カノジョ探しの異世界行   作:もっち~!

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スパイダーシルク

 

---ケン---

 

アイリスが身籠もったから、俺の生活が変わるわけでは無い。産気付く瞬間まで、女王としての仕事を熟すらしい。俺が傍にいても野獣化する恐れが有るものの、役立つことは無いので、前世で出産経験のあるコゼット、ヒールの遣い手のセイが俺の代わりにアイリスの世話をしてくれるそうだ。

 

俺はシロ、マイル、プライドと死の森の開拓にやってきた。アイリスが産後に産休するのだが、ここで産休療養すると言うのだ。公都では仕事が気になってしょうがないらしい。アイリス不在時、アイリス父が代わりに執務をしてくれるそうだ。マンパワー不足の折には、プライドの妹のティアラを貸してくれるそうだ。ディアナ、オリヴィエが文官として側近に入っているので、事務仕事においてマンパワーの不足はあまり無いと思いたい。

 

死の森の館に改良を加えていく。先ずは赤子用の乾燥機能付き洗浄便座。大人用だと便座をすり抜けてしまうので、小さいヤツを被せるようにした。大人用の方には温暖機能も付けてみた。ここら冬は寒いらしいので。周囲を山脈に囲まれ盆地状態なので、留守番役の隼人によると、寒暖差が激しいようだ。

 

畑も徐々に作付けし、田んぼも作っている。これで米と野菜、肉と自給自足出来そうだ。足り無ければ、アイテムボックスから取り出せば済むし。

 

感慨に浸りながら畑を見回していると、シロガネが俺を呼びに来た。何かを見つけたようだ。俺達のパーティーがシロガネの後に付いていくと、白い巨大な繭が数個あり、その中心に黒くて平たい物体があり、まるで黒いザブトンが鎮座しているように見えた。これって、あれだよな?

 

注意深く見ると、身体が二畳ぐらいの正方形に8本の足…間違い無い。アレだ。タランチュラ系か?そうなると、あの繭の中は獲物が入っているのか?こうして見ると、蚕の繭に見えなくも無い。アレを紡げば、シルクが取れるのだろうか。スパイダーシルク…超のつく程の高級品である。

取れるのだろうか。スパイダーシルク…超のつく程の高級品である。

 

目の前の蜘蛛と目が合った気がした。すると蜘蛛はお尻から糸を出し、足を使い器用に何かを作り、俺にプレゼントしてきた。これって、シルクのハンカチか。敵では無いアピールなのか。

 

「分かった。お前の名前はザブトンにする。敵対はしない。だけど、その繭をくれるか?紡ぎたい」

 

「はい?誰が紡ぐんですかぁぁぁ~!」

 

マイルのイヤそうな声。チーターなマイルでしょ。紡ぐのは…いや、俺も手伝うけど…そうだ!マインの母と姉が紡ぐ経験持ちなので、紡ぐ為の道具のアイデアを出して貰い、紡ぎ機を作る事にしよう。

 

ザブトンは繭を俺達の前に差し出してくれた。その数は8個。繭を持ち上げてみると、結構重い。何を入れたんだ?館の作業場に強制転移させておく。

 

館に戻り、謎の樹木を錬成した糸紡ぎ機で、トゥーリ指導の元、みんなで糸を紡いでいく。紡いでいくと…中身の全容が見えて来た。人型の何かが入っている。ゴブリンか?オークか?

 

「これって、人じゃ無い?」

 

マイルの声…俺は即座にセイをこの場に『強奪』した。

 

「どうしたの?緊急事態?って…これって?」

 

「蜘蛛に囚われた人間の皆さんだ。生きている者だけ、ケアを頼む。マイルもだ」

 

8個中三人は息がまだあるようだ。息絶えている5人の死因は蜘蛛による物では無かく、別の魔物による殺戮のようだ。ザブトンは彼らを護る為に、蜘蛛の繭に囲ったのかもしれない。

 

「ねぇ、この服装って、軽装すぎない?」

 

隼人の声。確かに、死の森の探索にしては軽装である。これって、どういうことだ?軽装備の騎士っぽい服装のおっさんと女、そして神殿勤務風の衣装の少女。ここに強制転移されたのか?亡骸達は護衛兵っぽい服装である。

 

「どこの国か、わかるか?」

 

「巫女ぽい服装だから、教皇に聞いてくれば、どうかな?」

 

俺の問いに隼人が反応した。なるほど、教皇か…少女の来ていた物を脱がし、それを持って教皇の間に転移した。

 

その結果ファーレーンという大国の巫女らしいと判明した、首都はウルスと言うらしい。大国と言っても、そこまで領地は広く無さそうで、フリージア王国から近いことも分かった。いざとなれば併合も出来そうだ。

 

「隼人、場所はわかるか?」

 

「たぶん、冒険者ギルド本部から転移で行ける筈だよ」

 

なるほど。じゃ、目覚めるのを待つか。いや、亡骸だけ、冒険者ギルド本部へ届けるか。早速転移した。

 

 

冒険者ギルド本部で、ファーレーンのキナ臭い話を仕入れた。王太子とその上の妾腹の兄、それから三つ下の弟が水面下で継承権争いをしているらしい。今の王家は正室の子供が三人、側室の子供が五人いて、現在王妃が懐妊していて、継承権争いが激化しているらしい。その上、王太子の姉に当たる第二王女が、原因不明の不治の病にかかっていて、正室の子である第五王女が年齢的に巫女姿の少女に近いという。

 

子供が多くて継承権争いって、後宮でもあるのか?有るなら潰しておくか。

 

「どうだった?」

 

死の森の館に戻ると、セイに訊かれた。

 

「ファーレーンの第五王女じゃないかって話だ。一応、いつでも転移出来る様に、近くまで行ってきたよ。プライドの国に近い感じだ。大体馬車で1週間以上だな」

 

「それは遠いって言うのですよ」

 

そうなのか…

 

「まぁ、ここからはエライ遠いわ。ここがハワイ辺りだとすると、中東辺りにある」

 

「なんで、ここに強制転移?」

 

「それも聞いてきた。死の森って、迷い込んだら生きて出られないそうだ。だから、確実に死体を残さない方向で、ここに強制転移させたんじゃ無いかな」

 

「確かに、拠点が無いと、ここで生きられる自信は無いです」

 

と隼人。謎の樹木しか生えない森だしな。食い物にまず困る。そして、水に…俺達は、掘る方法があるから良いが、普通は掘れないだろうな、ここの地盤は…それも3メートルも…

 

 

翌日はマイン、マイン母とトゥーリも連れて死の森の館へ。スパイダーシルクを反物にして貰うのだ。織機は謎の樹木で錬成してある。下手な金属よりも硬い為、謎の樹木オンリーで織機が完成した。薄くすると硬いだけで無く、しなやかさもあるのが良い。バネ類に丁度良い材質である。

 

「で、これで何を作るんですか?」

 

トゥーリに訊かれた。

 

「産まれる子供の産着とかおしめだな」

 

「スパイダーシルクって、高級品ですよ。分かっていますか?」

 

「肌荒れ防止になるだろ?」

 

「それはそうですが…なんか、納得出来ないです。ドレスとか作りたいです」

 

「じゃ、アイリスのを頼む。結構な量の反物ができるだろ?」

 

足り無ければ、ザブトンに繭を作ってもらうし。

 

「このバネ、印刷機に使えませんか?」

 

試作のバネを前にしてマインは、期待感からか機織りの事を忘れている。そうそう、最近、マインとマイルで『日本ふかし話』という童話の絵本を制作し始めた。ペンネームはマイマイだという。エチゴヤ出版から絶賛発売中である。産まれて来る子供に読み聞かせようかな。日本語ベースの絵本で、日本語を学ぶ教材扱いにしたらしい。

売中である。産まれて来る子供に読み聞かせようかな。日本語ベースの絵本で、日本語を学ぶ教材扱いにしたらしい。

 

「ここ…どこですか?」

 

巫女姿だった少女が目覚めた。現在はパジャマを着せてある。

 

「お目覚めですか?ここは死の森ですよ」

 

プライドの言葉に真っ青になる少女。

 

「死の森…まさか…だったら、なんで暮らして居るんですか?」

 

「私達以外、人がいないから」

 

そう、俺達のルールで生きられるように、他の国に干渉されないこの地を、永住の地に選んだ俺。俺のスキルと相性も良いしねぇ。

 

「何者ですか?」

 

「冒険者パーティー『エチゴヤ』、ランクはSよ」

 

「ランクSですか…」

 

ランクSのパーティーはそうそう多くは無い。現在、隼人のパーティーも『エチゴヤ』の一部だ。混乱する少女に、救出してからの話をしてくれたプライド。

 

「フリージア王国の第一王女様ですか…」

 

「えぇ」

 

プライドの身分を聞いて、少し落ち着いた少女。

 

「私はファーレーンの第五王女のエアリスと申します」

 

エアリスの話によれば、神殿へ儀式に向かう途中で、パラライズされての強制転移をさせられて、死の森に来たそうで、ケンタウロスの群れに襲われたそうだ。全身が麻痺状態で騎士も護衛も役に立たず、自分自身に防御の魔法を掛けたところで、ザブトンの繭に囲われたようだった。

 

「あの…謝礼は出しますから、助けてください」

 

アイリスの出産が重ならないといいが…

 

「まだ、3ヶ月くらい安心ですよ」

 

と、マイル。なら、助けて上げられるかな?

 

「いざとなったら占領すれば良いんですよ」

 

と、胸を張って言い切るマイン。簡単に言うなよ。占領後が大変なんだからな。自慢じゃないが俺に統治は無理だからな。

 

 

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