カノジョ探しの異世界行   作:もっち~!

47 / 122
リーシェの憂鬱

---クレア・カゲノー---

 

臭い…何の拷問だ?手足を拘束され、臭い液体に漬けられている。その臭い液体は、口の中に滴下されているし。文句を言うと、頭から臭い液体を掛けられるし…

 

隣のバスタブには銀髪のエルフが浸かっていた。どんなプレイなんだ?これ…

 

「だいぶ良くなってきたわね。もう少しで退院できるわよ」

 

巡回に来た優しそうな女性がそう告げてきた。私は病気じゃない。誘拐犯であるオルバ子爵から救い出してくれたのはありがたいが、この仕打ちは納得出来ない。

 

「ここはどこ?」

 

「う~ん、なんて言えば良いのかな。死の森にあるアルメリア公国王配の別邸って言えば良いのかな?」

 

アルメリア公国って、周辺の国々を併合している大国だっけ?その王配の別邸?

 

「まさか…王配のハーレム?」

 

「それはちょっと違うかな。女王様も聖女様もいるから…」

 

へ?聖女すらハーレム要員なの…まさか、この臭い液体は媚薬なのかな…

 

 

 

---ケン---

 

ディアボロスの呪い、英雄の子孫、そして……悪魔憑きの真実。オルバ子爵邸から押収した資料に書かれていたキーワードである。身食いの症状なんだけど…悪魔なんか憑いていなかった。呪いも掛かっていなかった。英雄の子孫かどうかは身食いに関係は無いし。あの資料を作ったヤツは厨二病なのだろうか?

 

「どう思う、隼人」

 

「身食いに関してはケンさんの方が専門家ですよね。問題は彼女が狙われた理由ですよね。地下飼育が濃厚じゃないですか?」

 

俺もそう思うが、あの子爵は性的な行為目的では無いと言っていた。

 

「供述調書と資料を冒険者ギルド本部に丸投げするか。俺達は名探偵では無いからな」

 

「ですよね」

 

隼人は勇者で俺は錬成士だしなぁ。

 

 

アルファとベータは出先で身食いを見つけると、俺に知らせ、保護を求めてくる。おかげで、ガンマ、デルタ、イプシロン、ニュー、ラムダと7名もの記憶喪失少女達が、戦力に加わった。ガンマ以外、アイリス母のブートキャンプの卒業生の為、そこそこ強い。

 

唯一卒業出来なかったガンマは藍色の髪に深い青い瞳のエルフの女性で、頭脳労働系のようだ。現在、ミツゴシ商会を設立し、商会長に収まっている。これでアルメリア公国には、チョコレート菓子のアズータ商会、健康系グッズのエチゴヤ、そしてミツゴシ商会という三つの商会の本店を公都に揃えた。尚、ミツゴシ商会では、死の森産の商品を扱って貰う事にした。棲み分けは大事であるからね。

 

尚、イプシロンは表の顔はピアニストで、隼人パーティーの楽師であるバイオリン弾きのアランと共に演奏行脚をしつつ、各地での情報収集活動もしているらしい。

 

 

 

---リーシェ・イルムガルド・ヴェルツナー---

 

現在、七周目の人生ループを経験中である。毎回、王太子の婚約者になり、夜会で婚約破棄イベントが起こり、家に居られなくなり、5年後に死ぬ人生だった。商人、薬師、侍女、男装騎士などの人生を経ても、すべての死因が同じで、最悪最低の最凶外道魔王であるフリージア王国の女王プライド・ロイヤル・アイビーが起こす世界大戦に巻き込まれてだ。今回は今までの人生とは違うイレギュラーな要因を見つけた。アルメリア公国である。今までの人生には無かった国で、元々は公爵領だったらしいが、富国強兵な領で、独立戦争に勝利し、周辺の国を次々と併合、今や大国にのし上がっていた。もし、この国の国民になれば…生き残れるのでは。

 

毎回起きる夜会での婚約破棄イベントをパスし、荷物をまとめて、アルメリア公国へと旅立った。旅費は冒険者となり、冒険者ギルドでの依頼で稼ぎ、冒険者としてのランクも上げていく。今までの人生で得たスキルや魔法などが、今回は有効なことが役立っている。今までとは違う運命を感じる。今度こそ、長生きしてやるんだ。

 

アルメリア公国は遠かった。船を乗り継ぎ、漸く公国内に入れた。国境から公都までが遠い。国境の町は港町であったのだが、賑わっていた。田園風景地帯を馬で駆け、長かったゴールである公都へと着いた。

 

そこは高い防御壁で囲まれた街で、見た事の無い高い建物が理路整然と並ぶ町並みであった。この街では金貨などのコインは使えず、紙幣と言う紙のお金のみ使えるそうで、街に入ると門の隣に両替商が並んでいた。交換するコインの発行した国別になっているそうだ。

 

見る物、聞く事の総てが珍しい。特に食べ物が美味しく、見た事のない料理の屋台が並んでいた。この世の楽園と呼ばれているアルメリア公国の公都、その理由が分かった気になっていた。

 

仕事を得る為に冒険者ギルドを目指す。この街には冒険者ギルド本部があるそうで、公都と行政区を繋ぐ道沿いにあるそうで、一旦、公都を出て冒険者ギルド本部へと…えっ?商業ギルド本部もあるんだ。錬金術師ギルド本部も…世界の中心か、ここは…うん?銀行って、なんだろうか?

 

お上りさん状態で冒険者ギルド本部に着き、求人情報に目を通した。

 

『王配別邸の住み込みメイド募集 衣食住支給、月金貨1枚』

 

とある。衣食住支給で月に金貨1枚って、高待遇じゃないか。王配の別邸なら、生き残る可能性も高まりそうだ。行政区で応募しているようなので、応募をしてみる。

 

 

即決された。こんなにも高待遇なのに、なり手がいないらしい。なんで?イヤな予感がするが、即決された以上、断れない。

 

「じゃ、行きましょう」

 

私よりも歳下の少女が近寄り、私に触れると目の前の風景が一瞬で切り替わった。これって、転移術かな。探査スキルで周囲に危険生物がいることを感じている。そこは森の中で、見た事のない様式の建物が一棟が、ポツンと建っていた。ここって、どこ?

 

「紹介しますね。番犬のシロガネとクロです。あっちはこの森の主のザブトンです」

 

番犬?どう見てもフェンリルとケルベロスに見える。それにアレって災害級の蜘蛛じゃないのか?これなら、あのプライドが攻めて来ても、生き残れるかな。

 

「さぁ、屋敷の中に」

 

屋敷の中に入ったのだが、なんか来ちゃいけない場所に来た気分である。あの人って、一騎当千な剣姫のメルリス・レゼ・アルメリアじゃ無いのか?あっ!アルメリア公国だものね。そりゃ、いるか…そして、会いたくない人までいるよ。なんでここに、最悪最低の最凶外道魔王であるフリージア王国の女王プライド・ロイヤル・アイビーがいるんだ。

 

説明を訊くとメルリスは公国女王の母親で、プライドは王配の婚約者らしい。そうなると外道魔王は外道魔王にならないってことか?私が殺され続けたプライドは独身だったし。

 

「この子は新人さん?じゃ、ブートキャンプの参加者ねぇ」

 

笑顔のメルリス。ブートキャンプって、なんだろうか?イヤな予感しかしない。

 

こうして私は、5年後に死ぬ運命から逃れ、メルリスと言う鬼軍曹の元で地獄の日々を送ることになった。

 

 

 

---クレア・カゲノー---

 

身食いって病気だったらしい。病状が安定したらしく、一般病棟に移る事が出来た。この病の怖いところは、完治することが難しく、今後年1回の検診が必要らしい。そして再発すると、あの拷問と呼べる治療を受けることなるそうだ。

 

「この青汁を毎食後に飲ませてください。量はジョッキ1杯が良いのですが、味が…まぁ、ティーカップなら3杯くらい飲ませてやってください」

 

見舞いに来た父親に主治医が説明していた。あの液体を毎食後に適量飲まないと再発する危険性が高いらしい。ここは、信者数世界最大の宗教の教皇公認で、世界唯一の身食いの治療施設らしい。

 

「この臭い…これを飲ませるのですか?」

 

臭いに既にヤラれている父親。

 

「現状は、これしか進行を遅らせる薬は無いです。冒険者ギルドで販売されているので、怪しい液体では無いですが…」

 

怪しくは無いが、この臭いは無いでしょう。うら若き乙女が常飲する液体では無いと思う。飲んだ後、数時間は吐いた息で私も周囲の者もヤラれるし。

 

「まぁ臭いは慣れですよ。ここに住んでいる者の殆どが常飲していますし」

 

ここの住民は、きっと鼻が壊れているのだろう。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。