---ケン---
今度の聖女は、魔力制御が出来るようだ。その上メイドとしての仕事も出来るらしい。
「ここはどこですか?」
「死の森だけど…」
「なんで、神殿関係者が、そんな場所に入り浸るんですか?」
「そこに家があるから。あれが君が住み込む家だよ」
メイドが出来る聖女って、お得感が満載である。身食いの患者が増えると、メイドはいくらいても足り無いから。
「あぁ、玄関で靴は脱いでね。室内は土足厳禁だぞ」
室内を興味深そうに見渡しているセイディ。転生者ではない者にとって日本建築は珍しいのだろうか。
「君の上司は…セイだ」
「セイです。あなたと同じく教皇様公認の聖女をしております」
セイがセイディに挨拶をした。
「あなたも聖女?ここで何をするんでか?神殿じゃ無いですよね?」
身食い関係の書類を手渡し、目を通すように言い渡した。
---セイディ・オフラハティ---
衣食住完全補償で、月に金貨1枚が支給されるそうだ。なんと言う高待遇なんだ?問題は周囲に店が無いことだな。って、なんで死の森に家を建てているんだ?ここって、踏み入れたら生きて出られない場所だよね?
「ここなら他人にアレコレ言われないだろ?要するに好き勝手出来るってことだよ」
と、私をスカウトした男性が言い切った。彼は教皇様公認の聖者だと言う。神殿での教えによると、聖者って聖女よりも能力も地位も上だよなぁ。
「ここでは、身食いの治療方法と、魔導具の研究を主にしています」
上司であるセイさんに説明を受けている。聖女は私を含めて3名で、見習いが2名いるそうだ。後はあの聖者と、護衛である冒険者達ということだが…魔導具の研究もしているんだよね?
番犬…なんでフェンリルとケルベロスがいるんだ。本当に神殿関係の施設なのか?神喰い狼と地獄の番犬を、家の番犬に据えるって、どういう神経なんだ?それに災害級魔物に指定されているイリーガルデーモンスパイダーがペット枠って…あの聖者はイカレているのだろうか?
護衛陣は勇者を含むSランク冒険者が殆どで、Aランク冒険者もいるそうだ。なんで勇者がイカれ聖者と行動を共にしているんだ?なんかおかしいぞ、ここは…
まずは勇者である隼人君と仲良くなっておく。あのイカれ聖者から身を守る術にしたい。
---ケン---
今度は冒険者ギルド本部からの指名依頼である。面倒そうな案件なんだろうな。
「ある国の領主がな、国の政策方針が気に入らないと独立するらしいんだよ。で、冒険者ギルド本部としての依頼内容は、独立戦争の阻止だ」
「…」
それは仲介しろってことか?どう言い返せばいいのか、分からない。
「その領地っているのは、お前に馴染みの深いところなんだよ」
俺の馴染み深いところ?俺を召喚した国は既に無い。後、どこだ?プライドのとこで、反乱を起こしそうな領主はいないよな。俺が考え込んでいると、ギルマスが呆れたような表情で教えてくれた。
「アインズヘイルなんだが…」
あぁ…ヤーシス、レインリヒのいる場所かぁ。
「あそこの領主って知らないんだけど、バカなのか?」
あの領内に戦力があると思えない。アイナ達のパーティーが最強レベルだったような…Aランクに毛が生えた程度かな。
「あの領内は亜人との共存をしているんだが、あの国は人間至上主義で、亜人達へ迫害、差別を容認しているんだ」
あぁ、なるほど…アイナはハーフだったし、ソルテは亜人に分類されるか。
「穏便に解決して欲しい。無理なら、飛び地になってしまうがお前の処に編入してくれないか」
ここにか?う~ん…
◇
取り敢えず、現地調査を。お供にマイル、プライド、アイナ、ソルテを連れて、レインリヒに会いに行く。
「元気か?」
錬金術ギルドに入るなり、声を掛けた。
「随分と久しぶりじゃな。新作は何か無いか?」
新作か?そうだ。俺はアレのハッパを1枚レインリヒに手渡した。
「いくらで買ってくれる?」
アレの葉を鑑定したのか、レインリヒの顔から血の気が失せていく。
「お、お、お、お、前…これって…世界樹の葉かぁ?」
頷く俺。
「うっ…初めて本物を見たぞ。そうだな…白金貨100枚でどうだ?」
「いいよ、売った!」
「そうかぁ。これが世界樹の葉かぁ…万能薬が作れるなぁ」
感動しているレインリヒの目の前に、死んでも生き返る万能薬を置いた。
「何…お前…」
鑑定したのだろうか。レインリヒが震えている。
「で、こっちが、エリクサーもどきの新バージョンだ。身食いに対する特効薬になる」
世界樹の成分はあくまで肉体の修復能力であり、身食いのような体内魔力には効果は無い。だが、あの青汁が主成分のエリクサーもどきは、体内魔力の調整に効果を見せるのだった。
「完成したのか?」
「まだ身食いの発生原因が分からない。だから、根本からの治療はまだだよ。だけど、死にそうなヤツを風邪程度には出来る」
「そうか…って、お前、世界樹を見つけたのか?」
「あぁ、家の周囲に群生しているぞ。欲しいなら1万枚位なら用意できる。収穫してもまた生えるし…白金貨100枚は忘れないでね」
「おに…」
初めてレインリヒに言い勝った気がする。