---ケン---
アナスタジアはプライド向けの男装衣装を何点かデザインしていた。向こうの世界的に言えば、ヅカ好きってことになるのか?
「プライドさんは男装も女装も似合いますね。デザインのしがいがあります」
「そうか…女装って言われると、妙な気分になるけど…」
プライドとティアラとの新郎新婦デザイン画は、ティアラとアイリス母が取り合いをしていた。それはそれで絵になるデザイン画であった。
「針子仕事はどうだ?」
「トゥーリさんに習っています。デザインから裁断に持ち込む勉強中です」
どう裁断すれば、生地の無駄が少なくて済むかが難しいらしい。趣味ならば気にしなくて良いが、商売だから無駄は少ない方が儲けが出るのだ。
「まぁ、時間はある。無理のない範囲でがんばれ」
「ありがとうございます」
生地が別邸ではスパイダーシルクしか無い。綿花とか羊毛も手に入れた方がいいかな。行政区にある植物研究所でセイが綿花の改良をしているそうだ。羊毛は…牧場を作らないとダメだな。アルベルティーナの領民に頼むかな。
セイを訪ねて来たエリザベス・アシュレイは、この国に亡命した。元スランタニア王国は貴族制度を無くし共和国になったせいで、貴族であるエリザベスの生活が苦しいらしい。貴族がいきなり平民並の生活水準って、拷問レベルらしい。贅沢三昧が出来ないし。現在、エリザベスはセイの秘書官になっていた。
ここ、アルメリア公国でも貴族制は廃止の方向で、爵位から部長、課長、係長など、役職制に意向中である。国内全戸常備政策の切り札である温風乾燥お尻洗浄便座などにより、生活レベルは、以前より向上しているせいか、元貴族からも不平は出ていない。
◇
日課の散歩…マイルと共に。今日の散歩はダリヤの住んでいた王都周辺である。新しい魔物や植物、食材があると嬉しいのだが。王都の周辺には森があり、そこを探索することにした。森と言えば魔物とキノコだよね。道沿いを進んでいくと河原に出た。川魚もいいなぁ。川海老いないかな。
川海老を探していると藪の方からガサゴソと音がした。俺とマイルは咄嗟に臨戦態勢を取ると、
「……やっと、道……」
藪から遭難者が出てきた男性が一名。なんか血まみれなんですけど…
「あれって、魔物の血みたいですよ」
マイルが鑑定をしてくれた。返り血だったみたいだ。
「……み、水……もらえ…な…?」
マイルがウォーターボールを遭難者の口に打ち込んだ。
「……生き返った……ありがとう……」
男はその場に倒れ込んだ。ここに放置しておくと、後味が悪いので、遭難者を商業ギルド支部へ強制転移させておいた。あそこなら誰か助けてくれるでしょう。さて、散歩を続けるか。
---カロリーナ・サンチェス---
我が家は代々優秀な人材を輩出してきた名家である。なのに私は…見た目も中身も只の凡人であった。対して姉のフローラは才色兼備の上、聖女としての才能があった。見比べられれば、私はポンコツに見えるだろう。
そんな私にある話が舞い込んだ。
「聖シュルール協和国の教皇様より、そなたを侍女として雇いたいと申し入れがあった。これは名誉なことだぞ」
と、王様。名誉なのは国であって、私では無い。教皇様に人材を送り出したとなれば、国にとっては名誉なことであろう。
「ゆくゆくは次期教皇様の愛人と言うことになるかもしれない」
それは、我が家にとっての名誉か?
そして、私は国と家によって、教皇様へと売られた。
◇
教皇様の使いの者と教皇様の元へ。
「ケン、どう?この子なのよ」
「確かに聖属性だな。魔力制御が出来ていないのか駄々漏れなのが気になるが…」
教皇様と男性が私について話をしている。彼が次期教皇様なのだろうか。
「魔力制御できれば素晴らしいでしょ?」
「あぁ、次期教皇も夢では無いな。もし、この子が次期教皇になれば、俺達はお役御免でいいよな?」
へ?次期教皇の座?私が…何かの間違いでは無いのか?
「それは彼女しだい。現状の候補はセイとケン、あとリーナちゃんだからね」
「じゃ、コイツを一人前の聖女にすれば、俺達はお役御免でいいよな?」
「聖女と教皇は別物よ」
「じゃ、行くぞ」
男性が私の肩に手を乗せると、目の前の風景が一瞬で変わった。教皇様の部屋であったのに、森の中にいた。
「今日から、この家で暮らしてもらう。聖女見習いとしてな。現在、ここには聖女が二名、見習いが一名いるから、一緒に研鑽をしろよ」
家の中に連れ込まれた。へ?玄関では靴を脱げって?ここって、どこの様式の建物なんだ?