幕間 一時帰国
---ケン?---
目が醒めると、知らない場所にいた。ここはどこだ?まるで見覚えが無い。ベッドから抜け出すと、畳敷きだった。ここは日本か?タンスや押し入れが目に入る。
鏡台を見つけ、鏡を覗き込むと、俺は子供になっていた。転生したのか?俺はいつ死んだんだ?もしかして寝首をかかれたのか。誰に?疑問が脳内を走り回っている。
部屋を出て、リビングルームらしき部屋に入ると、知らない男性がいた。
「君を生まれた世界に召喚した。元々の時代より少し早いけどな」
俺を見るなり、そう告げてきた。生まれた世界に?俺は戻ってきたのか?
「君の名前はこれからは神野翼だ。小学校を卒業したばかり。これからの6年間は英国に留学してもらう」
言っていることが良くわからない。留学?なんで?そもそも何で俺は小学生なんだ?高校生だったのに。
「英国で魔法を叩き込まれてきてもらう。君は再度、あの世界に召喚される運命だからな」
あの世界…プライド、マイル、カタリナ…みんなのいる世界か?って言うか、
「アンタ、誰だ?」
「私は神野司、この世界の神の代行者で、君の義父になる。アチラの世界の神が粗相をしてね。人間に異世界召喚の術を授けてしまったのが始まりだよ。魂の状態で召喚されると異世界転生になり、生きたまま召喚されると異世界召喚になるのだ」
「なんで、その神は異世界召喚なんかを授けたんだ?」
「自分で行うと、神としての職務に違反するからだ。どこで聞いたのか、異世界から魂を引き込むと、神の格が上がると信じていたそうだ。そんなことは無いんだけど」
なんと迷惑な神だ…
「そうだ!なぁ、萌と静は戻れたのか?」
「あぁ、戻れたよ。君の記憶を無くしたけどな」
そうか、良かった。方法は間違っていなかったようだ。
「この世界線では、同級生にならず、彼女達は会えないがな」
それは問題では無い。彼女達が無事であれば良い。
◇
魔素の無いこの世界で魔法を使えれば、向こうでは更に魔法が使えるようになるらしい。この世界でも英国では魔法使いが実在し、修行をすれば会得が出来た。『ワーロック』『サモナー』『ネクロマンサー』『ソーサリアン』の称号を得て、6年後、魔法を極めて帰国した。
「次はどうするんだ?」
「大学に行き、農業や牧畜業、建築技術を学んで貰う。後、家庭教師のバイトをしてもらうよ」
この世界での俺の人生の線路は決まっているそうだ。再召喚は避けられない運命らしい。再召喚されるまでに、アチラの世界で利用出来る技術、知識を叩き込む計画らしい。
家庭教師の生徒として、カタリナ、マイル、マインなどの前世持ち予備軍達がいた。彼女達が死ぬ前に接触し、転生後に向こうでスムーズに合流する為の顔合わせらしい。
「向こうに行ったら、できるだけ転生者、召喚者と一緒に行動して欲しい。悪意持ちに育つと、世界の脅威になりかねないからね」
召喚する世界とされる世界は一心同体の関係らしい。向こうが滅亡すると、余波でこちらの世界もマズいらしい。
「そうだ!あの世界って、なんで乙女ゲーの設定が生きているんだ?」
色々な乙女ゲーの設定が混在していた。
「アチラのバカ神が、こちらの乙女ゲーやラノベに嵌まって…自分の世界でドラマでも見る様にしたようだ」
なんて迷惑なバカ神がいたんだ。
「職務を全うしない神達は娯楽に飢えている。私なんか、職務で手一杯なのに…」
目の前に居る義父である神の代行者は凹んでいる。この人は代行者では無く、神その者なんじゃ?
◇
大学を無事に卒業すると、義父の経営しているゲーム会社に就職した。開発しているゲームは、あの世界その物の気がする。異世界から召喚をする神の行為を止める目的…再召喚されたら、俺はアッチの世界のバカ神と戦う羽目になるのだろうか。
「プレイヤーはプレイヤー専用の大陸から出られない」
と義父。何の為のゲーム開発なんだ?神のすることは意味が分からない。きっと深く考えてはいけないのだろう。
会社では後輩である女性とチームを組み、毎日終電までデバッグ作業をしている。再召喚までに、出来る限りデバッグしておかないと、イレギュラーイベントが起きるらしい。そんなことを言われても、である。神同士決着を着けて欲しい。なんで俺が巻き込まれているんだ?
そんなこんなの或る日、義父から再召喚が近いと知らされた。それを受けて、俺は毎日一緒にいる彼女にプロポーズをした。
「先輩…今日はトコトン飲みましょう」
久しぶりの定時上がり、久しぶりの居酒屋である。
「小鳥遊、程ほどにしておけよ」
再召喚前に、俺の生きた証として、後輩の彼女に指輪をプレゼントした。指輪を見て、俺のことを覚えておいて欲しい、と言う俺の身勝手な行為である。俺がこの世界に居られるのは後数日だろうから。
ヨッパな後輩をオンブし、彼女のアパートに向かう。今夜、大人の階段を二人で昇る儀式をする予定である。彼女の部屋に入り、玄関で彼女を降ろすと、俺達の足下が光輝いていた。