---ケン---
元スランタニア王国の国民に歓迎されたグラナド辺境伯。税金を低くし、商業の復興に力を入れたようだ。奪い取らなかった元スランタニア王国の国民達は、グラナド辺境伯領への併合を望み、スランタニア共和国は辺境伯領に総て飲み込まれた。生き残った貴族だけでは国政は回せなく、国民に負担ばかりを掛けていたようだ。
このことにより、周辺国がフリージア王国を警戒することになった。大国の静かなる侵攻に恐怖を抱いたのかもしれない。未来予知が出来るティアラとプライド母が、悪い未来を見たら知らせてくれるだろう。その時は改革に協力しようっと。
そして王家の瞳問題…解決した筈なのに、アルベルティーナの母方の祖父が問題を蒸し返していた。孫娘を帰せと密偵を多数、アルメリア公国に送り込んで来ていた。そもそもコイツが、アルベルティーナを王家に差し出した張本人だろうが…だけど、どの密偵も国境上に展開している結界を知らずに踏み入れ、痛い目に遭っていた。この国とこの国の住民への害意、悪意、殺意を抱く者は、誰一人国境を越えられないのだから。
だが、肝心の爺、ガンダルフ・フォン・フォルトゥナは国境を越えてきた。孫娘に対して、害意とか悪意とか思っていないようだった。アルベルティーナを別邸に回収して、様子を見ていると、公都の家々に無断で上がり込みアルベルティーナを探し始めた。なんと迷惑な行為だ。だけど本人は悪意や害意を抱いていない為、結界が有効にならない。ならば、力尽くでケリをつけるか。
「おい!ガンダルフ・フォン・フォルトゥナよ!勝手に他人の家に上がり込むな。単なる強盗に成り下がったのか?」
「おい!アルベルティーナを出せ。どこに監禁したのだ、この魔王がっ!」
ガンダルフにだけ『畏怖』を向けた。冷や汗を流しながらも、俺を睨む爺。
「誰が、魔王だ!俺は単なる一般人だぞ」
周囲からダウトって声が多数上がっている。何でよ…
「おい!孫娘を返せ!儂のカワイイ孫娘を」
「何がかわいいだよ。お前は王家にその孫娘を差し出したんだろ?彼女の意思に関係無く。その挙げ句、彼女は嫌々、あのクソ王家の養女になり、離宮に監禁される羽目になり、王家がクソ貴族を管理出来ない為に、彼女の病は最悪に至ったんだよ。それがなんで、分からないんだ、クソジジィ!」
「有るべき場所に戻しただけだ…王家の瞳を持つ彼女は、王家を継ぐ者にふさわしいのだ。何故分からん、若造よ!」
「分かりたくも無い。彼女の意思を無視しても、為すべきことなのか?」
「アルベルティーナもわかってくれるはずじゃ。王家を継ぐ者なんじゃからな。ここで死ね、魔王よ!アルベルティーナを解放しろ!」
手にしていた槍を俺に突き出したクソ爺。しかし、プライドとマイルが槍先を防いでくれた。
「おい、魔王。女子供に護られるとは情けないのぅ~」
「分かった、アルベルティーナを永久に見守るが良い。『強奪 ガンダルフの魂』『強制転移 別邸のランドマーク』『贈呈 糧』」
俺の能力により魂を抜かれ、その場に倒れたジジィ。その身体はミイラの様に乾いていく。魂はあの世界樹の巨木の糧にしてあげた。彼は永久に世界樹の巨木と共に生き、アルベルティーナの成長を見守れるだろう。
と…目の前がブラックアウトしていく。マインドロストのようだ。
◇
「ごめんなさい…お願い、死なないで…お願いですから…」
遠くでアルベルティーナの声が聞こえる。あのジジィの死体に泣き縋っているのか?
徐々に身体の感覚と意識が戻っていく俺。何故か、俺の耳元でアルベルティーナの声が聞こえる。ジジィの死体の傍にいたんじゃ?
「ねぇ…あっ!息をして始めた」
「いや、死んでいないし…仮死状態だったから、呼吸は浅かっただけだよ」
なんでかな?プライドが上に載っている。右にダリヤ、左にはアルベルティーナがいた。はて?野獣化はしなかったのかな。
「お帰りなさい、旦那様」
って、いきなりのプライドによるディープキス。
「沢山、ありがとうございます」
って、俺のアレはプライドの体内に吸い込まれていた。おい…
「私も大きくなって、健康になったら、おねがいします」
って、アルベルティーナ。何がどうなったんだ?事態が分からずに狼狽えた俺。
◇
結論から言えば、プライドは結婚出来る年齢に達したってことだ。なので、マインドロストの機会を有効に、俺の遺伝子を大量に体内に注入したようだ。アルベルティーナは、あの現場にいて、俺とジジィの言い合いを見学していたそうだ。MP切れでマインドロストした俺を見て、命がけで護られたと感じたそうだ。たぶんマインドロストでは死なないはずだ。
で、ダリヤ…彼女は彼女で俺に恩儀を感じていたそうで、傍に寄り添ってくれていたらしい。何故か全裸で…
「プライドも母親になるのかぁ~」
とリーシェ。過去6回プライドに殺された女の言葉は重いなぁ。そして、別邸のランドマークの根元にジジィの顔に似た模様が現れたそうだ。そこからスカートの中を覗く作戦か?死んでも迷惑なヤツだ。
---セイディ・オフラハティ---
「セイディ・オフラハティ! 僕はキミとの婚約を破棄する。キミがそんな女性だったなんて、見損なったよ」
「……はぁ」
ため息しか出ない。何を言いたいんだ?婚約破棄?すればいいんじゃない。
リア王国の中心部にあるヤーノルド神殿、そこで聖女として従事していた私。そんな私に、神殿長の息子である彼から婚約破棄を言われた。
「セイディはレイラを実家で虐めていたそうじゃないか。僕は、レイラからそれを聞いた。だから、キミとは結婚できない!」
「……はぁ」
レイラは私の腹違いの妹である。事実無根であり、私の方が虐められていたんだけど…
「それから、セイディの聖女の力は偽物だ。それも、レイラが僕に教えてくれた。……まったく、次期神官長である僕が、小汚い女に騙されるところだた……」
要するに私から聖女としての地位を奪いたいんでしょ?あの妹は…
「お義姉様。これからは偽物の聖女だったお義姉様の代わりに、私が聖女の座に就きますわ。なので、お義姉様は安心して罪を認めてくださいませ…
…!」
「まぁ、がんばってね」
あんたが思っている程、聖女の仕事は甘くないんだから。
◇
婚約破棄と告げられた翌日、違う領地へと向かっていた。もう聖女では無いので神殿には居られない上、父親から勘当されて、天涯孤独の放浪者となっていた。
「セイディ・オフラハティさん?」
いきなり知らない男性に声を掛けられた。
「そうですが…」
「教皇から紹介されました」
男性から教皇様からの推薦状を受け取った。
『セイディ・オフラハティ殿 貴殿はこの書状を持つ者と共に、アルメリア公国で聖女としての職を全うしなさい』
とある。
「じゃ、行こうか?」
はい?肩に手を乗せられると、目の前の風景が一瞬で森になった。あれ?