---ケン---
別邸にある非売品の魔導具を見て、調べているダリヤ。現在、温風乾燥付き洗浄便座の水洗トイレに釘付け状態である。あれを魔導具と言っていいのだろうか?まぁ、魔力が無いと洗浄出来ないし、水洗で出した物を流せないけど。魔力無しの者の為に、魔力の充填装置が取り付けてあり、魔力のある者が魔力を充填させる決まりになっている。
次に興味を持ったのが、風呂場に置いてあるシャンプーと液体石けんと、その容器である。魔導具では無いんだけど…
「これって、魔導具では無いんですか?」
「そうだよ。錬成で作ってあるんだ。だから、量産は出来ないから、非売品だよ」
行政区で働く者には分けているけど…
「錬成術ですか。便利ですね」
便利である。単一の物質であれば、想像したイメージ通りに錬成出来るし。錬金術で合成した物質であれば、単一の物質と見なされて、錬成の対象にもなるし。
現在、錬成士は俺とマイルの他、身食い対象者であるマイン達である。身食い対象者達は魔力が溢れないように毎日一定量以上放出しないといけないので、錬成術を教え、毎日何かしらを錬成させていた。主に世界樹の端材で錬成するフィギュア人形であるけど…フィギュア職人モードのマイルは関節部分に球体関節を組み込み、可動できるようにしていたり…
いので、錬成術を教え、毎日何かしらを錬成させていた。主に世界樹の端材で錬成するフィギュア人形であるけど…フィギュア職人モードのマイルは関節部分に球体関節を組み込み、可動できるようにしていたり…
「魔力が少ないけど、魔力量を増やせば、錬成術を教えてもいいぞ」
「お願いします」
商業ギルドで見た時は暗い女性であったが、今ではコゼット、セイと仲良くなり、笑顔で生活している。前世の年齢の関係で、成人前だったマイル、マインとは世代が違うらしく、話題が合わないらしい。前世の年齢的にはセイに近いようなことを言っていたかな。女性に年齢を訊くのはタブーなので、詳しくは分からないけど。
---イルマ・ヌヴォラーリ---
ダリヤと手紙をやりとりをして、アルメリア公国への移住を決めた。亭主の転職先を確保してくれたそうで、夫婦二人でアルメリア公国へと旅立った。船を乗り継ぎ約1ヶ月…漸くアルメリア公国の土を踏めた。ここからは馬車で2週間かぁ。
やっと着いた公都は、どこかのお城かって感じの防壁が高くそびえ立っていた。
「あれは壁でなくて、集合住宅なのよ」
と、ダリヤが教えてくれた。街の中の建物はデカイものばかり。こんな都市は見た事が無い。
「今日は王都の宿を予約してあるの。疲れただろうから、今日は休んでね」
街は中心へ向かう程に、建物の高さが低くなっていき、中心部は広場になっていた。その広場に面した通りに、
「ここが私のお店…ロセッティ商会よ。上の階の空き店舗がイルマのお店になるの」
お店を用意してくれていた。
「ありがとう…ダリヤ…」
「うぅん、イルマ、いつもありがとう。何も言わずに立ち去ったお詫びだから…」
ダリヤは笑みを浮かべて、そう言った。あの町では、こんな風な笑顔は見る事が減っていたのに。
「ねぇ、幸せ?」
「とっても。いい上司に巡り会えたし。魔導具を切磋琢磨して作っているの」
ダリヤはどこかの商会から独立したそうだ。
「その上司には会える?」
幼なじみとして挨拶をしたい。
「昼間は難しいかな。世界中を飛び廻っているっから」
その上司は世界を股に掛ける商人なのか?
---ケン---
セイが女の子を産んだ。名前はリーアだそうだ。既に決めてあったらしい。
「この子が聖女だったら、次期教皇の座をプレゼントしよう」
この聖女は、娘に重責をパスするようだ。で、出産リレーが途切れたと思ったら、ディアナの妊娠が発覚した。
「間違いなく、あなたの子供よ」
とセイ。えぇ~、やった覚えが無いんだが…最近、野獣化していないはずだぞ。なんか納得できなくて…久しぶりの散歩に出た。マイルと共に…
「父親になった実感がまるで無いんだけど…」
「そうですか?私もマインもケンさんのことを父親のように慕っていますよ」
「実年齢は変わらないはずだけど…」
ちょっとショックだな。せめて兄と思ってくれると嬉しいのだが。
「ケンさん、歳を誤魔化していたり…」
いや、まだ高校生のはずだ。召喚前の世界でならば、子供が居ることは無かっただろうに。
「あれ?川に浮いているのって、人では?」
マイルの指差した先には谷があり、底を川が流れているのだが、マネキンのような物が浮いている。咄嗟に『強奪』で、ソレを引き寄せた。
「全裸の女性…息は無い…脈も触れていない…」
門外不出のアレを取り出し飲ませてみる。
「ぐふっ!」
あまりの臭さでむせたようだが、呼吸が再開したようだ。全身を見ると擦り傷、切り傷が無数にある。エリクサーもどきを頭から掛け流し、三人で別邸に転移した。
---アナスタジア・シャデラン---
小さい頃から、私は母親の着せ替え人形だった。まるで生きているみたいねぇと、私の髪に櫛を入れる母親、生きているみたいじゃなくて、生きているんだよ!
私には妹がいたが、母親の目には妹が入っていないようで、私だけを着せ替え人形としてかわいがっていた。
結婚適齢期になると、両親は私の嫁ぎ先探しに躍起になっていた。少しでも良い家柄で、相手の性格、年齢は問わないらしい。嫁ぐのは私なのに、私には選択の自由は無いそうだ。部屋に閉じ込められ、日焼けすることを禁じられ、不自由極まりない生活を強いられた。
妹マリーは幼い頃から、馬車馬のように働かされていた。父親の代わりに商売相手と交渉したり、重い荷物を運んだり…私達姉妹には自由がなかった。人間として扱われていないのかもしれない。
嫁ぎ先が決まり馬車で送り出されたのだが、馬車の御者に襲われた。ドレスを斬り刻まれ、私から衣服を剥ぎ取っていく。服飾職人になりたかった私は、裁縫道具を身に付けていた。ハサミで御者の男を威嚇し、身が汚れる前に自ら谷へと身を投げた…
◇
柔らかい物に包まれている。はっとして、目覚めると知らない部屋にいた。フワフワの布団に包まれていた。私の物では無いネグリジェを着ている。ここはどこ?
「君をスカウトしたい。服飾職人なんだろ?」
知らない男性が現れ、そんなことを言う。服飾職人になることは夢である。その服飾職人としてスカウトされている。戸惑う私。
「ここはどこですか?」
夢なら醒めないで…お願い…
「ここはアルメリア公国の別邸だよ」
アルメリア公国?どこ、それ…
「日課の散歩をしていたら、川に浮いていた君を見つけて、保護したんだよ」
そうだ!襲われて、川に身投げしたんだ。
「仕事については、トゥーリ。君が教えてやってくれ」
「トゥーリです、宜しくね」
可愛らし女性が、そう私に告げた。