カノジョ探しの異世界行   作:もっち~!

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提訴

 

---トビアス・オルランド---

 

兄であり、オルランド商会長であるイレネオ・オルランドに呼ばれ、彼の執務室に向かった。

 

「どうしたんだ?」

 

「商業ギルド本部から呼び出しを喰らった。小型魔導コンロの件で公聴会が開かれるそうだ」

 

商業ギルドの公聴会…権利に関してのトラブル解消の為の話し合いの場であり、本部で行われる公聴会は裁判と同じである。

 

「彼女が個人で提訴したのか?」

 

個人で商会を提訴するのにはリスクが多い。個人で提訴費用、書類提出や証拠固めなどを総て個人で行わないと行けないのだ。

 

「いや、商会が提訴してきた。ダリヤが務めている商会なのだろう」

 

提訴状の提訴した商会名は『ロセッティ商会』とある。

 

「これって、ダリヤの個人商会では?」

 

「なるほど…恐れるに足りぬな。新規商会であれば、ランクEで信用は少ない。我がオルランド商会はランクBで、商業ギルド内でもそこそこ信用がある。適切な公証人と立会人を送り出せば、権利が確定できるな」

 

小型魔導コンロの権利をダリヤに戻すのは単に忘れていたのだが、その利益が配分され兄に知られることになり、その利益の大きさから権利は俺からオルランド商会に委譲する形を取った。

 

「わが商会の虎の子を返すことは無い。あの権利は慰謝料代わりにお前がダリヤから貰った物だからな。その証拠を出せば、権利は確定さ」

 

そんな証拠は無い。俺の母親が兄にそう説明しただけである。寧ろ、慰謝料は俺達が払うべきである。

 

 

 

---ケン---

 

商業ギルド本部の公聴会には、商会長が自ら出廷する決まりであるが、忙しさを理由に、公証人と立会人を送り込んで来た。そして、彼らの提出して来た証拠はバカにしているとしか言え無い物だった。

 

「婚約破棄を結婚式の前日に言い出し、共同で購入した新居をせしめたのはトビアス氏です。それなのに、慰謝料として権利をもらい受けた?バカを言うな。その時の婚約破棄時の財産分与の取り決めに、件の権利が入っていないのは、どうしてだ?」

 

「オルランド商会によると、名義をトビアス氏にしたのは、婚約破棄前であり、財産分与の共同資産に当たらないということです」

 

「それは計画的に権利を奪ったってことで、計画詐欺罪でも提訴いたします」

 

うちの弁護士役はマイルとガンマである。

 

「ランクBのオルランド商会と個人商店のロセッティ商会では、信用度がまるで違います。違いますか、グランドマスター」

 

勝ち誇った表情の相手の公証人。

 

「商業ギルドランクを盾にする方針ですか?心証は悪いですよ、オルランド商会はねぇ」

 

本部のギルマスって、グランドマスターって言うのか…

 

「それに、商業ギルドランクの信用度での審査だと、オルランド商会なんか信用はまるで無いに近い。いいですか?訴状にも書いた通り、提訴したのはランクSSの商会です。わかっていますか?」

 

訴状にはロセッティ商会と連名でエチゴヤ、アズータ商会、ミツゴシ商会の名を記しておいたのだが、目を通していないようだ。

 

「ロセッティ商会はエチゴヤの傘下で、同じ傘下であるアズータ商会、ミツゴシ商会も仲間の権利を護る為に、それぞれの法律部門が調べ上げてくれました」

 

グランドマスターが相手の公証人、立会人に集めた証拠、証言を手渡した。

 

「時系列で見ても明らかでしょ?婚約期間が2年もあるのに、結婚式の前日に婚約破棄を申し渡し、結婚式だった日に婚約破棄の手続きをし、その翌日には違う相手と結婚…明らかにダリヤ嬢から権利を奪う気があったのでしょ?悪質なのは、日程的にもダリヤ嬢が権利が委譲されていることに気づく暇が無い。この辺りの説明はいかがですか?」

 

グランドマスターの声は冷たい。しかし相手の代理人達は、勝つ気満々で怯んでいない。

 

「ですから、権利に関しては慰謝料としてもらい受けたそうです」

 

「その際の契約書は?」

 

「夫婦の話し合いに書記など、一々同席しないものですよ。そんな事は、一般的な常識ですよ」

 

相手の公証人が笑いながらのたまう。

 

「お話になりませんね。これは婚約破棄の問題解決の場では無く、商業の権利を明確にする場です。そもそも、あなた方は民事の公証人と立会人ですよね?商業ギルドの公証人と立会人は用意されていないのですか?」

 

「我々は弁護士の資格を持っています。なぜ、商業ギルド…言ってしまえば相手に肩入れるする者を弁護団に入れなければならないのですか?」

 

なるほど…相手の商会は婚約破棄問題の延長と捉えているようだ。商業の権利を争う時には、商業ギルドの公証人と立会人最低1名ずつ参加させることになっている。これは商業ギルドのルールで、一般的なルールでは無い。

 

たぶん、オルランド商会は単一支部しか利用しておらず、今まで商会の信用でなぁなぁで済ましていたのだろう。だから、正式なルールを知らないのであろう。

 

「では決定を言い渡します。小型魔導コンロの権利をダリヤ・ロセッティ殿に委譲し、今までに不当に得た金額の3倍の額をオルランド商会からロセッティ商会へ払い込むこと、オルランド商会は3ランク降格とし商業ギルドランクをBからEといたします。以上、公聴会を終了いたします」

 

「異議あり!」

 

この会はグランドマスターがルールブックで、彼の終了宣言後はもう受け付けない。

 

「我々はあなたたちを名誉侵害で訴えます。何様ですか?勝手にギルドランクを降格させ、権利を無断で委譲させる?あなたには、そんな権利はありません。今回の件は高等裁判所に提訴いたします」

 

商業ギルド本部を提訴?どこにだ?国の裁判所で裁けない組織なんだが…

 

「面白い。商業ギルド本部を提訴するのか。やれるものならやってみるといい」

 

泥沼化の予感である。

 

「この場合、裁けるのは聖シュルール協和国の神殿裁判所だけですよ。各国の方針に左右されずに、独立性を保つ組織であるギルドは、聖シュルール協和国の教皇様の名の下に、世界共通ルールで運営することになっています」

 

と、ガンマ。だから、どこの国のギルドでも、同じ権利が保障されるのか。

 

後日…件の商業ギルド支部はグランドマスターの決定を重く受け止め、グランドマスターの決定通りに強制執行した。ダリヤの権利を取り戻し、ダリヤに今までの分の利益の3倍の額が振り込まれた。その上、ダリヤの受け取った額と同額が罰金としてギルドの得る金額だと言う。オルランド商会の口座は差し押さえられ、足り無い額は、商会の財産を差し押さえたそうだ。

 

 

 

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