---ツバサ---
「1万年後の世界…想像が付かないわね」
セイがそう言いながらプレートに視線を落としていた。
「いずれにしろ発掘するけどな」
問題はあの砂だな。どこに捨てるか。
「でも国内線とは限らないし」
確かに日本国内とは限らない。、発掘して、どこの都市が埋まっているかだな。
翌日から、本格的に発掘作業を開始した。俺とマイルでまず底というか、元々の地表を目指すために、砂を除去していく。廃棄場所はアイリスをズタボロにしてくれた王族の住まう城の真上である。今日からあの城には砂が降り続けることであろう。
巨大な篩いザルの上に砂を転移させ、混じった固形物だけをゲットして、砂だけを廃棄転移させていく。混じった固形物は殆どないようだ。鉄などの金属類、コンクリートなどは風化して殆ど砂状になっているようだ。
---アルフレッド・D・タスメリア---
王都に砂が舞うようになった。小雨の様に降り注いでいるようだ。税収の大きかったアルメリア公爵家が独立したせいで、国庫の目減りが激しい。国が傾くと予感して、貴族連中が城から金目の物を多数持ち出したようで、国庫の内情が苦しい。アルメリア公国を再編入しようと、我が国の貴族達の有志軍が何度も攻め込んだのが、返り討ちに遭い、反撃を食らい、我が国の被害が増大していく。
弟の犯した罪により、神に見放されたのか、我が国には人災および災難が続いている。そして、今回の降砂現象である。晴れの日でも傘が欠かせない。眼鏡も必要であるな。いや冒険者が使うようなゴーグルが必要か?
「原因はわからないのか?」
父である王が新米宰相に原因を訊いている。元々宰相はアルメリア公爵であったが、立国と同時に、この国を去った。当然といえば当然である。腹違いの弟のした事を思えば、公爵ははらわたが煮えたぎる思いだっただろう。そこに追い打ちを掛けるような、俺との婚約命令である。王家として未だに謝罪をしていないのに、ボロボロになった令嬢への人権を無視した王令である。温厚な公爵がキレたのは間違いない。
「わかりません。ですが、アルメリア公国の仕業ではないでしょうか?」
原因が不明であれば、総てあの国のせいにするのか。大丈夫か、この宰相は。
「あの国の嫌がらせなのか」
その宰相の意見を鵜呑みにする王。大丈夫か、この国は…王太子である私が言うべきことでは無いな。
「アイリス嬢はまだ差し出さぬのか?」
差し出す訳が無い。公爵家は、あの王令に嫌気が差したのだから。
「アイリス嬢を奪還し、旧アルメリア公爵領を奪い返すことは、可能か?」
「全軍で挑めば、可能かと思われます」
「陛下、宰相のお言葉ですが、不可能だと思います」
現状が見えなすぎているので、咄嗟に口を挟んでしまった。。
「アルよ、どうしてそう思う?」
「将軍はアイリス嬢の祖父です。孫の望まないことはしないと思います。アイリス嬢は既に結婚されていると言われておりますし」
「そんな弱気でどうするのだ!だから、王令を無視した結婚なんぞ、認めぬ。その偽りの結婚相手からからアイリス嬢を救い出し、我が王家に嫁がせるのだ。アル、お前が先陣を切り、アイリス嬢を救出してこい!」
「無駄死はゴメンですよ。単純の兵力から見て、勝ち目が無いのは明らかです。かの公国には聖シュルール教会治癒士ギルド本部があり、教皇様がお住みです。その上、冒険者ギルド本部、錬金術師ギルド本部まであるのです。そんな国にケンカを売るなんてバカのすることですよ、陛下」
聖シュルール教会の教皇が住んでいる国に攻め込む?あり得ない。他国から独立し、世界規模で所属会員を見守っている組織の本部が3つもある国だ。あの国は戦の火種が無いと判断したってことである。全うな元首であれば、攻め込んだら負けだと気づく国なのだ。が…
「それがなんだ!王太子であるお前が及び腰でどうするのだ。我が国に編入すれば、より安泰では無いか。きっと教皇猊下も喜びになるだろう」
「その通りでございます、陛下」
この宰相ありて、この王ありか。
「将軍に伝えよ。王命により、全軍を持ってアルメリア公国に攻め込めと」
伝令に伝えた、暫くすると私の目の前に将軍が現れた。
「その王命は従えぬ。娘を討ち、孫娘を浚えって、従えぬ命令である。今を以て、将軍の座を辞する。王太子殿下、さらばだ」
将軍の後ろに近衛騎士団の騎士達が続く。もう、この国の最大戦力が去り、これで、この国は終わっただろう。
---ツバサ---
密偵達からタスメリア王国がアルメリア公国へ攻め込みそうだとの情報を得た。廃棄する砂のペースをあげるか。国境線から見える位置に攻め込む部隊がいたら、スタンピートを発生させるかな。
今日の発掘メンバーにセイ、プライド、隼人パーティーが加わった。澱んだ空気をセイが浄化していく。時には汚れた空気だったり、時には成仏出来なかった魂だったり…まぁ、きれいが一番である。
プライドとマイン、マイルには錬成術を仕込み、根茎の処理を任せた。マインには幹から凸版印刷用の文字印材を錬成してもらう。鉄より固い世界樹の幹であれば、鉄で凸版を作るより、耐久度があるだろう。削り出しでなく、錬成で文字を作れば、効率的だろうし。マイルは息抜きにフィギュアを錬成して作り出しているし。
「人間の骨が出た…後、金庫…」
隼人は建物の中を発掘していた。砂を篩いザルに掻き出していき、発掘していたワンフロアの砂を退かしきったようだ。
「金庫の中は…」
帯封がされた一万円札だった。金庫の中は密封されており、風化から逃れられたようだ。
「描かれている人物は坂本龍馬みたい。これって僕のいた時代の発行じゃないね」
「俺の時代でも無い。いつの時代だ?」
『マイル様のいらした時代より100年ほど後になります』
ナノちゃんから答えが出た。
「はい?100年後…日本は壊滅するの?」
「壊滅原因は?」
『異常気象の可能性が大です。人類はこの星を捨て、軌道上に逃げた模様です』
軌道上?衛星軌道か?そうなると宇宙ステーションか?ここに残った人達は、貧乏だったのか?選ばれなかったのか?いやいや、万札の帯封がいくるもある。貧乏って事は無い。宇宙ステーションへ行く為の手段が無かったのだろうな。
「隼人、この場所を特定出来る物は残っているか?」
「探してみます」
隼人は金庫内を探し始めた。密閉されていない物は風化しているようなので。調査は隼人に任せ、俺とマイルは砂の除去を続けた。