---ツバサ---
マインのいた国、ユルゲンシュミットは内戦の末、共和国の属国に収まった。王家の証を俺達が手に入れ、マインが住んでいたエーレンフェストの領主に王家の証を貸与して、実質の属国にした。あの国は神々を召喚する祭儀場の役目を果たす地であったので、義父が介入して、その地関連の神々を矯正、指導をして、巨大な図書館をもぎ取って、アルメリア公国の行政区に持ってきていた。
「凄い、魔導具いっぱいある」
楽しそうにダリヤが魔導具を解析していく。マイン、ソフィアが本の目録を作成しつつ、読み込んでいた。エーレンフェストでは木の魔物でトロンベと言うのがいて、実験をすると上質紙が作れるらしいことが分かった。エーレンフェストの冒険者ギルド支部にトロンベの採取を依頼しておく。
後、回収していない人物っていたかな?
マイルに訊いてみた。
「あとですと、身食いのエルフ達かな。そうそう、身食いのオリヴィエ・アルウェイ、悪役顔のディアナ・クレスター辺りですか」
コイツ、よく覚えているなぁ。
「身食い関連か。そういや、身食い専門の治療院を作ってから大々的に宣伝していなかったな」
前回よりもスローペースな俺。
---リーシェ・イルムガルド・ヴェルツナー---
王太子から婚約破棄を言い渡される運命のループを生きている。今回は8回目である。前回の周回は中々楽しかった上、死因は不明であった。過去6回の死因は分かるのに…という訳で、前回と同じ様に婚約破棄イベントはスルーして、アルメリア公国に来た。前回とほぼ一緒の風景が目の前に広がっていた。だけど、アズータ商会が無かった。特別区にある教皇領って、なんだろう?
行政区で見かけた領主の護衛(女性に限る)に応募してみた。そして、即決された。前回と同じなんだが…
「あぁ、リーシェがいたな」
と、王配が声を掛けてきた。この人も前回の周回を覚えているようだ。
「前回との違いは?」
「そうだな。共和国を建国した」
「へ?ここアルメリア公国の王配では?」
「アイリスが、複数の国の王になっちゃダメなルールは無いと言うんだよ」
それは、前回には無かったイレギュラー要因である。今回は長生きできそうだ。
「この新人さん貰って行くわよ」
って、鬼軍曹にお持ち帰りされた。これって、ブートキャンプの始まりか?
---ツバサ---
冒険者ギルド本部に呼び出された。砂の掘り出し作業を中断し、本部へと向かったのだが…目の前に肉の塊がある。
「これって、何かわかるか?」
グランドマスターに訊かれた。
「あぁ、これは身食いの末期症状だ」
全身の細胞があるだけで、皮膚と筋肉の境が無い、内臓と骨の境すら無い。ただひたすら肉の塊である。
「身食いの末期?」
「あぁ、人間の場合は身体という器の強度が弱く、溜め込んだ魔力で内部から暴発して肉も骨も細かい破片になるが、魔力に耐性のある種族だと、肉の塊になるんだよ」
「治せるのか?」
「試してみる」
前回よりも危険が一杯の疑似エリクサーがある。それに世界樹の葉っぱは腐るほどあるし。その為、試験的に熟成発酵させた世界樹の葉っぱの漬物すらある。
肉塊をお持ち帰りして、身食いの治療の為の部屋に持ち込んだ。肉塊を容器に入れ、疑似エリクサーを注ぎ、世界樹の葉っぱの漬物を投入した。これで放置である。部屋を密閉しておく。この臭いは俺でも変な汗が出るレベルである。ガスマスクを作らないと…
2週間ほど放置して、様子を見に行った。肉塊は金髪のエルフの少女へ…前回でいうアルファだろう。今回もアルファと名付け、念入りに脱臭処置を施した後、一般病棟へ移した。
アルファの治療の様子を録画した映像を、冒険者ギルド、治癒士ギルドの各グランドマスター、教皇に見せた。
「あの肉塊がエルフになるのか」
「違う。エルフが肉塊になったんだよ。それを治療しただけだ」
誰かが唸るように発した言葉に、俺は正解を言ってみた。初めから肉塊って、それはバケモノですよ。
「このように、身食いは末期でも治療できます」
二人のグランドマスターがあの漬物の臭いを嗅ぎたいと言いだし、別室で嗅いで貰うと、白目を剥き失神してしまった。俺ですら無理なのに、勇気あるなぁ。