---アルフレッド・D・タスメリア---
将軍に出て行かれ、近衛騎士団の騎士達に出て行かれ、配下の領主達は領地に引き籠もり、王家として立ち行かなくなっていった。その間も砂が不定期に降り注ぎ、城の半分は埋まっていた。
「どうするおつもりですか、陛下」
新米宰相は金目の物を漁り、城から逃げたらしい。
「どうにもならん。なるようになるだろう」
我が国の国民の人口が減っていた。住みやすいアルメリア公国へ移民として移り住んでいるようだ。我が国より税金が安く、威張り散らす貴族もいない平和な国と評判である。我が国では荒くれ者が多い冒険者達も、かの国の冒険者達はルールを護り、冒険者の街とダンジョン内以外では礼儀正しいようだ。
「あの国は理想的な国家です。見習うべきでは無いでしょうか?」
出て行った将軍と騎士達はアルメリア公国に雇われたよう。
「既に遅いですけどね」
砂煙で視界が狭いが、かの国の方角を眺めながら、陛下に伝えた。
「ならば、お前が婿に入り、内部から併合してみよ」
まだ、そんなことを言うのか?
「手遅れですよ。弟がしでかした時に直ぐに謝罪し、アイリス嬢を護らなかったツケが回ってきたんですよ。王都ではアイリス嬢の卑猥な姿の裸体画が出回っているのに、回収も禁止もしないなんて…こんな王都に来てくれる訳ないでしょう?何故、それが分からないのですか?」
「分かる訳は無い。そいつ、洗脳されているぞ」
突然、この部屋にいない人物の声がした。振り返るとアイリス嬢の旦那であるアルメリア公国の王配がいた。
「洗脳?誰に?」
「あぁ、王妃も洗脳されていたぞ。多分、お前の腹違いの弟の母親だ」
「父の側室か…」
あの女ならやりかねない。今だに城に残り、火の車である国庫を使い、贅沢三昧をしているし。
「父の洗脳は解けるのか?」
「薬を併用しているようだ。お前の母親の洗脳を解いたが、記憶障害が残った。お前の父親は更に重症だから、精神障害が残る可能性がある。薬は脳自体を蝕むからな」
「なぁ、頼む。治療を頼む」
アイツに声を掛けたが、姿は既に無かった。
---ツバサ---
砂の状態を確かめに行ったついでに、王妃の容体を見に行ったのだが、目が死んでいて、明らかに精神がやられていた。マインドヒールを掛けたのだが、記憶に障害が出ていた。まだそんなに深く掛けていないに。これは薬による洗脳時に起きる脳細胞の破壊と思われた。王と王妃は洗脳状態にあり、アイリスに対しての命令は洗脳状態でなされたのだろう。
城内を探索していると宝物庫で宝石を袋に詰めている女を見かけた。ステイタスを見ると、王の側室のようだ。アイリスに罪無き処罰を与えたバカ王子の母親である。そんなに宝が好きなら、うちのダンジョンにある宝箱ダラケの部屋に強制転移させた。因みに階層は30だったかな?運が良ければミミックが遊んでくれるぞ。
砂は王城内に入っていなかった。城自体は半分ほど埋まっているけど。そうか!王城内に廃棄すれば良いかな?発掘現場に戻って、砂の廃棄先を変えよう。この際、カタリナを虐めた王子の居る王城内に変更してみるか。
発掘現場に戻り、廃棄先を変え、砂の除去作業に戻った。
「ねぇ、先生。砂だけを強奪して、転移させれば良くない?」
マイルがアイデアを提示してきた。
「一気にだと、足場が無くなるから…そうだ、隼人達のいるビルの屋上から、ワンフロア分ずつ砂を強制転移させるか」
マイルと共に転移をして、ワンフロア分の砂を強奪してからの強制転移をして廃棄してみた。う~ん、魔力のヘリがキツい。少量であれば、魔力は使わないのだが…
「魔力的にキツいですか?じゃ、強奪だけしてください。転移は私がさせます」
廃棄用の強制転移の魔方陣をマイルが発動させ、そこに俺が強奪して集めた砂を置いて行く。これでもキツいな、量が多すぎる。って、この洞窟の体積ってどれくらいだ?
---アラン・スティアート---
す、す、砂が城の中を流れている。どこから流れているのだ?流れを遡っていくと、天井の板がハズレ、砂が滝の様に流れ落ちていた。どういうことだ?誰かの嫌がらせだろう。魔法省へ向かい、原因を調べてもらうことにした。
「う~ん、ここには魔方陣の類いは無いわねぇ。誰かがここに強制転移させているのだろうけど…いやぁぁぁぁぁ~!」
砂の滝に飲み込まれ、砂に流されていくスザンナ・ランドール。魔法省の魔法道具研究室の部署長で、長兄ジェフリーの婚約者である。
「ちょっと、アラン!助けなさいよぉぉぉぉぉ~」
走って追い掛けるが、砂の流れが速い。スザンナは階段を砂に流され下っていく。
「おい!手を伸ばせ!」
ツーフロア先で漸く助け出せた。
「問題は誰が誰に恨みを買ったかねぇ」
多分、ジオルドだ。アイツのせいでカタリナが家出をしたんだからな。
「第三王子かな…婚約者を虐めて家出に追い込んだしねぇ。その上、指名手配をしたし」
カタリナを犯罪者扱いである。ジオルドに虐めた覚えが無い為、偽証罪と王族に対する侮辱罪で、カタリナは犯罪者堕ちである。その上、未だに婚約破棄はしていない。アイツは犯罪者と婚約するつもりなのか?
「あの指名手配って解除出来るのか?」
「指名手配した本人が解除すればねぇ。でもカタリナ・クラエスの場合は解除出来ない。罪状明記の上での立派な犯罪者だからね」
出来ないのか。
「見つかった場合は?」
「国内法が適用されるわ。軽くてもむち打ち50回の上、結婚してから永久軟禁状態で、、重ければ、奴隷紋が入れられて、ジオルド王子の奴隷にされるかな」
ジオルドはなんてことをしたんだ?あのバカは…
「そもそも王子が罪状を課せられないんだけどね。でも王族として冒険者ギルドに申請してしまったから、罪状は確定してものとして、冒険者ギルド内では処理されているわよ」
「王子に罪状が課せないなら、無罪ってことになるのか?」
「その場合、この国の信用度は下がるわよ。だって罪の有無がコロコロ変わる独裁国家と思われてしまうの。そもそもの間違いは冒険者ギルドに申請する書面に陛下の印を勝手に押されたことね。あれで国を挙げての手配としえ受理されたのよ」
ジオルドのヤツ…
「因みにクラエス公爵はカンカンよ。大切な娘を強制的に婚約者にし、家出に追い込んでからの、犯罪者に仕立てられたんだもの」
「それはそうだな。ジオルドが悪い」
「ねぇ、アランはカタリナ嬢の家出した先を知らないの?」
「あぁ、俺もメアリーも知らない」
◇
事態は最悪な方向へと流されていた。ジオルドの婚約者が犯罪者にされたカタリナから、聖女と噂されているマリア・キャンベルに変更になった。後、伏せられていたが、カタリナと共にアスカルト伯爵の令嬢ソフィア・アスカルトも逃避行に同行しているそうだった。その事を聞いたジオルドは、ソフィアを逃亡幇助罪板として指名手配したようだ。これは王の印が無かった為受理はされなかったが、ジオルドに対する忖度で、カタリナの共犯者としての指名手配書に加えられたそうだ。
王家としてクラエス公爵家、アスカルト伯爵家との対立は好ましくない。ましてアスカルト伯爵は我が国の宰相である。そんな両家が或る日忽然と消えたのだった。屋敷ごとである。国内は上に下への大騒ぎであった。
「う~ん、これは大規模な魔方陣で転移させたようね。痕跡が残っていないのは見事としか言え無いわ」
捜査に長兄の婚約者であるスザンナが加わっている。
「屋敷ごと夜逃げとは、大胆よね。手引きした魔法使いに会いたいな」
「その魔法使いの線で追えないのか?」
「冒険者ギルドに問い合わせをしたんだけど、該当者無しよ。魔法使いとして登録していないか、ランクを態とあげていないか、冒険者ギルドに登録すらしていないかね。手強いなぁ~」
スザンナはどこか楽しげである。コイツ、捜査を楽しんでいないか?
「アラン、出掛けるわよ。付き合いなさいね」
えっ?まさか、俺を助手にするのか?俺はまだ学生だぞ!
「砂の件はいいのか?」
「きっと同一犯よ。こんな高度な魔法を使うなんて、この世界広しでも出来る者は片手ほどもいないわ」
「二、三人か?」
「居ても一人、多くても二人かな。さぁ、旅支度をして正門に集合よ。早くしなさいね」
なんで、俺なんだ?ジェフリーアニキじゃダメなのか?