって、こっちでいいのか?」
男子に訊いてみた。
「もしかして、君は転生者なのか?」
「いや、召喚されたんだ。そうだ、冒険者ギルドがなくて、聖女のいる国って知っているか?」
「まさか、あそこの聖女召喚に巻き込まれたのか?」
「かな?」
コイツ、知っているみたいだ。
「で、アインズヘイルには何の用だ?」
男1女4のパーティーぽい。ネコ耳少女以外の者の手が得物に伸びていく。コイツら敵か?短距離強奪を発動して、敵から或る物を奪い取る。短距離強奪は目に入る対象物から、想像した物を奪い取るスキルである。いつか、距離無制限を取得し、どこかにいる静と萌を強奪して、この手で抱き締めようと思っている。
俺が奪った為、敵の女性陣が悲鳴を上げてしゃがみ込んだ。男子は仲間に視線を向けた隙に、ヤツの背後に短距離転移して、サブミッションホールドを極め、動きを封じた。
「お前は、敵ってことでいいんだな?」