---ツバサ---
王国からの独立、そして建国によりアイリスは公国の女王、公女陛下となった。事実上、公国のトップである。彼女の父親は宰相、彼女の母親は騎士団長で、俺は彼女の夫で王配扱いである。アイリス母によると事実婚だから結婚式はやらない方針らしい。まぁ、招待するのって身内だけだし。披露宴くらいはするかな。
プライドはフリージア王国の大使になった。彼女の両親の計らいで名目上ではあるが、フリージア王国の為に働いていることにしてくれたようだ。
マイルは冒険者のままである。あの国はマイルの問題を金で解決したので、強いことは言え無いのだ。
教皇は公国立国と同時に、教皇直轄の教会を公都に建立してくれた。俺とは敵ではないアピールらしい。
行政区にはマインのような魔力過多症、通称身食いの治療院を建設した。この世界では少なくても後数名いる筈であるからだ。
そして今、目の前に教皇とナンバー2のカトリーヌがいる。
「世界で一番安全な場所に神殿を建てたいのだ。協力してくれないか」
ごねるババァ。
「俺の知っている一番安全な場所は、俺の屋敷のある場所だけど…聖シュルール教会治癒士ギルド本部を置ける場所で無い」
一応魔王国内である。そこに聖シュルール教会の本丸を置くのはどうかと思う。因みに、魔王とはお話をして、死の森は俺の領地にしてもらった。俺とセイが聖属性、光属性のオーラを出しまくって会談をしたのだが、魔王様は嫌な汗をかきつつ了承してくれた。恫喝ではなくお話し合いの平和的な解決であった。
「魔王国内だぞ、いいのか、それで?」
「えっ?!それは…」
良い訳は無い、一応教義上は魔王は敵であるから。実際には敵では無く、棲み分けで手を結んでいるらしい。
「次に安全なのは、この公国だな」
俺がダンジョンコアを奪ったせいで、教会の本丸であるババァの住処の結界が張れなくなったらしい。
「この国かぁ…」
この国には住処を変えたSランク冒険者の隼人、チーターである俺、マイル、プライド、セイがいる国である。防衛システムに組み込んだスタンピートも強力な戦力になる。まして冒険者ギルド本部がある国を襲うバカは少ないだろう。
「う~む…わかった。この国に聖シュルール教会治癒士ギルド本部を置こう。それに隣接する形で神殿も作る」
「ただし、治外法権は認めない。この公国の国民として扱う。いいな?」
「…わかった。カトリーヌよ、公女陛下に条約締結の書面を送るように」
「わかりました…」
神殿の建立場所の地下深くにダンジョンコア部屋を置き、神殿には結界を張れるようにする。これで教皇は安心して眠れるだろう。ダンジョンマスターである俺は結界の出入りが自由であるけど…
---カトリーヌ---
「教皇様、良かったのですか?」
相手の言い分を丸々飲み込まれていた。あの男の言い分をだ。
「あれは人間の姿をしたバケモノだ。戦って勝てる相手では無い」
前回のあの男との会談…教皇様も私達も他人に言えぬ醜態の晒してしまった。白目を剥き、泡を吐き、様々な体液を垂れ流してしまったのだ。
「聖者ではないのですね?」
「いや、たぶん、あの男は聖者じゃ。ただ単なる聖者では無く、聖者でありバケモノなのであろう。決して、敵対してはならぬぞ」
数百年にも渡って制覇出来なかったダンジョンを攻略した男。神殿の結界を造り出していたダンジョンコアを持ち出し、この地で新たなダンジョンを作った男。魔族や魔王ですら禁足地とした場所を拠点としている男…彼は何者なのだろうか?
この世界のツートップである教皇様と魔王が恐れる男…頭が上がらない男…彼は何をし、何をもたらすのだろうか?
---ツバサ---
グーグーマップのような衛星写真マップがあれば、この世界の怪しい場所を見つけるのは容易いのだが…召喚される際に持ち込んだ俺とセイのノートパソgコン。この世界でも使えている。それを使い、アルメリア公国の住民基本台帳を製作した。
「ソフィア、何か神とアクセスできそうな情報はあったか?」
行政区に巨大な図書館を建設し、本好きなソフィアとマインを司書として置き、暇な時に調べ物をして貰っていた。
「う~ん…古い儀式場と言うか、マインちゃんのいたユルゲンシュミットという国家なんですが、国土自体が円形で、白い砂に覆われた大地にあるんです。それで、国や領地に魔力を注がないと国そのものが維持出来ないみたいで…」
国土自体が魔方陣になっているのか?
「それは興味あるなぁ」
調べてみるかな。
◇
新しくできた神殿へ…教皇を訪ねてみた。
「教皇様にお願いに参りました」
怪訝な顔で俺を見るババァ。
「何をだ?」
「ユルゲンシュミットなんですが、通称身食いという病気の者達をその国の貴族達が奴隷にして、魔力過多の彼らを魔力タンク代わりに使っているそうなんですよ。どうにかなりませんか?魔力過多症の治療院の者として、見逃せない状況なんですけどね」
聖シュルール教会治癒士ギルド本部のトップとしての判断は如何に?見捨てるのかな?見逃すのかな?ふふふ…
「お前は私を試すのか?全く…証拠はあるのかい?」
手に入れた幼児の売買記録の写しをババァに手渡した。
「物心が付くと奴隷契約しないといけないから、物心が付く前の幼児の時に奴隷契約しているんだそうだ。貴族特権でね」
酷い話である。身食いの平民の子供は、貴族が有無を言わさずに取り上げ、奴隷契約するそうだ。それを斡旋するのは教会だと言う。
「取引には神殿長、司祭などが関わっているんだけど、教皇様は黙認していたのですか?それとも関係者達は教皇様に忖度にして、身食いの幼児達を救済されているのですか?浄財と称し、貴族達の奴隷へと…」
「そ、そ、そんなことが行われていたのか、あの国では…カトリーヌ、すぐに調査団を派遣しなさい」
「はい…」
カトリーヌさんの俺を見る目が冷たい。なんでだ?
◇
調査団が到着する前に、ユルゲンシュミット国内で内乱が起き、隣国であるランツェナーヴェが攻め込んだそうだ。その戦乱に乗じて、俺達は乗り込み現地調査をし始めた。
王城にある書庫、禁書庫、貴族院の図書館などにある書物を総て強奪し、戦火から保護をした。貴族院…上から見ると何か幾何学模様に見えるような…祠らしき物からうっすらと魔力のラインが伸び…何かの魔導回路にも見えるが…戦乱の地であるので、こっそりと離脱した。
保護した物を屋敷で検分していく。うん?鍵付きの書物がある。これは怪しい。鍵自体を『強奪』して解除した。鍵で護られていた内容はは所謂聖典であり、様々な儀式の取り扱い方が書かれていた。だけど、儀式場の場所までは書かれていない。う~ん、小まめに調べ倒すしかないか。
呪いや罠の類いが怖いので、俺とマイルで調べることにした。
◇
例の戦乱だが、教皇派遣の調査団から冒険者ギルドを通じて、俺達や隼人に援軍として参加するように指示が出た。争いを終わらせて上げよう。まず俺達は、内乱に乗じて侵攻を始めたランツェナーヴェを壊滅させた。これで後続部隊は出せないだろう。続いて、内乱の原因であったアーレンスバッハ 大領地を殲滅し、マインの故郷であるエーレンフェストの防衛戦に参加した。
因みに王城は行き掛けの駄賃として、粉砕済みである。