---ルミナリア・アークス・フランシスク---
教皇様の元に戻ると、えらい騒ぎになっていた。教皇様は弱々しい姿でベッドに横になられていて、お付きの者達は、私の部下である戦乙女聖騎士隊が務めていた。
「どういう状況だ?」
「指名手配犯に襲撃を受けたようです。本部内の一部の聖騎士達なんですが、死亡が確認されております。死亡原因は不明です」
襲撃?厳重に警戒されている本部の教皇の間が…
「単独でか?」
「いえ、ランクSの冒険者が捕らえ、隷属の首輪を嵌めた状態で、運び込まれています」
隷属の首輪だと…完全に犯罪者扱いじゃないか。彼らは被害者なのに。教皇様は黒幕と判断されて、反撃に遭ったのか?いや、待てよ…
「隷属の首輪を嵌めていたのだな?」
「それが、破壊されて、ここに落ちていました」
それは隷属の首輪程度では縛れない存在ってことか。あのクソ王子は何者を呼び出したんだ?
「急ぎ、聖者に関する資料を集めよ」
「はっ!」
聖者とは聖女の上位の存在と思われているが、それ以上の存在の場合、人間の敵になりかねない。
---ツバサ---
目の前には哀れなオッサンが震えて俺を見つめていた。
「お前の息子にボロボロにされたのに、何も手を差し出さず、もう一人の息子の婚約者に王命で指名するって、どういうことだ?」
教皇をズタボロにしたんだ。王にだって牙を剥くさぁ。
「いや…だが…王妃教育は一朝一夕では難しい。アイリスなら…」
「アイリスの気持ちを全く考慮していないのが問題だろ?アイリスは王族の駒じゃないし、奴隷でもない。それとも、この国の国民は王族の奴隷だと言いたいのか?」
目の前の哀れなオッサンの魂を鷲掴みにした。
「うっ…もう止めてくれ…」
目、鼻、耳、口から汚い液体を流している汚いオッサン。
「もう、そこまでにしなさい。お願いだから…もうこれ以上、私の娘の為に汚れ役にならないで」
俺の背中に抱きついて、俺の行為を止めようとしているアイリス母。王妃はアイリスと同じ目に遭わせてやった。どれだけ屈辱かを教え込む為に…
「このオッサン、反省していないけど、いいのか?」
「もういいわよ。こんな最低な男が国のトップだなんて…吐き気が起きるわ。ここで宣言をします。我がタスメリア国アルメリア公爵家は、国から独立を宣言し、アルメリア公国として立国をいたします。ですので、我が娘、アイリスには、もう関わらないでください。これ、夫からの絶縁状ですわ」
アイリス母は王の目の前に書状を叩き付けた。なんか、前回よりも早い立国だな。これもイレギュラーイベントってことか?
城内にある金目の物と書物類を総てを『強奪』し、アイリス母と共に、アルメリア領へ転移をした。
◇
公都を首都とし、堅牢な壁で覆っていく。材質はこの世界で最も硬い材質である世界樹である。あの樹木、油断すると増殖している。伐採したら根っこも処分しないとダメなようだ。地下茎での増殖かもしれない。あの樹木の繊維で衣服を作ると、オリハルコンの鎧並の強度があったりする。アルメリア公国の特産品にするかな。
今回も商業ギルドにエチゴヤで登録済みである。本店は勿論アルメリア公国の公都である。公都とタスメリア国の国境地帯の公都寄りの森には、迷宮の入り口を作った。折角ダンジョンコアがあるので、アルメリアダンジョンを作ってみたのだ。監修は俺と隼人である。二人でダンジョンを設計し、配置したいモンスターを選んでいった。
「低層階は採取系メインで、中層階には食べられる系にするか」
食べられる系のモンスターは結構いる。
「罠を少なめにして、で、宝箱部屋にはミミックを混ぜておくとか」
前世でゲーム会社のシステムエンジニアだった俺とセイで、ダンジョンバランスを整えていく。
「地下50階のお宝は世界樹の葉っぱ1枚にして…地下はどこまで作れるんだ?」
「コアに計算させると200階辺りまでかな。横に伸ばせば、もう少し潜れそうだけど」
テストプレイは隼人パーティーが行い、充実度を検討してくれている。アルメリア公国の資源にもなるダンジョンであるが、意図的にモンスターを溢れさせることで、タスメリア国への牽制になる。と、言うのも溢れたモンスター達はタスメリア国へ向かうように教育してあるので、ダンジョンも防衛施設の一部となるのだ。
「ダンジョンを防衛施設にするなんて、ツバサくんだけだよ」
満面の笑みを浮かべる隼人。
---セイ---
アルメリア公国の行政区に植物研究所を設立した。様々なハーブ、茶葉、薬草などの効用や飲用の仕方を研究している。現在の難問は目の前にある樽に入った物体Xである。これを飲みやすくって…マインちゃんのような魔力過多症の特効薬なのだが、味がねぇ~。最悪である。それを1日にジョッキで3杯って、拷問クラスの治療法である。味以外にも臭いが…コレを飲んだ後の接吻…吐き気を催す。世界樹の葉っぱをブレンドすれば、万能薬にもなるけど、味は改善されない。
ここの植物園には貴重な植物の繁殖の研究をしている。しかし、貴重な植物の出所はダンジョンであるので、地上でなんとか繁殖出来ないかってことである。イザとなれば、先輩、マイルちゃん、プライドさんならソロで、隼人くんならパーティーで採取に行ってくれるのだが…
「なぁ、この植物はあるかな?」
錬金術師ギルドのアルメリア公国支部のマスターのレインリヒさんがいらした。手にはメモが…
「あぁ、これならあります。価格は金貨…」
稀少な薬の原材料になる植物がここには多々あるので、近々錬金術師ギルドの本部と、冒険者ギルドの本部が、この公国の行政区に移転してくるらしい。
ここで稀少な薬を増産し、各国の支部へと送る計画らしい。それに伴い、冒険者達の街も出来るらしい。
それらの政策は、アイリスさんと先輩、マイルちゃん、マインちゃんに私などの元日本人が中心になって決めて、推進していた。
「セイ、雑草と思われていた植物も研究対象にしてくれ」
「了解です」
この世界では雑草と思われていた植物が、我々元日本人にとって馴染みの深い植物だったりする。まさか、米の異種が雑草だったなんて…この異種の凄いところは、連作が出来、水田いらずに、年に数回収穫出来るところである。今は味の改良中であるが、現状でもそんなにマズくない。甘みが少ないのでササニシキに近いかな。
行政区に新たに建てる建物には、死の森の館で作り上げた魔導具が設置されていた。あの魔性のトイレやお風呂場などなど。
「えっ…ここから出たく無いわ」
と、アイリスさんのお母様がトイレに立てこもった事件が発生したり。あのトイレは、この世界では人間を堕落させる力があるようだ。
新たに公女となったアイリスさんの屋敷は、魔導具のショウルーム状態である。接待目的でエライ人達を招待し、様々な魔導具を体験してもらい、気に入ったらエチゴヤで購入してもらう流れになっている。
マインちゃんのご両親達も行政区に近接している街に引っ越してきていた。税金などは近辺国よりも安い上、物価も低めで住みやすいそうだ。この世界、エラい人ほど税金が安いらしいが、アルメリア公国だけは収入に応じた税金が課せられる。エライとか関係無い。あくまで収入ベースである。イヤなら他国へどうぞ!ってことだ。
日本の行政システムの良い部分を取り入れているのである。住民基本台帳を作り、住民税を取る。人口が少ないうちは税金収入だけで赤字であるが、冒険者ギルド本部、錬金術師ギルド本部からの寄付、エチゴヤからの先行投資などでやりくりをしている。出て行くお金の殆どは人件費である。資材調達などはエチゴヤで準備をしている。死の森のあの樹木を錬成して、部材にしているのだ。加工費、原材料費は掛からず、掛かるのは先輩の手間だけというコストパフォーマンスに優れたシステムになっていた。
先輩ばかり苦労しているけど、いいのかな?