---ツバサ---
今は無きバカ神の仕掛けた臨界というシステム。義父からの情報によると、召喚されたアバターに関係する世界が、この世界に接続していくと言う。物理的に無理とかでは無く、兎に角拡張されていくらしい。そうなると、新たに確認出来るのはユナとケーナの世界だろうな。彼女たちが活動するエルファニカ王国、フェルスケイロ公国の場所については、冒険者ギルド本部に訊いておく。拡張された場所であっても、冒険者ギルドの支部は存在し、本部ではそれらを把握出来ている。不思議なシステムの1つであるが。
「どっちを先に攻略する?」
もはやゲーム感覚のマイルに訊かれた。冒険したそうだ。最近砂の掃除ばかりだしな。
「エルファニカ王国から行くか。冒険者ギルド本部で確認したんだが、ケーナの方は、彼女の子供達が既に国の中枢を抑えているし」
「えっ?!ケーナって結婚して、ゲーム内で子作りしていたの?」
驚いた視線をケーナに向けるマイル、ユナ、セイ。
「違います。先生、ちゃんとシステムの説明して下さい」
「あぁ、そうだな。ケーナの子供はみな養子だ。あのゲームでは『里子システム』って言うのがあって、ケーナには三人のこどもがいるんだよ」
これも彼女の伯父に頼まれて作ったものだ。結婚する年齢まで生きられない子供達の為に、疑似結婚生活を体験して貰うシステムであるが、R18規制により、異性との過剰なスキンシップは禁止とされ、『里子システム』に落ち着いたと言える。異性との関係を持たずとも、子育てだけは体験出来るのだ。
「あの子達元気かなぁ…」
物思いに耽るケーナは置いておいて、今後の活動内容を決める。魔王対策として、仲間になれる国を見極めないとな。現状で信用出来るのは、アルメリア公国とフリージア王国、魔王国、龍王国である。マイルのいた国は、お金で解決したが、絞れるだけ搾り取ろうとする王族の欲望が見えているので、いずれ消えて貰う
◇
グランドマスターにクリモニアの街の冒険者ギルド支部を紹介してもらい、そこへ転移し、ケーナのギルド証を手に入れた。遠征メンバーは俺と、ユナ、ケーナの二人とマイルである。知らない土地にいきなりセイは危険だから。
「この街で、異世界生活に慣れて貰う。後、商売の拠点でも作るか。俺とマイルはバックアップ要員だ」
戦力的には二人は問題無い程のオーバーキル要員である。それは死の森で確認済みであるが、生活面が不安であるのだ。リアル世界において、引き籠もりと寝たきりの少女だったのだ。自炊は壊滅的かもしれない。
「大丈夫です。ゲーム内では自炊はしてました」
と、ユナ。
「お金があれば、食堂で食べますし」
とは、ケーナ。
森の中で狩りをする。狼、兎などを狩り、解体していく。
「『解体』スキルを得るまでは、マニュアル作業をするしかないんだよ」
ゲームではドロップ品で肉を手に入れていたが、ここはゲーム世界では無い。解体用ナイフで解体しなければ、肉を得られない。
「こんなに大変なんだ…」
ケーナは泣き言を言うが、黙々とユナはマイルの指導に耳を傾けていた。
---ブランデル王国第三王女 モレーナ---
我が国から消えた女神様の依り代であるアデル・フォン・アスカム様を探す旅に出た。彼女からは、毎年『もう探さないでください。迷惑です』とのメッセージと共に白金貨1枚が送られて来ていた。きっと、探す為の旅費にと寄付をされているのだろう。私の近衛騎士団と共に、アデル様捜索の旅は続く。
最近、妙な事件が起きている。砂が雨のように降り続き、既に3カ国が地図から消えたらしい。きっと、女神様であるアデル様がお隠れになったせいであろう。早く見つけねば…
冒険者ギルドに立ち寄り、国からの指示書を受け取る。内容は、聖シュルール協和国の教皇様のお住まいが、アルメリア公国に移ったと有る。教皇様に指示を仰げとある。行き先をアルメリア公国へ変更して急ぎ向かう。
アルメリア公国は最近できた国である。タスメリア国の公爵家が独立し立国したと言う。そう言えば、タスメリア国って、砂に埋もれ地図から消えて国の1つである。陰謀なのか?まさか、アルメリア公国が女神様を…急いで教皇様に会わないと、世界の危機が近いのかもしれない。
アルメリア公国の王都に宿を構え、情報を収集していく。新興国であるのに、冒険者ギルド、錬金術ギルド、商業ギルドの本部があるそうだ。治癒士ギルドは聖シュルール協和国にあるそうだが、アルメリア公国にある教皇様のお屋敷の敷地は聖シュルール教皇領という、独立国家であるそうだ。アルメリア公国内にあるため、まず敵に攻め込まれる心配が無いと言う。いや、考えようによって、アルメリア公国に教皇という人質を取られた格好である。きっと、アルメリア公爵って極悪非道な人物で、教皇様を出汁に、各ギルドの本部を呼び付けたのかもしれない。
女神様の前に、教皇様をお救いしなければ!正義感に燃え、勇んで教皇様に会い向かった。
◇
「お前はケンカを売りに来たのか?」
「滅相もございません」
教皇様を救い出そうとしたら、戦乙女聖騎士隊に囲まれた。
「私は教皇様を極悪非道なアルメリア公爵からお救いに参りました」
「儂は、好き好んで、この地に移り住んでいるのじゃ。こんな儂達を心良く受け入れてくれた公爵に、何故その様なことを言うのじゃ」
「いえ、きっと、この国で我が国の女神様をもお隠しになったのかもしれません」
「女神じゃと?何者なのだ、そやつは…」
「わがブランデル王国が誇る女神様の依り代、アデル・フォン・アスカム様でございます」
「アデル?知らんなぁ。」