---カトリーヌ---
調査団と冒険者ギルドから報告が上がって来た。戦乱は鎮火したそうだ。が、報告によると、あの男はバケモノだという。広域殲滅魔法を無詠唱で連発していたそうだ。推定魔法量は無尽蔵で、属性はマルチ。治癒魔法すら出来たそうだ。あのバケモノは何者なんだ?神は彼にとって敵か?味方なのか?
---ツバサ---
戦火から貴族院は守っておいた。どう見ても儀式場に見えるし。
「これは…って、ナノちゃんも同意見のようですよ」
と、マイル。現在、俺、マイル、プライド、セイで貴族院の上空に来ている。現在、貴族院には誰もいないので、これから内部調査を始めて行く。内部には至るところに術式やら魔方陣やらが巧妙に隠されていた。これは何かあるだろう。調査担当は俺とマイルで、戦闘チート特化のプライドは護衛で、セイはヒーラー、呪い解除要員である。
「う~ん…ナノちゃんによると、探している神とは違うみたいですよ」
「まぁ、神と言っても多種多様だものな」
日本人にとって神は八百万の神だし。神だけで無く仏様にすらお祈りする種族である。関係無い神とは関わらないでおくか。
◇
戦後復興の為に現地入りした調査団により保護された身食いの患者達が治療院に運び込まれてきた。結構な人数がいるな。俺とセイ、マイルが治療を施していき、聖シュルール教会治癒士ギルド本部所属の治癒士達が、施術技術を見守り、学んでいく。
冒険者ギルド本部からは治療薬である物体Xが樽で運び込まれる。セイが治癒士達に物体Xの取り扱い注意を説明していく。その説明はまるで危険物の取り扱いに等しい気がする。
「兎に角、臭いが問題なので、使う分だけをジョッキに入れてください。後、健康な人が飲んでも人体に危険はありませんが、味、臭いなど拷問クラスなので覚悟の上、お試しください」
って、それを患者に飲ませるんだぞ~!味、臭いの改善が急務であるかもしれない。投与すると意識を飛ばす子供が多数。毒薬では無いんだが…
◇
前回の記憶から、アマツクニの存在を俺は知っている。俺とマイルでアマツクニに買い付けに向かった。部屋着、作業服に作務衣が欲しいのだ。後は畳だな。
「醸造蔵が買えるといいですね」
「だな」
醸造する為の酵母が見つからないのだ。醸造蔵なら酵母が巣くっているはずだし。味噌、醤油、みりんと作るには作れるが、味が…きっと酵母菌が違うのだ。俺とマイルとナノちゃんの今回のメインクエストは酵母の採取である。
「納豆菌も欲しいなぁ。後麹菌も…」
「キノコの菌も欲しいですよ。お鍋に必須だと思います」
「そうなると、スダチとかカボスも欲しいなぁ」
俺とマイルの和食への妄想が暴走していく…アマツクニの大き目の街に入り、試食、試飲をし、気に入った物を購入していく。今回の予算は白金貨1枚である。教皇に聖龍の骨の一部を買い取って貰い、資金を作ったのだ。
キノコ類は無かった。これは今後、山でキノコ狩りだな。
その日の夜は、屋敷で和食パーティーである。露天で買った串物や漬物の類いに、米である。
「この米と交配すると美味しくなるかな?」
セイが脱穀前の米を目にして考え込んでいる。
「どうだろうな。この米は水田を使うらしいから」
改良中の米は水田を使わない。植生が違うのだった。
「なすとキュウリ、トマトの苗は買ってきた」
漬物と言えば、なすとキュウリである。トマトはアマツクニで丸かじりしてきたのだが、昔懐かしの味だった。無駄に甘くなく素朴でマッタリと出来るような。
◇
今日は世界樹の地下茎との戦いである。伐採した世界樹の地下茎だけを除去していく。除去した地下茎は繊維に錬成していく。錬成スキルを持つ俺にしか出来ない作業である。切り株から伸びている地下茎を錬成しながら、引っ張り上げていく。ある程度繊維が出来たら、今度は布地へお錬成していく。この布地は裁断出来ないので、服に加工するのも俺の錬成スキルである。裁断、縫製の際の型紙作りはトゥーリとアナスタジア・シャデランが担当している。
ある程度地下茎を処理すると、地下から風を感じた。これって、地下空洞でもあるのだろうか?俺は、地下へと降りていった。
そこは真っ暗だった。『ライト』の魔法で周囲を明るくし、探索を開始した。見上げると絡み合った地下茎が見える。何だろうか、足下には地下遺跡があるみたいである。念話でマイルを呼び出した。
マイルと合流して探索を再開した。
「ナノちゃん、この遺跡は何かわかるか?」
『これは…先史文明の痕跡かな?』
先史文明?
「年代はわかる?」
『1000年よりも前…1万年前かな?』
「先生、これって大発見では?」
「先史文明の滅んだ場所だから、死の森なのかもな」
「なるほど…」
足下の殆どは砂に埋まっている。所々何かの建築物の残骸が見えるのだが…アレ…これって…大きな物が横たわっていた。叩いてみると、硬いが金属ではないようだ。
「これって、カーボン繊維を樹脂で固めたのか?」
「先生…これって…」
その大きな物の中に入り、アレを探す。もし、想像通りの物であれば、識別銘板があるはずだ。あれはステンレス板なので熱に強く、腐食もしづらいはずで、大きな屋根に護られているから…
そして、それは見つかった。航空機に取り付けてある識別銘板が…日本の航空会社所有の飛行機であった。そう…ここは日本の未来…
「アマツクニのような日本の文化を持っている国があったってことは、急に滅亡した訳ではなく…」
義父はここが異世界だと言った。ならば並行した世界の可能性がある。
「俺達のいた世界とは違うパラレルワールドなのだろうな」
プレートを持って、屋敷に転移をした。