---アイナ---
一瞬で目の前から消えた男。無属性魔法か?高位の魔法使いの可能性があるなぁ。対応した受付嬢に彼のことを訊いた。彼女は涙目であった。そんなに怖い目にあったとは思わないけど。
「マズいですよ、アイナさん…彼は冒険者ギルド本部から依頼を受けたランクAの冒険者です。バックにどこかの国の公爵家がいるようです」
彼のギルドカードを見せられたらしい。貴族の配下の冒険者かぁ。マズいわねぇ。その上、冒険者ギルド本部の依頼で動いていたとなると…
「賠償額は、たぶん国家予算並になりそうです」
何?その額は…彼の持ち込んだポーションは最上級ポーションが100本だったと言う。なんで、そんな高品質な物を持ち込んだのよ?
「ギルド本部から指示書に、中級以上でできるだけ高品質な物を、出来るだけ多く納品って、書かれています」
「これって、製薬ギルドの嫌がらせ?冒険者ギルド内で揉めごとを起こすって…」
「本部に問い合わせてみます」
◇
「マズい…問題の彼は製薬ギルドで無くて、錬金術ギルドだそうだ…」
蒼い顔のギルドマスター。事態は深刻だった。いつもの製薬ギルドの嫌がらせを思ったギルド員が暴走したのだが、彼は製薬ギルドの関係者でなく、冒険者ギルド本部の依頼で、錬金術ギルドから派遣された冒険者だった。
そして、彼の作ったポーションは錬金術ギルドのギルドマスターに品質をチェックされ、冒険者ギルド本部にその金額が請求されたそうだ。最上級ポーション100本分の請求が…その価格は1本最低でも5000万とも1億とも言われている。それが100本である。
「彼の目の前で現物が廃棄されたって、本部のお偉方が激怒している。やらかしたヤツの首だけでは足り無い。全員の首でも足り無い。この街で責任を持って払えと、領主様に請求書を回すって…」
その彼はここからの転移で、錬金術ギルド、冒険者ギルド本部を経由して家に帰ったそうだ。連絡が取れないらしい。ここからもの凄く遠くにある国に家があると言う。
---ケン---
ずぶ濡れ状態で帰宅すると心配されるので、衣服や身体からポーション成分を強奪し、瓶に戻した。あの時、咄嗟に床へぶちまけられそうになった分もこっそり強奪し、瓶に入れてある。なので実質の損害は30本くらいかな。
家に帰るとカタリナが抱きついて来て、臭いを嗅ぎ始めた。
「なんで今日は薬臭いの?」
臭いが染みついていたのか。浄化、清浄しておこう。自分と家の中を同時にきれいにした。その後、三人でお風呂に入り、白パン、魚の塩焼き、牛串、ネコ耳少女の話をした。
「愛玩目的だと認められないわ」
アイリスはモフモフしたく無いのか?
「確かにモフモフはしたい、肉球プニプニをしたいけど、愛玩目的では、その子が可哀想よ」
と、カタリナ。元悪役令嬢のセリフとは思えない。
「じゃ、主目的が愛玩で無ければ良い?」
「優秀な人材は宝だわ。仕事が出来る子なら、買って来てもいいわよ。但し、予算はケンの個人資産内で、お願いね」
それは、仕事に使えれば、維持費と言う雇用費は出して貰えるのかな?
「そうだ!ケン、スカウトして来て欲しい人材がいるの。お願い出来るかな?」
って、カタリナ。国外追放刑を食らった悪役令嬢のスカウトした人材って、厄介ごとに思えるんだが。
「誰を連れてくれば良いんだ?」
「緑の手を持つメアリ・ハント、財務業務が出来るニコル・アスカルト様、その妹であるソフィア・アスカルト、光の魔力の使い手でお菓子作りが得意なマリア・キャンベル」
「おい!マリア・キャンベルって、『FORTUNE・LOVER』の主人公じゃないのか?」
「そうだわ。カタリナ、彼女を虐め倒したんじゃないの?」
「いや、そんなことはしていません。大丈夫です。この蛇を持っていってください」
手作りの蛇の玩具…
「これを私が作っていたことは、みんな知っていますから。後、みんな宛てのお手紙を書きますから、手間は掛からないと思います」
◇
何日か掛けて、カタリナの指名した4人?いや5人を連れ帰ってきた。マリア・キャンベルの希望で、彼女の母親も一緒に連れてきたのだ。
「マリアはヒールも出来るみたいだから、普段はお母様と一緒にメイド兼厨房スタッフで、有事の時はお願いね」
「はい、任せてください。母と共に雇い入れてくださり、ありがとうございます」
アスカルト兄妹は財務部、メアリはカタリナのいる農業技術部に配属された。ちなみにアスカルト妹も転生者であった。アスカルト妹には転生者の自覚が無いが、カタリナ、アイリスには報告済みである。
「人材補強が出来たけど、後少し欲しいかな。ケンの買っている子達も優秀だといいなぁ」
って、アイリスが甘えたように言う。あのネコ耳少女が財務系仕事している姿は見たく無いんだが…
そうだ、資金を作らないと…最上級ポーションだと買手が付かないので、中級ポーション並に効果というか、ポーション自体を薄めた。出来た中級ポーションは1万本くらいで、前回の依頼の売り上げの回収が進んでいないこともあり、冒険者ギルド本部とレインリヒに買い取って貰った。これでネコ耳資金が出来たかな?
いよいよヤーシス奴隷商館へと向かった。1万本の中級ポーションの売り上げは、この国の通貨に両替え済みである。討伐してきた魔物の部位も売れる物は売ってきた。資金は国家予算並にあるぞ。これで買えないなら、諦めることにするか。
商館に着くと、
「今日はもう終わりだ。また、明日来い」
と、店員に横柄な態度を取られた。店員教育がなっていないな。
「ヤーシスに個人的に会いに来たんだがいるか?居留守なら、商談は無しと伝えてくれ」
「待て……中に入れ。おい猫。ヤーシス様を呼んできな」
あのネコ耳少女に命令する店員。
「猫じゃない。あと私の仕事は主の護衛。呼ぶならお前が呼んでこい」
ネコ耳少女は護衛が出来るのか。愛玩目的で無ければ、問題は無かったよな?
「んだとこら! 奴隷のくせに俺に口答えか!」
あぁ、この店員はダメダメだな
「いいよ。とりあえず中に入るから。そしたら誰か来るだろ」
あのネコ耳少女を抱き上げた俺。
「…じゃ、奥の部屋に入って待ってろ」
「奥の部屋?」
「あっちだよ」
ネコ耳少女に道案内を任せた。