---ケン---
新人の戦闘メイドは知識が豊富で良い。名前は…なんだっけかな。ぇぇっと…そうそう、リーシェ・イルムガルド・ヴェルツナだ。アイリス母のブートキャンプに付いてこれるらしく。中々有望な新人である。元々公爵令嬢で、悪役令嬢界ではテンプレの婚約破棄イベントから逃げて来たそうだ。その為、礼儀やマナーが完璧である。パーティー『エチゴヤ』に参加させることにした。
で、リーシェの薬師としての知識により、謎の樹木の正体が判明した。なんと、世界樹…ユグドラシルだと言う。
「だから、禁則事項で鑑定出来なかったんですね」
と納得顔のマイル。世界樹と言えば、万能薬の原料である。葉を煎じて飲むだけで万能薬になるそうだ。この万能薬は無味無臭で、これではエリクサーもどきの立つ瀬が無い。
「蘇生まで出来る万能薬だけど、身食いには効果無さそうですよ」
とセイ。魔力留が出来はじめたマインに飲ませたが解消することは無く、エリクサーもどきを飲ませると解消したそうだ。
エリクサーもどきに世界樹の葉の成分を添加することで、完全万能薬、エリクサーもどき最新バージョンになった。今回の目玉は、死んで直ぐなら生き返ることである。たぶん、初七日までは魂は器回りに漂っているはずなので、死んでから七日以内なら蘇生は出来るはずである。まぁ、試さないけど…いや試したよ。試したんだけど、蘇生すると魂の色が汚れるのだ。汚れた魂は地獄行き決定なので、なるべく蘇生はしない方向で運用しようと思う。
◇
また教皇から指名依頼が入った。身食いらしい患者を救って欲しいと言う依頼である。患者のいるサンディス王国の離宮に向かった俺達。
そして今、目の前には、乙女ゲー『君に恋して』の悪役令嬢のアルベルティーナ・フォン・ラティッチェがいる。現在は王家の養女となりアルベルティーナ・フォン・サンディスと名前が変わったそうであるが、確実に転生した日本人であろう。意識は無い。体内には魔力留が出来ている。身食いの末期症状のようだ。エルフなどの亜人であれば身体が腫れていくいくのだろうが、人間である以上、次の発作が生死の分かれ目であろう。
「治りますか」
彼女の主治医に訊かれた。
「たぶん、治ると思いますが、ここでは治療は出来ません」
「どうしてですか?」
どうしてって…あの臭いを王城に充満させていいのか?見た目が拷問な治療を王城内で出来ないと思う。きっとクレームの嵐だろうに。
「我々の治療施設で無いと無理です」
あの青汁専用のバスタブが無いと無理だな。ここまで酷いと、意識が戻るまで青汁に漬け込まないとなぁ。それに万が一の場合、門外不出にした万能薬があるから、死んでも安心だし。
「そこをなんとか…」
「無理です。診察は終わりました。彼女をピックアップさせる気が無いなら、もう帰りたいんですがね」
もう1件指名依頼が入っている。この国の隣国であるゴユラン国を殲滅し、アルメリア公国領にしてくれと言う依頼である。
ゴユラン国はメインの産業が奴隷業と言うダークな国家らしい。王家は酒池肉林状態で王位継承権で血生臭い状況が続いている上、不老不死を求めて回復、治癒、蘇生、魂の輪廻、ありとあらゆる死を克服する研究しているらしい。全く以て教皇的にはアウトの国家で、冒険者ギルド本部としてもアウト判定だそうだ。なので、潰してくれと…ゴユラン国の蓄えている古代の魔導具や研究資料や財宝を総て報酬として良いと言う好条件だったので、その依頼を受けた。
「国王と相談してみます」
「じゃ、1週間後にまた立ち寄りますよ」
離宮から立ち去り、その足で、ゴユラン国に侵攻したクラン『エチゴヤ』。開戦1時間ほどで制圧完了である。1週間掛けて報酬の精査と、国政の仕組みの改善、現地での有能な人材の確保をして、飛び地運営の下準備をしておく。
◇
1週間後、サンディス王国の玉間で国王との謁見に臨んだ。
「なんだって…ゴユラン国が消えて、アルメリア公国領ゴユラン市になったと言うのですか?」
目が点になっている国王。
「聖シュルール協和国と冒険者ギルド本部からの要請で、アルメリア公国領としました」
「…」
「で、アルベルティーナ・フォン・サンディスの件はどうされますか?こちらはどちらでも構いません。まぁ、このまま死なせて上げるのも良いんじゃないですか?聞けば、嫌がる彼女を無理矢理王家の養女にしたようですし」
「断れば、この国も落とすのですな?」
「飛び地運営は面倒です。敵対しない限りは、落としませんよ。落とされたいなら、そうですね30分貰えれば、落としますけど」
仲間を避難させて、王城内で『畏怖』すれば、簡単に王城は落ちると思う。
「お前は魔王か?」
「俺を魔王認定すると聖シュルール協和国、アルメリア公国、フリージア王国が敵対行動に出ますが、覚悟は出来ていますか?」
教皇に聖者認定されているのに、この国独自に魔王認定すれば、それこそ宗教戦争が勃発である。
「うっ…」
「今の国王の言葉を聞かなかったことにしてあげますよ。慰謝料としてアルベルティーナを頂きます」
「ち、ちょっと待て!」
待てと命令?待つ訳無いだろ?こっちは譲歩しているんだからな。救える命は救いたいので、アルベルティーナをお持ち帰りにして、死の森に帰る俺達。
連れ帰ったアルベルティーナを全裸にしてバスタブに入れ、青汁に漬け込んだ。口からユグドラシル入りのエリクサーもどきを飲ませていく。
「魔力留が解消していきます」
風魔法で臭い除けをしながら、鑑定をしているマイルの声は弾んでいる。これで身食いの特効薬が出来たかな?治療と並行して、リーシェ、マイン、ソフィアにはゴユランから持って来た資料を読み込んで貰い、内容をまとめて貰っている。身食い関連があれば、御の字だな。
---クレア・カゲノー---
一般病棟に移り、体力回復プログラムとしてブートキャンプに参加させられている。なんだ、これは…参加者のほとんどが私よりも強い。油断すると殺されかける。
「瀕死なら大丈夫だから、死なないようにね」
パーフェクトヒール持ちがいるらしい。神官の最高魔法じゃ無いのか、それって…ここって、病院じゃ無いの?祖国では騎士団にスカウトされる位の剣技を持っているのだが、ここでは赤子同然に扱われている。なんで、みんな…いや、皆様はそんなにお強いのですか?
「ほとんどがSランクの冒険者よ。近衛程度じゃ勝ち目は無いわ。いい?一騎当千になりなさい」
無茶なぁ…この病院はどこの国と戦っているんだ?世界地理学で習った戦ってはいけない国、聖シュルール協和国、アルメリア公国、フリージア王国って習ったけど、その辺りと戦うのか?無理だって…早く、退院しないと、兵役を課せられそうだ。そう思って、焦っていましたが…
退院の日に知ったこと…この病院を運営しているのはアルメリア公国で、後ろ盾は聖シュルール協和国…私のブートキャンプの相棒はフリージア王国の次期王女だった。
魔導具…そう、あの人に繋がる伏線…